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『一晩中』

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耀亮ようすけは、とても有名な格闘家らしい。
格闘技にうとい私に、彼自身は詳しいことを話さないけれど、りつが何度か雑誌を見せて説明してくれた。


耀亮ようすけさんは、俺といずみに身体のきたえ方とか、キックとか教えてくれて、すげーかっこいいんだ!!な、泉!」

いつきいずみは、耀亮ようすけを兄貴的な存在としてしたっているようだ。
時々中庭で、彼ら二人を指導している姿を見かける。


「試合のDVD見せてくれたり、本も貸してくれたりするし・・・」

初めて耀亮ようすけに抱かれた日、いずみに目撃されたことを今思い出した。
私と同じことを考えたのか、泉の顔がみるみるうちに、赤く染まっていく。


耀亮ようすけさんは、絶対ぇ良いお父さんになるよな~!」

今夜「子づくり」の予定であることを、知ってか知らずか、いつきが無邪気な笑顔でそう言った。



『お前との子どもが欲しい。』

耀亮ようすけの熱い視線を思い出して、いずみと同様に私の顔もカァッと熱くなっていく。

「子どもが欲しい」と夫に懇願こんがんされることが、こんなに嬉しいことだなんて。


「俺、子ども9人は産みたいから、そろそろ妊娠したいんだけど・・・まゆたん、OKしてくれる?」

私の手をぎゅっと握って、上目遣いで見つめてくるいつきは、まるで欲しいオモチャをねだる子どものような可愛さだ。
幼さを残した顔で、首を傾げて微笑む夫。

(あぁ・・・♡年下の夫が、可愛すぎて辛い・・・・♡)


「うん。慶斗けいとさんに相談してみようか。」

「お、俺も・・・!」

珍しくいずみが、一歩前に出る積極性を見せる。
彼とは何度か手を繋いで夜を過ごしたけれど、未だ身体を重ねるには至っていない。

夫たちが妊娠を望んでくれる幸せ。
かえでの子どもが生まれる頃には、私に母親の自覚がきちんと芽生えているだろうか?



♢♢♢



「このセックスで、俺らの子どもが出来るかもと思ったら・・・なんだか緊張しちまうな。」

耀亮ようすけの手がひどく冷たくて、驚いた。
彼の緊張が、伝わってくる。


いつも荒々しく、私の身体をむさぼるような彼のセックス。
初めて身体を重ねた時でさえ、彼は全く緊張した様子がなかったというのに。

彼に抱かれていると、本能で私を求めてくれているのだと、いつも感じる。

その彼が。



こんなに優しい触れ方をしてくれるなんて、思わなかった。

(優しすぎて・・・私まで緊張してきちゃうよ・・・・)

彼の意外性には、いつも驚かされてばかりだ。



「どれだけお前のこと愛しても、全然足りねぇ。」

ベッドの中で裸で抱き合いながら、耳元でささやかれる甘い言葉。
低くて男らしい声なのに、とても甘く私に愛を伝えてくれる。


まゆ、愛してる。」

耀亮ようすけ君、私も、」


私の唇に、彼の指先が触れた。
彼が、小さく首を横に振る。

耀亮ようすけ、って・・・呼んでくれ。」

彼はベッドの中でだけ、呼び捨てにしろといつも要求してくる。
その言葉が聞きたくて、わざと君付けで呼んでいるのは秘密。



「耀亮、愛してる・・・。」

いつもの荒々しい交わりとは違い、終始じっと私の目を見つめている彼に、少し照れてしまう。


「今夜はじっくり時間をかけて、お前を愛したい。」

殺し文句を投げてくる耀亮。
彼には、自分が色男なのだという自覚がまるで無い。

(耀亮君・・・カッコ良すぎるよ!私の方が、荒々しくなっちゃいそう・・・・!)


ゆっくりと近づいてくる彼の唇に、我慢出来ずにこちらから口付けた。



「繭・・・愛してる・・・・・繭・・・ッ」

彼は一晩中、何度も何度も私の奥深くへ愛を注ぎ込む。
たくましい腕が、朝までずっと私の身体を離さなかった。



♢♢♢


「まさか朝まで愛し合ってるとはね。」

「すみません・・・慶斗けいとさん。」

「いや、そんなことだろうと思って普通に寝てたから、気にしないで。」


夢中で愛し合って、処置のために慶斗けいとを呼んだのは、明け方だった。
慶斗は嫌な顔一つ見せず、私たち二人を交互に見て微笑む。


「薬は飲んでるけど、一回で妊娠するのはまれだから、あまりりきまないでくれよ。」

耀亮ようすけの意気込みを感じたのか、慶斗けいとは優しく助言じょげんする。
彼の気遣いは、いつもとても温かい。

私は慶斗の大人な態度と愛のある気遣いに、いつも惚れ惚れしてしまう。



まゆ、」

慶斗けいとを見つめていたら、ベッドに横になって処置を受けている耀亮ようすけが手を伸ばして私に触れた。

「こっち来いよ。」
ぎゅっと手を握る。

(これって嫉妬しっとかなぁ・・・♡耀亮ようすけ君の意外性いがいせい・・・たまらない・・・♡)


慶斗けいとがその様子を見て、チラリと私へ視線を送る。

朝から二人のイケメン夫にはさまれて、嫉妬しっとされる幸せをめていた。



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