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ご褒美
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「櫂莉と篠崎 蒼の愛の巣が隣の部屋とか・・なんか気分悪いんだけど。」
ようやく片付いたリビングのソファにドンと豪快に腰掛けた凛がぼやく。
俺と凛は、今日からルームメイトとして過ごすことになる。
櫂莉さんと篠崎先生の暮らす部屋が隣と知り、俺はテンションだだ下がりだった。
『なぁって、蒼さん。』
『櫂莉・・ほっといてくれよ。ルームメイトだからって、何でも干渉して良い訳じゃないだろ。』
窓を全開にしていたら、隣の部屋から櫂莉さんと篠崎先生の声が聞こえてきた。
「喧嘩」とまではいかないけれど、なんとなく不穏な雰囲気が感じ取れる。
俺と凛は顔を見合わせて息を潜め、窓の近くで耳を澄まし様子を伺う。
「痴話喧嘩・・?」
小声で口をパクパクさせながら、凛が眉間にシワを寄せた。
『真剣になるなんて、あんたらしくないじゃん。遊びの相手なら、俺にしときなよ。』
『冗談。お前に面倒見てもらうほど、困ってないっつうの。』
『なぁ、蒼さん・・・俺が全部忘れさせてやるよ。』
ブワッと身体中に鳥肌がたった。
櫂莉さんの、この声。
俺をベッドに誘う時に使う、甘ったるくて最高にエロイ声。
聞いただけで、下半身が反応した。
(櫂莉さん・・・篠崎先生にもあんな声出すんだ・・・・)
胸が苦しい。
俺の身分がただのセフレであることは、百も承知だけれど。
それでも心のどこかでは、期待を捨てきれない自分がいる。
『お前ね、後輩の分際で生意気。さっさと自分の部屋戻って、勉強でもしてろ。』
(あんなにカッコよくてエロイ櫂莉さんを軽くあしらうなんて・・・篠崎のヤロー何様のつもりだよ?!)
軽くあしらってもらわなければ困るのは俺だが、そう思わずにはいられない。
(あのイケメン櫂莉さんに迫られて断る人間が、この世界に実在するとは・・・・)
全く筋の通らない怒りを覚えながら、聞き耳を立てて次の言葉を待つ。
『ねぇ、蒼さん。ご褒美くださいよ。俺今日、めちゃくちゃ頑張ったでしょ?』
(ご、ご褒美ぃ?!なんつーエロイ言い方するんだよ、櫂莉さんは・・・!くっそ~篠崎蒼め・・・!!死ぬほど羨ましい・・・・!!)
『あのなぁ櫂莉、医者は頑張って当たり前。それが普通なの。ご褒美なんて、俺だって一度ももらったことねぇよ。』
『じゃあ・・俺が、蒼さんにご褒美あげます。』
ベルトをガチャガチャと外す音が聞こえる。
(え・・!え・・!?嘘まじで・・・?!)
