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『我慢できない』
しおりを挟む「な、な、な、何ですかっ?!この素晴らしく、いやらしい芸術作品は・・っ?!」
個展に展示する作品を熱心に描いている、煌大のアトリエ。
休憩にと、パティシエの蘭が作ったケーキを持って、愛と3人で扉を開ける。
入室と同時に蘭が叫んだので、私と愛は驚いて中へ駆け込んだ。
呆然と立ち尽くしている蘭の視線の先には、見覚えのある絵が一枚、飾られている。
「な・・・なにこれ・・・」
デジャブを見たような気持ちになった。
その絵に描かれていたのは、先日このアトリエで煌大と愛し合った時、鏡の中で見た二人の交わりそのものだ。
「うわ、悪趣味。」
愛が嫌悪感を隠そうともせず、低い声を出す。
「エ・・・エロイ・・・エロすぎる・・・っ!」
(エ・・・エロイ・・・エロすぎる・・・っ♡)
蘭の声が、私の心の中の声と、ぴったりシンクロしたので驚いた。
声の元へ視線を動かすと、蘭が目を輝かせながら絵を見つめている。
「ちょっと、蘭?なに興奮してんの?」
愛も意外に思ったのか、蘭の様子を心配しながら覗き込んでいた。
「だ、だって・・すごくエッチで神秘的な絵だよね・・っ!?」
声色を聞いただけで、彼が興奮しているのだとわかる。
蘭はこの手の芸術に、興味があるのだろうか。
エッチな絵、なんて彼のイメージから一番かけ離れた物だったので、意外すぎて言葉が出ない。
「ちょっと煌大、生々しすぎ。結合部分、モザイク処理してよね。」
アトリエに戻ってきた煌大が、いつの間にか私たちの背後に立っている。
「愛、なに言ってんだ。これは芸術だぞ?」
煌大は腕を組んで作品を眺めながら、ドヤ顔で愛と向き合った。
この場にいる全員が、私の裸を知っている夫ではあるけれど、あまりにはっきりと描かれすぎていて、やはり恥ずかしい。
「雫さんが見たら静かに怒りそうだから、この部屋に入れないでよ?他の奴らも全員騒ぐだろうし、個展には絶対出すなよな。」
「出すわけないだろう。他の男に夫婦の交わりを見せる趣味は、俺にはない。」
「いや、俺らに見せてんじゃん。見せつけてんじゃん!」
「お前らは別だ。愛も蘭も、繭の夫だろ。」
悪びれもせず、煌大はしれっとした態度で、そう言ってのけた。
「マウント取ってるだけじゃん。嫌な奴。」
「何とでも言え。繭は、俺に夢中だからな。」
「はぁ?自意識過剰ナルシスト男!」
煌大と愛は、仲が良い。
いつもこんな風に言い合いをしているけれど、これは彼ら流の愛情表現なのだった。
「繭さん、ちょっと、」
二人が言い合いをしている間に、蘭が私の手を引いて廊下へと導く。
黙ってついていくと、彼は真っ赤な顔で耳打ちした。
「僕、煌大さんと繭さんがエッチしてるの見たら・・・興奮しちゃいました・・っ」
蘭は、ぎゅっと私の服の端を掴んで、顔を真っ赤にしながら告白する。
あまりの可愛い顔に、ぐらりと思考が揺らいだ。
「あ、あれはただの絵だよ・・・?!蘭君、落ち着いて・・?」
ウルウルと可愛い瞳で訴えてくる蘭の目には、興奮が宿っている。
(蘭君って、妻が他の男とシてるのを見て、興奮するタイプ・・・!?)
女の子みたいな可愛い顔立ちの夫に、似つかわしくない性癖。
(蘭君のエッチなギャップ・・・♡たまらない・・・♡)
「僕・・もう、我慢できません・・・っ!!」
「ちょ、ちょっと・・蘭君・・・っ?!」
アトリエの隣にある、トイレの個室。
彼は私の手を引いて中に入ると、切羽詰まった表情で扉を閉め、鍵をかけた。
「え・・?あ、蘭君・・・・?」
いつもはベッドの上で、裸になるのさえ恥ずかしがる彼が。
後ろからぎゅっと抱きしめられて、私は彼の必死さに身動きひとつ取れなかった。
壁に手をついた状態で、背後から激しく胸を揉まれる。
普段は胸に触ることさえ遠慮がちな蘭が、獣のように息を荒げ興奮していた。
「ら、蘭君・・ぅ・・・」
「繭さん・・っごめんなさい、僕・・・我慢できない・・っ」
蘭の可愛い声が、狭い個室内で響いた。
スカートを捲し上げ、無理矢理下着を下ろすと、彼は熱い欲望を突き刺す。
「あ・・あぁ・・っ、蘭君・・・っ」
隣のアトリエに煌大と愛がいると思うと、声を出せないもどかしさに妙な興奮が込み上げてきた。
後ろから激しく出し入れする彼の腰の動きは、乱暴でいつもの彼とはまるで別人のようだ。
「繭さん・・っ・・僕・・・イっちゃう・・・中に・・・っ・・・いっぱい出る・・ぅ・・っ!!」
無我夢中で腰を振る蘭は、隣の部屋に煌大と愛がいることをすっかり失念しているらしい。
(もしかして・・・見せつけて興奮するタイプ・・・?!蘭君、エッチすぎる・・・♡)
彼は、甲高く可愛い声をあげて、私の奥深くに思い切り興奮を吐き出した。
(積極的な蘭君・・・♡最高ッ・・・♡)
情事が終わって静かになると、隣のアトリエから煌大と愛が小声で話しているのが聞こえてくる。
私と蘭は、顔を見合わせて赤面し、すっかり上がってしまった息を整えるのに必死になった。
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