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好きって言ってみ?
しおりを挟む「なぁ、壮馬。俺のこと、好き?」
早朝、部屋を出ようと靴を履いたところで、突然凛が俺を見上げて言った。
凛は靴を履く時、ちょうど良いからと俺の腕に掴まって履く。
至近距離に凛がいることにようやく慣れてきたところなのに、不意打ちはずるい。
「え・・っ・・・?!あ?え、あ~?」
「何そのキモイ反応。マジ引くからやめろ。」
色気も何もないマジギレ声が返ってきて、すみませんと謝るしかなかった。
「恋人同士なら、好きとか大好きとか言うじゃん。」
「まぁ・・・そうだよな。」
万年セフレ止まりの俺は、そんな甘ったるい時間を過ごした経験はほとんどない。
櫂莉さんに甘い言葉をかけてもらえるのは、セックスの時だけだ。
「好きって言ってみ?」
俺より20センチほど背が低い凛は、キスをせがむように背伸びをしながら俺の目を見た。
(うわ・・・キスされるかと思った・・・・びっくりした~!!)
華奢な肩、小さな顔、バサバサと音が鳴りそうなほどに長いまつ毛、大きな瞳。
「ん?」と首を傾げながら、「好き」という言葉をせがむ凛の可愛さに、俺はまだ耐性がない。
「す・・・・好き・・・」
「え?なんだって?声が小さ過ぎて聞こえない。」
部屋の鍵をかけるのは、凛の役目だ。
鍵を回した後、きちんと施錠されているかどうか、ドアノブを回して確認する。
「好き・・・だ・・・」
「はい?なんか言った?」
「凛・・・!好きだ・・・!!」
勢い余って飛び出た大きな声に驚いて振り返った凛の視線は、俺ではなく真逆の方向に向けられる。
「え・・あ・・櫂莉さん・・・っ?!」
隣の部屋から出てきた櫂莉さんと、ばっちり目が合う。
彼の後ろに立っている篠崎先生も、驚いた顔でこちらを見ていた。
「朝から熱いねぇ、お二人さん。」
「ちょっと壮馬、こんなとこで恥ずかしいからやめてよね。」
「な・・凛、お前が言えって言ったんだろ・・・」
若いっていいよねぇ、と言いながら俺たちの横を通り過ぎる篠崎先生の後ろに、櫂莉さんが続く。
「朝から騒いでんじゃねぇよ。」
ボソリと吐き捨てた櫂莉さんの目が睨みつけるように鋭くて、俺はしばらくその場から動けなかった。
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