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『俺の奥さん』
しおりを挟む「ん・・っ・・桜雅く・・・・ん・・・ぅ」
(桜雅君・・・めちゃくちゃ良い香りがする・・・・!!)
朝から桜雅君に、キスされる。
夫たちとの生活は、いつもとても刺激的だった。
「オイ、桜雅、テメェ何してんだよ。」
「あ?耀亮テメ、触るんじゃねぇよ!」
桜雅の腕を掴んで捻り上げるのは、寝起きで洗面台を使おうと現れた耀亮だ。
この二人は本当に仲が悪い。
「お前、朝から繭の嫌がることしてんじゃねぇよ。」
「はぁ?どこが嫌がってた?お前、目見えねぇんじゃねえの?」
「俺の女に、好き勝手すんな。」
「はぁぁぁ?俺も夫なんだよ。偉そうにすんじゃねぇ!!」
私の存在を忘れたかのように、二人は顔をギリギリまで近づけてガンを飛ばしあっている。
イケメン男子二人に取りあいされているようで、悪い気がしない。
「ちょ・・ちょっと二人とも・・・」
「こらこら、お前ら朝から血気盛んだね。見てるだけで疲れるからやめて。」
「綾人さん・・!」
「うっす。」
寝起き姿で洗面所に入ってきた綾人が、言い争う二人をチラリと横目で見て言った。
綾人は私の夫の中では、年長組に入る男性だ。
茶髪のウェーブヘアが印象的な、キラキラ系イケメン。
見た目からは想像出来ないが、特殊部隊で働いていた元スナイパーらしい。
現在は、慶斗と同じ研究所で働いている。
何度か話したけれど、彼は自分のことを話すのが苦手なようだった。
夫たちは年齢順に権限が与えられていて、年長者は敬うように縦関係がしっかり構成されている。
ルールを守らないものは、追い出されることになっても文句は言えない。
秩序を守るために、きちんと定められているらしかった。
「良い子だから、二人とも静かにしてようね。」
綾人はいつもどこか気だるそうな雰囲気で、人とあまり積極的に関わろうとしない印象がある。
「綾人さん、おはようございます。」
恐る恐る話しかけてみた。
自分の夫なのに、彼とはどう話していいのか戸惑っている。
「おはよう。俺の奥さん。」
(綾人さん・・・キラッキラ・・王子様みたい・・・。)
早朝だというのにキラキラとした笑顔を向けられて、私はノックアウトされそうになった。
「綾人さん、一緒に朝ご飯食べたいです・・!」
ほとんど話したことのない綾人さんが、私はとても気になっていた。
夜、キッチンに水を飲みに行った時、彼と廊下ですれ違った。
窓から中庭を見る彼の目が、とても悲しそうで印象的だったから。
彼はタオルで顔の水分を拭き取ると、ニコッと私に笑顔を向ける。
「仕事早く出なきゃならないから、またゆっくりね。俺の可愛い奥さん。」
ポンポンと頭を撫で、彼は洗面所から出て行った。
彼のキラキラした笑顔に衝撃を受け、私はしばらくその場から動けなかった。
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