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『朝の食卓』
しおりを挟む律の逞しい腕に抱かれたまま、迎える朝。
彼はいつも、上半身裸で眠る。
裸のイケメン夫の寝顔を、じっと眺めながら過ごす最高の朝。
幸せを噛み締めながら、寝起きの自分の顔がどれだけ酷いのかと怯える。
今日の朝食は、明光が担当してくれると聞いた。
彼は日本食の料理人で、整った顔立ちをした和風の美人だ。
最近入籍したばかりの新しい夫で、物静かで女性のような奥ゆかしさのある大人の男性だった。
いつもは朝から慌ただしくキッチンに立っている、律の寝顔。
独占できることは、滅多にない。
「う~ん・・・・繭・・・」
私を抱き枕のように抱えていた彼が、身じろいだ。
至近距離のイケメンにドキドキして、思わず背を向けてしまう。
(あ・・当たってるんですけど・・・・!!)
後ろから抱きついてくる律の逞しい下半身が、私のお尻に当たっている。
以前抱かれた時の、彼の激しさを思い出して、身体が熱くなった。
「おはよう、繭。」
「・・・っ!!」
「起きてるんだろ?」
グッと下半身を押しつけられて、何故か寝たふりを決め込む。
何と反応したらいいのか、完全にタイミングを逃してしまった。
彼は、私の下半身を両手で引き寄せて、硬くなったモノを擦り付けるように腰を動かす。
「んぅ・・・っ・・・・」
我慢できず、声が出てしまった。
「やっぱり起きてたな。どうした?・・朝から俺に求められると思って、発情したのか?」
律のギャップは、たまらない。
いつも穏やかで優しくて面倒見の良い兄貴的存在の彼が、ベッドの上では違った一面を見せる。
普段より低い声。
ほんの少し荒々しい言葉使いを取り入れながら、意地悪に攻めてくるのだ。
カプリ、と首筋に歯を当てられて、ビクンと身体が震えた。
その瞬間、バン、と勢い良く部屋の扉が開いて、晴日が入室してくる。
「律~、明日のお弁当にタコさんウインナー入れてほしい~」
寝ぼけているのか、目を擦りながらこちらを見た彼と、ばっちり目が合う。
(前にもこんなことあったなぁ・・・き・・気まずい・・・・・)
「晴日、おはよう。明日のお弁当に、タコさんウインナー入れような。」
律は、微塵も動揺することなく、夫婦の寝室に入り込んできた我が子をあやすように、そう言った。
♢♢♢
「あのね、律と繭がエッチしてたぁ~」
晴日は、ホワンとした天然キャラで、いつもニコニコしている癒し系の男性だ。
突然そんなことを口走る彼に、同じ食卓について朝食を食べていた全員が注目し、その流れで次は私に視線が集まる。
「いえ・・ベッドには居たけど、してないです・・・・」
晴日は、「不思議ちゃん」という印象で、正直何を考えているのかわからないタイプだった。
少し襟足の長い、ふわふわしたゆるパーマが、彼の不思議ちゃんキャラに合っている。
ポエムでも読みそうな、お花畑の真ん中に居そうな雰囲気だが、実際は物理学専攻でバリバリの理数系。
まだ20歳の学生で、同じ理数系の大学に通う愛と仲が良い。
「ばっかじゃないの?晴日、お前また返事待たずに扉開けたんだろ?ってか、ノックした?何回言ったらわかんの?」
彼の隣で、味噌汁を飲んでいた愛が、お椀をテーブルに置くと同時に小言を言う。
「なんだよ、律の部屋にいたのかよ。繭ちゃんの部屋に様子見に行ったらいねぇから、誰の部屋にいるかと思ったら。」
桜雅は、心配して部屋を見に来てくれたらしい。
当て日じゃない夜に、私が誰の部屋にいるのか、夫たちは気にしているようだった。
「そうだったんだ。良かった。繭、疲れてるみたいだったし、心細いかもって俺も心配してたから。」
その言い方だと、雫も昨夜、私の部屋を訪ねてくれたのかもしれない。
「雫さん、優しすぎ!いや~大人だわ。俺は繭が当て日でもねぇのに他の男の部屋にいるって思ったら、正直カチンとくるんすけど。」
「桜雅君、俺はきっと、誰よりも独占欲強いよ?」
桜雅がイラついた口調で吐いた言葉に、満面の笑顔で返す雫の迫力は凄まじかった。
夫たちと囲む、朝の食卓。
幸せな、家族の風景。
(今日も朝から愛されてるなぁ・・・私・・・)
気まずさを感じながらも、夫たちのやりとりを聞いて、私は幸せを噛み締めていた。
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