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『嫉妬心』
しおりを挟む楓のお腹のエコー画像を見ていた医師が、微笑みながらこちらを振り返る。
「赤ちゃん、順調に育っていますよ。」
緊張がほぐれたのか、私の手をぎゅっと握っていた楓の手がホッと緩んだのがわかった。
「良かった・・!安心しました。」
楓がパッと明るい笑顔で、私を見る。
初めての妊娠で、不安なことが多いのだろう。
健診について来た私は、彼の緊張した様子やホッとした安堵の笑顔を見てそう思った。
男性の妊娠は新しい技術で、素人にはわからないことだらけだ。
「良かったね、楓。」
同行してくれている医師の慶斗が、私の肩に優しく手を置いて、診察台に横たわる楓を見る。
慶斗が産科の医師に楓の状況を話し、健診結果の詳細を聞いて私たちに説明してくれるので、とても心強い。
家族に医師がいるありがたさを、痛感していた。
私や夫たちの体調をいつもサポートしてくれるので、とても安心して生活出来ている。
♢♢♢
車の運転をしている男性の姿というのは、どうしてこんなにときめくのだろう。
助手席に座って、運転している慶斗を見つめる至極の時間。
信号待ちで車が止まると、運転席の彼と目が合った。
「何?そんなに見つめられると、照れるな。」
慶斗が手を伸ばして、私の手を握る。
後部座席に座っている楓に見えないように、指を絡めた。
「運転している姿・・・カッコイイなぁって・・・。」
「そんなふうに思ってくれるなんて、光栄だな。」
信号が、青に変わる。
慶斗に触れたのは久しぶりで、手を握られただけで身体が熱くなってしまった。
「楓君、段差気をつけて。」
車から降りる、楓の手を取る。
「まだお腹大きくないので、大丈夫ですよ。でも・・ありがとうございます。」
にっこり嬉しそうに笑う楓は、ステップから降りると、私の頬にチュッとキスしてくれた。
慶斗がそれを見て、ふっと優しく微笑む。
夫の前で、他の夫と手を握ったり、キスしたりという状況には、未だに慣れない。
「おー、楓どうだった?病院。」
「疲れてない?楓君、ほら、ここ座って?」
楓の顔を見るなり、桜雅と雫はソファーから立ち上がり、楓を座らせた。
「赤ちゃん、順調に育ってます。」
楓は幸せいっぱいの表情で、そう報告する。
うちの夫たちは皆、過保護なほど楓に優しい。
「楓さん!赤ちゃんおっきくなってた?」
最年少の樹と泉も加わって、楓を囲む。
「繭、後で俺の部屋においで。」
慶斗が意味深な微笑みを浮かべてそう耳打ちしたので、私は勝手に変な期待をしてしまった。
♢♢♢
慶斗は嫉妬深い。
私が他の夫と手を繋いでいたり、二人でいるところを見ると、いつも私を求めてきた。
慶斗の部屋のソファーに、隣り合わせで座る。
隣に彼が座っているだけで、ドキドキと鼓動が高鳴った。
楓の健診結果の詳細を一通り説明すると、慶斗は私の腰に手を回す。
「さっき、楓にキスされてたね。」
「ほっぺにキスって、可愛いですよね。」
「楓らしいよな。可愛くて、なんだか妬けたよ。」
腰に回した手で、私を引き寄せる。
普段は冷静で、自分の感情をあまり見せない慶斗。
そんな彼から嫉妬心を見せられると、なんとも言えない優越感が湧いてしまう。
「あんなに可愛い楓相手に嫉妬するなんて、俺も重症だな。」
彼の唇が重なって、私はゆっくりと目を閉じた。
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