40 / 47
♧『想い人』(箔凪 華南)
しおりを挟む
~~~~登場人物~~~~
♧箔凪 華南(はくなぎ かなん) 32歳
黒髪、襟足が長い。細く縁のないメガネをかけている。美しく知的な顔立ち。
女性のような華奢な身体だが長身。小顔。
箔凪家の広報担当。ルックスの美しさから、男女ともにファンが多い。
「華道会の貴公子」と名高く、茶道雑誌に連載を持ち、熱狂的なファンも。
人と馴れ合わず、冷たい。性格は可愛くない。素直になれず肩肘を張って生きている。
腹違いの兄である侑亮にずっと片思いをしている。
♧南谷 侑亮(みなみや ゆうすけ)36歳
箔凪 宗華が一度目の結婚でもうけた第一子。
茶髪、学生時代にアメフトをやっていた過去があり、がっしりとした体型。長身。
妹と婚約者を同時期に亡くしており、それから人が変わってしまった。
大切な人をなくしたくない一心で、もう誰も愛さないと決めている。
海外で働いていたが、数年前日本に戻り予備校で英語講師をしている。
仕事で海外進出を考えている龍牙に英語を教えている。
♧南谷 美蘭(みなみや みらん) 生きていれば33歳(享年24)
病気で亡くなった、侑亮の妹。
~~~~~~~~~~~
♧『想い人』(箔凪 華南)
私には、幼い頃からずっと心を寄せている人がいる。
腹違いの兄、南谷 侑亮。
その特殊な関係性から、気持ちを打ち明けられないまま大人になってしまった。
うじうじしている私を見かねて、従兄弟の龍牙が侑亮と会えるようにセッティングしてくれた。
久々に再会した想い人に、胸が高鳴る。
私の父、箔凪宗華と前妻との子である侑亮。面倒見が良く、優しかったこの男は、ある日を境に変わってしまった。
「日本に戻って来ているなら、連絡くらいしてくれよ。」
「お前に知らせる義理なんかないだろ。」
結婚間近の婚約者と妹を同時期に失い、彼は人が変わってしまったのだ。
とりあえず部屋へ入れてもらえたものの、彼の態度は歓迎とは程遠く心が折れそうになる。
人一倍プライドが高く、他人に遜ることが苦手な私が、なりふり構わず懇願してしまうほど、彼は特別な存在だった。
「私はまたお前と・・・昔みたいに色々話したい。お前がいなくて・・・ずっと寂しかった。」
最大限の勇気を振り絞って、率直な言葉を吐き出す。
冷めた瞳で私を見下ろす彼の整った顔。
変わってしまった彼でさえ、全てをありのまま受け入れる覚悟が私にはある。
「お前のそういうところが、面倒くさくて嫌いなんだよ。」
彼の中にある明確な敵意にさえ、愛おしいと感じてしまう私は重症だ。
手を伸ばせば触れられる距離に彼がいてくれるだけで、十分だった。
♢♢♢
「また来たのか、お前。」
呆れたような口調の中に、今までとは違う感情が見て取れる。
何度も彼の部屋に足を運び、部屋の前で何時間だって彼の帰りを待った。
自分の必死さを恥じる気持ちもあるが、なりふり構っていられない。
「ろくなもの食べてないと思って、来てやったんだ。」
倒れられたら困るからな、とスーパーの袋をかざすと、侑亮は勝手にしろと小さく呟いた。
海外で暮らしていた彼とは、何年も音信不通だった。顔を見て言葉を交わせるだけで、幸せすぎて涙が出そうになる。
ただ話せるだけで、こんなにも幸せなのに。
もっと欲しいと心がどんどん欲張りになっていくのを、止められない。
食べ終わった食器をキッチンに下げる侑亮の後ろ姿を見ていたら、抑えきれず抱きついていた。
驚いたのか何も言わず動かない彼の背中に、縋り付く。
「侑亮・・・私は・・・」
お前が好きだ。その一言が、出てこなかった。
悲しい目をしたこの男が、どうしようもなく好きなのだ。
心の中ではいくらでも彼に愛を語れるのに、いざ彼を目の前にすると怖くて立ち竦んでしまう自分が情けない。
「だから嫌なんだよ、お前は。」
私の手をほどき面倒くせぇ、と呆れたように吐き捨てる彼を縋るように見つめると、思いがけず真剣な視線が返ってきて驚いた。
「俺のテリトリーに入ってくるな。」
警告と思われるその言葉に、私は大きく首を振る。
「嫌だ。絶対に入り込んでやる・・・!」
どうしても彼が欲しい。彼のそばにいたい。
どんなに拒絶されようとも、離れるなど出来るはずがない。
「そんなに俺に・・痛めつけられたいか?」
怒りを含んだ侑亮の瞳を、逃げずにまっすぐ受け止めた。
「・・・覚悟は出来てるんだろうな?」
彼の低い声が、警告する。
ぞくりと背筋が震えるような、ドスのきいた低い声。
「当たり前だ。覚悟なんか、10年前からずっと出来てる。」
ちっと舌打ちした彼に押し倒されたのだと分かったのは、組み敷かれ唇を奪われた瞬間だった。
♧箔凪 華南(はくなぎ かなん) 32歳
黒髪、襟足が長い。細く縁のないメガネをかけている。美しく知的な顔立ち。
女性のような華奢な身体だが長身。小顔。
箔凪家の広報担当。ルックスの美しさから、男女ともにファンが多い。
「華道会の貴公子」と名高く、茶道雑誌に連載を持ち、熱狂的なファンも。
人と馴れ合わず、冷たい。性格は可愛くない。素直になれず肩肘を張って生きている。
腹違いの兄である侑亮にずっと片思いをしている。
