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『甘え上手』
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夫の比奈多は、ほとんど喋らない。
話しかけたら返事はするけれど、自分発信でコミニュケーションをとることは滅多にないし、仕事に夢中になっている時は、食事さえ摂らない。
彼は、猫みたいだ。
気が向いた時に、急に甘えてくる。
いつもはそっけなくしているのに、懐に飛び込むのが上手い。
「繭、マッサージしてほしい。」
ソファーに座って、妊娠中の楓の食事について律と話していたら、比奈多がゴロンと私の膝の上に横になった。
「比奈多さん、何か食べますか?最近一日一食も食べてないから、心配してたんです。」
面倒見の良い律は、夫たちの食生活について把握してくれているので、とても助かる。
最近新しく夫として加わったパティシエの蘭と、シェフの明光と一緒に、食事管理をしてくれていた。
「いらない。繭にマッサージしてほしい。」
比奈多は一つの物事に集中すると、他のことを全てシャットアウトする癖があった。
「じゃあマッサージが終わったら、一緒に夕食にしましょう。」
「・・・わかった。」
律と目が合って、頷き合う。
比奈多に食事を摂らせようと、私と律は日頃から色々な作戦を練っていた。
まるで子どもを育てているような気分だ。
数学者の比奈多は、一日中難しい数式と向き合っている。
それ以外のことには、ほとんど興味がないようだった。
プラチナブロンドに、青い瞳。
両親も有名な数学者で、彼は数学界のサラブレッドらしい。
彼の部屋には大きなホワイトボードが置いてある。
ボードには数式が書き殴ってあり、机の上には分厚い本が数冊おいてあるだけ。
それ以外は、何もおいていない部屋だった。
今夜は比奈多と一緒に、この部屋で寝る予定だ。
ベッドの上で、彼の背中をマッサージする。
このベッドで、今夜彼と愛し合うのだと思うと、何だか妙に落ち着かなかった。
「繭、雫と寝たの?」
「え・・・あ、うん・・・。」
直球な問いかけに、恥ずかしくて声が小さくなってしまう。
「雫、最近すごく幸せそうだから、きっとそのせいだね。」
比奈多は、人に興味がないように見えて、実は他の夫たちをよく見ている。
「繭と寝たら、俺も幸せになるのかな。」
俯いたまま呟く彼の意味深な態度に、つい深入りしたくなった。
「比奈多さんは、子ども・・・欲しいですか?」
「俺は・・・子どもなんて、欲しくない。」
「子どもはあまり、好きじゃないですか?」
「嫌い。」
その言葉は嘘だと、私にはわかっていた。
彼は子どもが「嫌い」ではないと思う。
楓が妊娠してから、比奈多が何度か彼のお腹に触れている場面を目撃していたから。
楓と比奈多は、仲が良い。
中庭で二人仲良く日向ぼっこをしている姿を眺めるのが、私の癒し時間のひとつだった。
彼が子どもを欲しくないという理由は、きっと他にあるのだろう。
♢♢♢
ベッドに二人。
比奈多との、初めての夫婦の夜。
彼はパジャマのボタンを外して、下着一枚になるとベッドに潜り込んだ。
私も彼に倣って、パジャマを脱ぐ。
「比奈多さん。」
彼の身体に触れる。
白く透き通るような、薄い肌。
「子作りのためのセックスしか・・・しちゃいけないんだと思ってた。」
「そんなことないですよ。」
『優秀な遺伝子を残す』というのが、この結婚生活の一番の目的だと説明されたけれど、もちろん強制ではない。
産むのは私ではなく夫たちだ。それぞれの意思が尊重される。
「子どものことは関係なく、まずは比奈多さんのことをたくさん知って、いっぱい愛したいです。」
「俺にも、繭のこと・・もっと教えて。」
彼は甘え上手だ。
私の上に覆いかぶさり、手のひらを重ねるとお互いの指を絡める。
「繭の気持ちイイところは・・?俺に、全部教えて・・?」
