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♡『不毛な想い』 (樽馬 嶺)
しおりを挟む~~~~登場人物~~~~
♡樽馬 嶺(たるま れい)39歳
愛治医療センターの心臓外科医。銀髪。切れ長の瞳。インテリメガネ。
長身でモデルのようにすらりと長い手足。
知的、クールで無口なキャラで一見とっつきにくそうだが、中身は熱い。
先輩の湊にいつもいじられている。湊には頭が上がらない。学生時代から一途に湊を想い続けている。
♡湊 京(みなと けい) 41歳
愛治医療センターの優秀な心臓外科医。
肩まで伸ばしたロン毛のイケメン。青光りする黒髪。
医者とは思えないチャラチャラした軽い雰囲気。いい加減で荒っぽい喋り方。
人を小馬鹿にした話し方をする。
患者に対しては、優しく紳士的。
♡角 静(すみ しずか) 34歳 整形外科医
ベージュ色のサラサラヘア。腰までの長髪を後ろで一つに纏めている。
女性のようにきめ細かい白肌、繊細で綺麗な顔立ち。細身の高身長。
若き天才心臓外科医として脚光を浴びていた。
普段は敬語で穏やかに話すが、本性は毒舌で攻撃性がある超ドS男。樽馬のことが気に入っている。
~~~~~~~~~~
「樽・・・!おい、待てって!!」
湊さんが珍しく声を張り上げながら、俺の後を追ってくる。
もうこれ以上、望みを持たせるのはやめてほしい。
追いかけてくる彼の必死さに、安堵と優越感と期待が複雑に入り混じった。
乱暴に肩を掴み俺を振り向かせた湊さんの不機嫌な表情。
俺の心はいつだって彼によって、簡単に乱される。
「なんですか、俺に何か用ですか?」
「静に何言われたか知らねぇけど、いい加減拗ねんのやめろよ。」
「拗ねてる?俺が?」
確かにそうなのかもしれない。
俺ではなく角先生を手術のパートナーに選んだ湊さんに、恨みがましい態度を取るのはお門違いもいいところだ。
どんなに努力しても、手術の腕は天性によるものが大きい。
角先生は紛れもない天才医師だ。
「拗ねてなんかないですよ。諦めただけです。」
「諦めた?」
「はい。」
「何を?」
うんざりという顔で、俺をなだめにかかる。
彼のそんな態度に、心底腹が立っていた。
長年の不毛な片思い。
俺はそれなりに疲れていたみたいだ。
「あなたを、好きでいることです。」
湊さんの顔色が変わったのがわかって、自分が口にした言葉の重みに打ちのめされる。
「なんだよそれ。・・・誰が頼んだ?」
低い声。彼が本気で怒っているのだとわかる。
見放されるのが怖いくせに、暴走した感情を止めることが出来ない自分はやはり子供だ。
「俺を好きなんて、お前の口から聞いたことねぇよ。」
長く一緒にいるせいで、言わなくても伝わっていると思っていた。
いや、実際に湊さんは俺の気持ちに気付いているはずだ。
言葉にしなくてもわかって欲しいと期待すること、こちらの感情を察して動いてくれと願うことは、あまりに他力本願で己の努力を放棄したのと同じことだった。
この想いが徹底的に否定されたとして、俺はこの先どうやって生きていくつもりなのだろう。
自分の存在さえ危うく思えるほどに、俺は湊 京という男に心底惚れてしまっていた。
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