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『夫候補生』
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「予定より遅くなりましたが、今日からお世話になります。」
慶斗の元同僚の医師、神崎 譲が我が家に引っ越してきた。
現在小説家として活躍している彼は、仕事の調整に時間がかかったらしい。
慶斗と私の子どもを代理出産するために、彼は同居し、協力してくれる。
おっとりと優しい口調で話す彼は、声だけ聞いていると学生なのではないかと思うほど、若々しい。
特徴的な声色をしており、見た目の穏やかさとマッチして、とても魅力的だ。
顔合わせで初めて会ったあの日、私は彼のことが大好きになった。
困ったように笑う顔も、耳に心地よく馴染む声音も。
元医者で、小説家。その上、イケメン。
人当たりの良い彼の穏やかな物腰に、夫たちもすぐに親しくなっていった。
同じ家で暮らしているけれど、彼はこの家の中で触れてはいけない唯一の男性だ。
代理出産で、譲が慶斗の子どもを出産して初めて、彼は私の正式な夫となる。
距離の取り方が難しい。
「繭さん、」
ソファーで本を読んでいたら、いつの間にかウトウトしていたらしい。
隣に座っている夫に寄りかかって、うたた寝するのは、よくあることだった。
「繭さん、風邪ひきますよ。」
肩を優しく叩く相手が、夫ではなく譲だとわかって、私は一気に目が覚めた。
「あ、す・・すみません。譲さん・・・」
慌てて身を引く。
困った表情で頬を赤く染めた譲は、気まずそう笑った。
至近距離で見る彼の顔は、心臓に悪い。
下がり気味の眉に、茶色の髪がかかり、夕日に照らされてキラキラと光っている。
(ま・・眩しい・・・・譲さん・・セクシー・・・♡)
『あなたとの子どもが、欲しいんです。』
初めて会ったあの日、真剣な眼差しで懇願した、彼の瞳を思い出す。
この家で一緒に暮らし始めてから、彼の瞳はさらに私に熱い視線を向けるようになった。
食事をしている時や、夫たちとリビングで団欒している時、彼がじっと熱っぽい瞳で、私を見ていることに気付く。
視線が合うたびに、私は道外れた恋をしているような罪悪感を覚え、胸が苦しくなった。
彼はこの家の中で、唯一好きになってはいけない男性なのだ。
「読書中のうたた寝って、気持ち良いですよね。」
目を細めて眩しそうに微笑む、譲の顔。
私はこの顔が、たまらなく好きで、時折感情が爆発したように、彼が欲しくてたまらなくなる。
(お願いだから・・・そんな目で見ないで・・・・)
熱っぽい視線が、交差する。
一度視線が交わってしまうと、私たちは逸らすことが出来ず、お互いの瞳の奥を探り合うように、見つめ合っていた。
スラリと手足が長い彼の、綺麗な指が伸びてきて、私の手に触れる。
「繭さん、俺・・・」
(ダメ・・・これ以上は・・・っ・・・)
「か、買い物行こうと思っていたの、忘れてました!」
我ながら、いかにもわざとらしい立ち上がり方をしてしまったと、恥ずかしくなる。
「一人じゃ危ないので、俺付き合いますよ。」
彼が読んでいた本をパタンと閉じて、目の前のテーブルに置いた。
「いえいえ、歩いて行ける距離なので!大丈夫です!!」
手を振って必死で断るも、彼は私の手を掴んで綺麗な笑みを浮かべる。
「繭さんは、俺のお嫁さんになる人ですから。俺が守ります。」
(お・・・お嫁さん・・・・!?神崎譲の笑顔・・・眩し過ぎる・・・っ♡)
過保護過ぎるイケメンの発言に、私は一瞬で撃沈された。
慶斗の元同僚の医師、神崎 譲が我が家に引っ越してきた。
現在小説家として活躍している彼は、仕事の調整に時間がかかったらしい。
慶斗と私の子どもを代理出産するために、彼は同居し、協力してくれる。
おっとりと優しい口調で話す彼は、声だけ聞いていると学生なのではないかと思うほど、若々しい。
特徴的な声色をしており、見た目の穏やかさとマッチして、とても魅力的だ。
顔合わせで初めて会ったあの日、私は彼のことが大好きになった。
困ったように笑う顔も、耳に心地よく馴染む声音も。
元医者で、小説家。その上、イケメン。
人当たりの良い彼の穏やかな物腰に、夫たちもすぐに親しくなっていった。
同じ家で暮らしているけれど、彼はこの家の中で触れてはいけない唯一の男性だ。
代理出産で、譲が慶斗の子どもを出産して初めて、彼は私の正式な夫となる。
距離の取り方が難しい。
「繭さん、」
ソファーで本を読んでいたら、いつの間にかウトウトしていたらしい。
隣に座っている夫に寄りかかって、うたた寝するのは、よくあることだった。
「繭さん、風邪ひきますよ。」
肩を優しく叩く相手が、夫ではなく譲だとわかって、私は一気に目が覚めた。
「あ、す・・すみません。譲さん・・・」
慌てて身を引く。
困った表情で頬を赤く染めた譲は、気まずそう笑った。
至近距離で見る彼の顔は、心臓に悪い。
下がり気味の眉に、茶色の髪がかかり、夕日に照らされてキラキラと光っている。
(ま・・眩しい・・・・譲さん・・セクシー・・・♡)
『あなたとの子どもが、欲しいんです。』
初めて会ったあの日、真剣な眼差しで懇願した、彼の瞳を思い出す。
この家で一緒に暮らし始めてから、彼の瞳はさらに私に熱い視線を向けるようになった。
食事をしている時や、夫たちとリビングで団欒している時、彼がじっと熱っぽい瞳で、私を見ていることに気付く。
視線が合うたびに、私は道外れた恋をしているような罪悪感を覚え、胸が苦しくなった。
彼はこの家の中で、唯一好きになってはいけない男性なのだ。
「読書中のうたた寝って、気持ち良いですよね。」
目を細めて眩しそうに微笑む、譲の顔。
私はこの顔が、たまらなく好きで、時折感情が爆発したように、彼が欲しくてたまらなくなる。
(お願いだから・・・そんな目で見ないで・・・・)
熱っぽい視線が、交差する。
一度視線が交わってしまうと、私たちは逸らすことが出来ず、お互いの瞳の奥を探り合うように、見つめ合っていた。
スラリと手足が長い彼の、綺麗な指が伸びてきて、私の手に触れる。
「繭さん、俺・・・」
(ダメ・・・これ以上は・・・っ・・・)
「か、買い物行こうと思っていたの、忘れてました!」
我ながら、いかにもわざとらしい立ち上がり方をしてしまったと、恥ずかしくなる。
「一人じゃ危ないので、俺付き合いますよ。」
彼が読んでいた本をパタンと閉じて、目の前のテーブルに置いた。
「いえいえ、歩いて行ける距離なので!大丈夫です!!」
手を振って必死で断るも、彼は私の手を掴んで綺麗な笑みを浮かべる。
「繭さんは、俺のお嫁さんになる人ですから。俺が守ります。」
(お・・・お嫁さん・・・・!?神崎譲の笑顔・・・眩し過ぎる・・・っ♡)
過保護過ぎるイケメンの発言に、私は一瞬で撃沈された。
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