触れるだけのキスから、より深いキスへ変わっていく。
私たち夫婦の時間は、まだ始まったばかりだ。
話しかけたら返事はするけれど、自分発信でコミニュケーションをとることは滅多にないし、仕事に夢中になっている時は、食事さえ摂らない。
彼は、猫みたいだ。
気が向いた時に、急に甘えてくる。
いつもはそっけなくしているのに、懐に飛び込むのが上手い。
「繭、マッサージしてほしい。」
ソファーに座って、妊娠中の楓の食事について律と話していたら、比奈多がゴロンと私の膝の上に横になった。
「比奈多さん、何か食べますか?最近一日一食も食べてないから、心配してたんです。」
面倒見の良い律は、夫たちの食生活について把握してくれているので、とても助かる。
最近新しく夫として加わったパティシエの蘭と、シェフの明光と一緒に、食事管理をしてくれていた。
「いらない。繭にマッサージしてほしい。」
比奈多は一つの物事に集中すると、他のことを全てシャットアウトする癖があった。
「じゃあマッサージが終わったら、一緒に夕食にしましょう。」
「・・・わかった。」
律と目が合って、頷き合う。
比奈多に食事を摂らせようと、私と律は日頃から色々な作戦を練っていた。
まるで子どもを育てているような気分だ。
数学者の比奈多は、一日中難しい数式と向き合っている。
それ以外のことには、ほとんど興味がないようだった。
プラチナブロンドに、青い瞳。
両親も有名な数学者で、彼は数学界のサラブレッドらしい。
彼の部屋には大きなホワイトボードが置いてある。
ボードには数式が書き殴ってあり、机の上には分厚い本が数冊おいてあるだけ。
それ以外は、何もおいていない部屋だった。
今夜は比奈多と一緒に、この部屋で寝る予定だ。
ベッドの上で、彼の背中をマッサージする。
このベッドで、今夜彼と愛し合うのだと思うと、何だか妙に落ち着かなかった。
「繭、雫と寝たの?」
「え・・・あ、うん・・・。」
直球な問いかけに、恥ずかしくて声が小さくなってしまう。
「雫、最近すごく幸せそうだから、きっとそのせいだね。」
比奈多は、人に興味がないように見えて、実は他の夫たちをよく見ている。
「繭と寝たら、俺も幸せになるのかな。」
俯いたまま呟く彼の意味深な態度に、つい深入りしたくなった。
「比奈多さんは、子ども・・・欲しいですか?」
「俺は・・・子どもなんて、欲しくない。」
「子どもはあまり、好きじゃないですか?」
「嫌い。」
その言葉は嘘だと、私にはわかっていた。
彼は子どもが「嫌い」ではないと思う。
楓が妊娠してから、比奈多が何度か彼のお腹に触れている場面を目撃していたから。
楓と比奈多は、仲が良い。
中庭で二人仲良く日向ぼっこをしている姿を眺めるのが、私の癒し時間のひとつだった。
彼が子どもを欲しくないという理由は、きっと他にあるのだろう。
♢♢♢
ベッドに二人。
比奈多との、初めての夫婦の夜。
彼はパジャマのボタンを外して、下着一枚になるとベッドに潜り込んだ。
私も彼に倣って、パジャマを脱ぐ。
「比奈多さん。」
彼の身体に触れる。
白く透き通るような、薄い肌。
「子作りのためのセックスしか・・・しちゃいけないんだと思ってた。」
「そんなことないですよ。」
『優秀な遺伝子を残す』というのが、この結婚生活の一番の目的だと説明されたけれど、もちろん強制ではない。
産むのは私ではなく夫たちだ。それぞれの意思が尊重される。
「子どものことは関係なく、まずは比奈多さんのことをたくさん知って、いっぱい愛したいです。」
「俺にも、繭のこと・・もっと教えて。」
彼は甘え上手だ。
私の上に覆いかぶさり、手のひらを重ねるとお互いの指を絡める。
「繭の気持ちイイところは・・?俺に、全部教えて・・?」
触れるだけのキスから、より深いキスへ変わっていく。
私たち夫婦の時間は、まだ始まったばかりだ。
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