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『性癖』

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「俺は、無理矢理むりやりじゃないと・・・興奮しないんだ・・・!」


夫の煌大こうだいが、思い詰めた様子でそう告白した。
ベッドの上に正座をして、頬を赤らめてこちらを見つめる彼は、至って真剣な様子だ。


私のキョトン顔を見て伝わっていないと思ったのか、彼がもう一度繰り返す。



「せ、せ、性行為のことだよ・・!まゆが、嫌がってくれないと・・・俺は、興奮出来ない・・・っ」


(なるほど・・・そういうパターンもあるのか・・・・)

嫌悪感とか恐怖心とか、そんな感情はまるでなかった。
そういう性癖の人もいるんだなぁと、ただそう思ったのだ。

意を決して打ち明けてくれたようなので、きちんと受け止めた方が良いだろう。


「私は、どうしたらいいのかな・・?」

教えて?と優しく言うと、彼は安心したように私を抱きしめた。


「手荒なことはしたくない。繭が本当に嫌だと思った時は、手を上げて伝えて欲しい。」

(え・・・歯医者じゃないんだから・・・・)


煌大はあくまで真剣にそう口にしたので、私はゆっくりと深く頷いた。


彼はお金持ちの御曹司おんぞうしで、英才教育を受けて育った。
幼い頃から芸術方面に才能があり、絵画や音楽で多数の賞を受賞している天才。
俳優として、映画に出演したこともあるらしい。

私の夫は、こんな世界にならなければ、絶対に出会えなかったであろう人種ばかりだ。

明るい茶色の髪、毛先を無造作に遊ばせたヘアスタイル。
煌大の見た目は、今時の若者という印象だった。

とりあえず私は夫のニーズに合わせて、人生初めての演技に挑戦することにした。



「もう逃げられないぞ・・・!!」

夫の演技が、突然始まる。

(え、え・・!?もう始まったの・・?!)

彼は、私をベッドに優しく突き飛ばした。

ボスっとふかふかのベッドに飛ばされた私は、とりあえず怯える演技をしてみる。


「こ、煌大さん・・・ッ・・・困ります・!私・・・まだ、心の準備が・・・っ」

(こんな感じ・・・かな・・・・?)


「思わせぶりな態度で、散々俺をあおっておいて・・・・今更そんなこと通用するかよ・・・!」

彼はハァ、と息を荒げて私に迫る。


「や・・やめて・・・嫌っ・・・!!」

夫は私をベッドにうつ伏せにさせると、押さえつけてスカートを捲り、勢いよく下着を下ろした。


「やっ・・・やだ・・ッ・・・・」

これは本当に恥ずかしい。
演技というか、本心がかなり入った声が出る。


秘部に彼の指がクチュリ、と音を立てて入り込んできた。

「痛っ・・・やめて・・・やめて・・っ」

「おいおい、止めてはねぇだろ?・・・こんなにグチョグチョにしておいて・・・・」


彼が舌なめずりする様子が、頭に浮かぶ。


興奮した彼は、ゴソゴソと自分のモノを取り出すと、思い切り私の中に挿入してきた。

「んんんぅ・・・・ぅ!!」

急に奥まで挿れられて驚いたけれど、痛みはない。

私のつたない演技力でも、彼は興奮できたようだった。


「繭・・っ・・・繭・・・っ・・・!!」

彼は一心不乱に腰を打ち付けると、すぐに絶頂を迎えた。


「うぅ・・っ・・・あぁ・・・っ興奮する・・っ・・・・出すぞ・・・っ」

「や・・・っダメ・・・ッ・・・」

「うううぅッイク・・イク・・奥に出る・・・ッあ!!!!」


押さえつけられたまま、彼が私の奥に腰を打ち付け、精液を放つ。
独りよがりなセックスだけれど、私は妙に興奮してしまっていた。



♢♢♢


「ねぇ、繭。」

その日の夜、喉が渇いてリビングに水を飲みに降りたら、あいとばったり遭遇した。

愛は女性のような可愛らしい見た目をした、私の夫。

明るい茶色の髪をした、ロングヘアの美しい男性。
思わず美少女、と言ってしまいそうな可愛らしいルックスだが、かなりの毒舌だ。
まだ20歳の学生で、遺伝子関係の勉強をしている。


「愛ちゃん、眠れないの?」

「俺、煌大こうだいの隣の部屋だから。」

彼の言葉の意図することがわかって、赤面する。
煌大との情事の声が、うるさかっただろうか。


「アンタ、大丈夫?」

「え?」

「あいつに嫌なことされてない?」

愛が、私の手を取りぎゅっと握った。
真っ直ぐに真剣な瞳で見つめられて、思わずドキドキ胸が高鳴る。


(あ・・・もしかして、やめてとか嫌だとか叫んでたから心配してるのかな・・・・)


性癖のこととなると、他の夫にも言いにくい。



「されてないよ。大丈夫。ごめんね。うるさかったかな・・・・?」

口に出した途端に、恥ずかしくなった。


「繭が大丈夫なら、いいけど。・・・なんかあったら、俺に言ってよ?」


女性的な顔立ちと、男らしさのギャップがすごい。

心臓がドキドキうるさくて、私は黙って深く頷くしかできなかった。



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