♧南谷 侑亮(みなみや ゆうすけ)36歳
箔凪 宗華が一度目の結婚でもうけた第一子。
茶髪、学生時代にアメフトをやっていた過去があり、がっしりとした体型。長身。
妹と婚約者を同時期に亡くしており、それから人が変わってしまった。
大切な人をなくしたくない一心で、もう誰も愛さないと決めている。
海外で働いていたが、数年前日本に戻り予備校で英語講師をしている。
仕事で海外進出を考えている龍牙に英語を教えている。
♧南谷 美蘭(みなみや みらん) 生きていれば33歳(享年24)
病気で亡くなった、侑亮の妹。
~~~~~~~~~~~
♧『想い人』(箔凪 華南)
私には、幼い頃からずっと心を寄せている人がいる。
腹違いの兄、南谷 侑亮。
その特殊な関係性から、気持ちを打ち明けられないまま大人になってしまった。
うじうじしている私を見かねて、従兄弟の龍牙が侑亮と会えるようにセッティングしてくれた。
久々に再会した想い人に、胸が高鳴る。
私の父、箔凪宗華と前妻との子である侑亮。面倒見が良く、優しかったこの男は、ある日を境に変わってしまった。
「日本に戻って来ているなら、連絡くらいしてくれよ。」
「お前に知らせる義理なんかないだろ。」
結婚間近の婚約者と妹を同時期に失い、彼は人が変わってしまったのだ。
とりあえず部屋へ入れてもらえたものの、彼の態度は歓迎とは程遠く心が折れそうになる。
人一倍プライドが高く、他人に遜ることが苦手な私が、なりふり構わず懇願してしまうほど、彼は特別な存在だった。
「私はまたお前と・・・昔みたいに色々話したい。お前がいなくて・・・ずっと寂しかった。」
最大限の勇気を振り絞って、率直な言葉を吐き出す。
冷めた瞳で私を見下ろす彼の整った顔。
変わってしまった彼でさえ、全てをありのまま受け入れる覚悟が私にはある。
「お前のそういうところが、面倒くさくて嫌いなんだよ。」
彼の中にある明確な敵意にさえ、愛おしいと感じてしまう私は重症だ。
手を伸ばせば触れられる距離に彼がいてくれるだけで、十分だった。
♢♢♢
「また来たのか、お前。」
呆れたような口調の中に、今までとは違う感情が見て取れる。
何度も彼の部屋に足を運び、部屋の前で何時間だって彼の帰りを待った。
自分の必死さを恥じる気持ちもあるが、なりふり構っていられない。
「ろくなもの食べてないと思って、来てやったんだ。」
倒れられたら困るからな、とスーパーの袋をかざすと、侑亮は勝手にしろと小さく呟いた。
海外で暮らしていた彼とは、何年も音信不通だった。顔を見て言葉を交わせるだけで、幸せすぎて涙が出そうになる。
ただ話せるだけで、こんなにも幸せなのに。
もっと欲しいと心がどんどん欲張りになっていくのを、止められない。
食べ終わった食器をキッチンに下げる侑亮の後ろ姿を見ていたら、抑えきれず抱きついていた。
驚いたのか何も言わず動かない彼の背中に、縋り付く。
「侑亮・・・私は・・・」
お前が好きだ。その一言が、出てこなかった。
悲しい目をしたこの男が、どうしようもなく好きなのだ。
心の中ではいくらでも彼に愛を語れるのに、いざ彼を目の前にすると怖くて立ち竦んでしまう自分が情けない。
「だから嫌なんだよ、お前は。」
私の手をほどき面倒くせぇ、と呆れたように吐き捨てる彼を縋るように見つめると、思いがけず真剣な視線が返ってきて驚いた。
「俺のテリトリーに入ってくるな。」
警告と思われるその言葉に、私は大きく首を振る。
「嫌だ。絶対に入り込んでやる・・・!」
どうしても彼が欲しい。彼のそばにいたい。
どんなに拒絶されようとも、離れるなど出来るはずがない。
「そんなに俺に・・痛めつけられたいか?」
怒りを含んだ侑亮の瞳を、逃げずにまっすぐ受け止めた。
「・・・覚悟は出来てるんだろうな?」
彼の低い声が、警告する。
ぞくりと背筋が震えるような、ドスのきいた低い声。
「当たり前だ。覚悟なんか、10年前からずっと出来てる。」
ちっと舌打ちした彼に押し倒されたのだと分かったのは、組み敷かれ唇を奪われた瞬間だった。
20
お気に入りに追加
20
あなたにおすすめの小説



【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集
あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。
こちらの短編集は
絶対支配な攻めが、
快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす
1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。
不定期更新ですが、
1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
書きかけの長編が止まってますが、
短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。
よろしくお願いします!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる