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『甘い誘い』

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「またそのドラマ見てんのか?」

リビングで一人、夢中になってテレビに向かっていると、後ろからポンと頭を撫でられた。

振り返ると耀亮ようすけが私の顔を見て、「ただいま」と微笑む。
今、帰宅したところらしい。

午後3時。格闘家の彼は、練習を終えて大体いつもこの時間に帰宅する。


「おかえりなさい。ごめんなさい、夢中になってて玄関のドアの音、全然聞こえなかった。」

ソファーを背もたれにして床に座り、前のめりになってドラマに見入っていた。
夢中になるとついつい少しでもテレビに近づこうと、床に座る癖がある。



「こっち来いよ。」

彼はソファーに腰掛けると、自分の脚の間にある隙間すきま指差ゆびさした。

(そこに座るの・・・?私が・・・?)

珍しく耀亮の態度が、激甘で驚く。
リビングでイチャつくようなことは、一番あり得ないタイプだと思っていたのに。


「し・・・失礼します・・・・・。」

今なら他の夫もいないし、こんなチャンスもう二度とないかも知れない。
耀亮の方から、イチャついてくるなんて相当レアなケースだ。

言われるがまま、彼の脚の間にちょこんと身をおさめると、後ろからお腹に手を回された。
練習後にシャワーを浴びてきたのだろうか。ふわりとシャンプーの香りが鼻をかすめる。
首筋に、彼の吐息を感じる至近距離。


これはもう、ドラマどころじゃない。


耀亮の男らしい身体。お互いの足が触れ合う。
ゴツゴツしていて筋肉質な、屈強な男の身体。


「・・・どうしたの?」

「何がだよ。」

「珍しいから・・耀亮君から、こんな・・・ひゃっ?!」


突然、耳たぶを甘噛みされた。
驚いたのと、ピリッとした痛みに、ピクンと身体が大きく跳ねる。


「・・・もう我慢の限界だ。早く・・・お前を食いてぇ。」

低く、押し殺したような男の声。
耀亮は、性格も身体も全てがとても男らしい。

彼の下半身が、お尻に当たっている。


(もう・・・ドラマどころじゃないよ・・・・!!)


この家に来た初日に、お風呂で彼の裸を見たことを思い出した。

綺麗に割れた腹筋、広い肩幅。引き締まった美しい彼の肉体。



「当て日じゃなくても、夜じゃなきゃ良いんだよな?お前を抱いても。」

彼の手が、私の太ももをぎゅっと掴む。


「んッ・・よ、耀亮君・・・・」

確かに、日中に誰と愛し合ったとしても問題はない。



「これから、俺の部屋に来ないか?」

耳元で囁く。彼の男らしい低く太い声に、私は一気にエッチな気分になってしまった。
いつもは硬派でそっけない態度の彼が、甘い言葉を口にするギャップ。

私は、背後に彼の体温を感じながら、ゆっくりと大きく頷いた。
これ以上、リビングで彼に攻められるのはハラハラして落ち着かない。


「ただいま~!!!」
玄関が開いて、帰宅した学生組の声が響いた。


「部屋で、待ってる。」

耀亮は私の頬にちゅっと口付けると、リビングを出て2階へ上がって行った。




「ただいまー。あれ、繭?どうしたの、顔真っ赤だよ?」

「繭りん、風邪~?」

あいと、晴日はるひの理数コンビが帰ってくる。



私は赤面したまま、しばらくその場を動けなかった。


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