溺愛彼氏(スパイ)と、硬派な元カレ(ポリス)に求愛されて困っています。

aika

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『未練』

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神矢かみやさんとの恋がうまく行かなくなった原因は、私にある。
彼の尋常じゃないモテぶりに、私など不釣り合いだと卑屈になってしまった。

恋人として彼に相応ふさわしい女でいられる自信が、なくなったのだ。

捜査官である彼の仕事は不規則。
次にいつ会えるかもわからず、言い寄ってくる女性は数知れず。
ときめきよりも、いつしか不安が多くなっていった。

電話が繋がらないことも多い彼との恋に、疲れ果ててしまったのだ。


「今夜はお前の好きなビーフシチューにしようと思うが、どうだ?」

フェロモンダダ漏れの色男、神矢かみや 亮一りょういちの「お前」呼び。
私はこれにめっぽう弱い。

溺愛してくれるスパダリがいるというのに・・抗いようのない雄の魅力を浴びせられ、私はあまりの眩しさに目を閉じた。
かおる君が留守の間、この色男と二人きりで過ごすのかと思うと、不安しかない。

(ダメだ・・直視したら秒でやられる・・・ッ・・フェロモンもビジュアルの破壊力もやばすぎる・・っ)

「あ・・・ありがとうございます。ビーフシチュー楽しみだなぁ~。」

忙しい神矢さんはあまり自炊をしない。
かおる君はいつもプロ級の食事を用意してくれるけど、普段料理をしない神矢さんが私のためだけに苦手な手料理を振る舞ってくれるというレア感にキュンとなるのも事実で。

(あぁ・・私ってなんて罪深い女・・・っ)


まゆに振られて以来作っていないから、うまく作れるかわからないが・・・大目に見てくれよ。」

苦笑した彼の完璧な横顔に、胸が高鳴る。
私と別れてから女性に手料理を振る舞っていないという、さりげない「フリー宣言」に危うく落とされるところだった。

(ダメ・・!私には馨君がいるんだから・・・神矢さんの直視は禁止・・・!!)

自分を戒め、顔を背ける。

「そういえば、リリーさんは元気?」

仕事のパートナー、リリーさんは彼の元恋人らしい。
超絶美人でスタイルも性格も良い、非の打ち所がない女性捜査官だ。

私が神矢さんと付き合っていた当時は、劣等感を感じたくない一心で彼女に関する話は避けていた。

「相変わらず元気だよ。・・気になるか?」

「え?」

「ずっと気にしてただろう?彼女とは何もない。俺はずっと、お前しか見てないよ。」

「神矢さ・・ん、」

驚いて顔を上げた瞬間、真剣な表情で私を見つめる彼と目が合った。
熱い視線に囚われて、身体が動かなくなる。

「あ・・アーモンドミルク切らしてたかも。買ってこなきゃ、」

話を逸らして冷蔵庫を開けようとした私を、彼が後ろからふわりと抱きしめた。

「ヨリを戻さないか?」

「神矢、さん・・・っ」

彼の香り、体温、低くてセクシーな囁き声。

「お前のことが、忘れられない。」

ドキドキと馬鹿みたいにうるさい心臓の音が、彼に対する未練を物語っていた。



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感想 1

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みんなの感想(1件)

ぶた
2023.08.19 ぶた

面白すぎます。

aika
2023.08.20 aika

嬉しいです(*^◯^*)ありがとうございます!!

解除

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