『おい、櫂莉・・やめろ・・・!』
『良いじゃないっすか。なんの意味もないっすよ。ただの性欲処理。こんなのよくあることでしょう?』
『ねえよ。ばか。』
(ヤバイヤバイヤバイ・・!どうしよう・・・このままじゃ櫂莉さんが蒼さんと・・・・)
「あれ~?ここベランダ広くない?」
突然、凛がドアを開けてベランダに出る。
「壮馬!見てみて!この広さならハーブ育てたりできるんじゃね?」
お前もこっちに来い!!とジェスチャーで俺に伝える凛に、慌てて従う。
「ほ、本当だ~!すごい広いな!ガーデニングでもやっちゃうか!」
どんだけ大根役者だよ!!と凛がうんざりした顔をする。
あまりにひどい棒読みに、自分でも少し引いた。
隣の部屋の2人の声が、ぴたりと止んでいる。
少しの沈黙の後、篠崎蒼が窓から顔を出した。
「ハーブは良いけど、虫が寄ってくる系のものはやめてね、君たち。」
とりあえず、「ご褒美」は免れたらしい。
俺は心底ほっとして、涙が出そうになる。
俺たちは笑顔で篠崎蒼に手を振りながら、後輩らしく素直に頷いて見せた。
ようやく片付いたリビングのソファにドンと豪快に腰掛けた凛がぼやく。
俺と凛は、今日からルームメイトとして過ごすことになる。
櫂莉さんと篠崎先生の暮らす部屋が隣と知り、俺はテンションだだ下がりだった。
『なぁって、蒼さん。』
『櫂莉・・ほっといてくれよ。ルームメイトだからって、何でも干渉して良い訳じゃないだろ。』
窓を全開にしていたら、隣の部屋から櫂莉さんと篠崎先生の声が聞こえてきた。
「喧嘩」とまではいかないけれど、なんとなく不穏な雰囲気が感じ取れる。
俺と凛は顔を見合わせて息を潜め、窓の近くで耳を澄まし様子を伺う。
「痴話喧嘩・・?」
小声で口をパクパクさせながら、凛が眉間にシワを寄せた。
『真剣になるなんて、あんたらしくないじゃん。遊びの相手なら、俺にしときなよ。』
『冗談。お前に面倒見てもらうほど、困ってないっつうの。』
『なぁ、蒼さん・・・俺が全部忘れさせてやるよ。』
ブワッと身体中に鳥肌がたった。
櫂莉さんの、この声。
俺をベッドに誘う時に使う、甘ったるくて最高にエロイ声。
聞いただけで、下半身が反応した。
(櫂莉さん・・・篠崎先生にもあんな声出すんだ・・・・)
胸が苦しい。
俺の身分がただのセフレであることは、百も承知だけれど。
それでも心のどこかでは、期待を捨てきれない自分がいる。
『お前ね、後輩の分際で生意気。さっさと自分の部屋戻って、勉強でもしてろ。』
(あんなにカッコよくてエロイ櫂莉さんを軽くあしらうなんて・・・篠崎のヤロー何様のつもりだよ?!)
軽くあしらってもらわなければ困るのは俺だが、そう思わずにはいられない。
(あのイケメン櫂莉さんに迫られて断る人間が、この世界に実在するとは・・・・)
全く筋の通らない怒りを覚えながら、聞き耳を立てて次の言葉を待つ。
『ねぇ、蒼さん。ご褒美くださいよ。俺今日、めちゃくちゃ頑張ったでしょ?』
(ご、ご褒美ぃ?!なんつーエロイ言い方するんだよ、櫂莉さんは・・・!くっそ~篠崎蒼め・・・!!死ぬほど羨ましい・・・・!!)
『あのなぁ櫂莉、医者は頑張って当たり前。それが普通なの。ご褒美なんて、俺だって一度ももらったことねぇよ。』
『じゃあ・・俺が、蒼さんにご褒美あげます。』
ベルトをガチャガチャと外す音が聞こえる。
(え・・!え・・!?嘘まじで・・・?!)
『おい、櫂莉・・やめろ・・・!』
『良いじゃないっすか。なんの意味もないっすよ。ただの性欲処理。こんなのよくあることでしょう?』
『ねえよ。ばか。』
(ヤバイヤバイヤバイ・・!どうしよう・・・このままじゃ櫂莉さんが蒼さんと・・・・)
「あれ~?ここベランダ広くない?」
突然、凛がドアを開けてベランダに出る。
「壮馬!見てみて!この広さならハーブ育てたりできるんじゃね?」
お前もこっちに来い!!とジェスチャーで俺に伝える凛に、慌てて従う。
「ほ、本当だ~!すごい広いな!ガーデニングでもやっちゃうか!」
どんだけ大根役者だよ!!と凛がうんざりした顔をする。
あまりにひどい棒読みに、自分でも少し引いた。
隣の部屋の2人の声が、ぴたりと止んでいる。
少しの沈黙の後、篠崎蒼が窓から顔を出した。
「ハーブは良いけど、虫が寄ってくる系のものはやめてね、君たち。」
とりあえず、「ご褒美」は免れたらしい。
俺は心底ほっとして、涙が出そうになる。
俺たちは笑顔で篠崎蒼に手を振りながら、後輩らしく素直に頷いて見せた。
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