BOYS❸

aika

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♢『再会』(SIDE 吉住 純)

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~~登場人物~~

♢吉住 純(よしずみ じゅん)19歳

女の子にしか見えない小柄で可愛い男子。童顔で、色白。
肩まで長さのある髪は、毛先がくるりとカールした手入れの行き届いた艶髪。
女性に間違われることが多く、いつも取り巻きがいるモテ男子。
校内でも有名な可愛い男子生徒。恋人をとっかえひっかえしている。


♢田中 脩 (たなか しゅう) 34歳

吉住の中学時代の担任教師。黒縁のメガネ、短めの茶髪。
のんびりした毒のなさそうな外見をしているのに、この男をなめてはいけない怒らせてはいけないという、本能的な緊張感を与えるタイプ。


~~~~


『再会』(SIDE 吉住 純)



夕方の商店街。
いつも通りの喧騒が、何の特別感もない僕の1日を終わらせようとしていた。


「田中・・・センセ・・?」

「・・・・純?」

運命の再会はある日突然やってきた。なんの前触れもなく。

僕が初めて好きになった人。
中学時代の担任教師、田中たなかしゅう


「え・・・うそ、全然年取ってないじゃん。あんたいくつ?!」

「純、元担任に向かってあんたはないんじゃない?」

相変わらずだな、そう言って彼は笑った。
まるで昨日まであの準備室で一緒に過ごしていたかのように、ごく自然に。

あの時から止まっていた時間がようやく動き出したのだと思った。
モノクロだった視界は急に晴れやかに光をとらえ、身体中に血液が流れ出す。

田中脩という生き物は、僕にとって異質だった。



「え!中学に戻ってきたの?」

「そうだよ。元々実家がこっちにあるから。」

久々の再会だというのに懐かしむ様子もなく、彼はただ淡々と僕の質問に答える。

毎年何百人という生徒たちと出会う仕事なのだから、それが普通なのだろう。
それでも、僕が先生にとって特別な生徒ではないという事実は、今の僕の全てを否定するようでひどくショックだった。

「どこに住んでるの?今。」

「昔住んでたあたりだよ。」

「昔ってどこに住んでたの。全然教えてくれなかったじゃん。」

中学時代、彼の部屋に行きたくて、何度も何度もしつこく質問した記憶が蘇る。
まるでストーカーみたいだな、と過去の自分に赤面しながら気を取り直した。


とりあえず彼の職場は押さえている。
どんなに僕から逃げようとしても、居場所がわかっているのだから心強い。

一生会うことは出来ないのだろうと悲観することも、彼が参加するとは思えない同窓会の知らせをそわそわしながら待つことも、もうしなくて良いのだ。



♢♢♢



「純の執着心と行動力には驚かされるよ。」

母校の前で待ち伏せし、元担任教師が帰宅する瞬間を押さえる。
僕の本質はあの頃からまるで変わっていない。粘着質なストーカー。

呆れ顔で僕を見下ろす先生の表情にさえ、かっこいいと見惚れてしまうのだから、相当な重症だった。


「先生の家に行きたい。」

「俺を襲うつもり?」

「そうしたいけど、ただ一緒にいられるだけで今はいい。」

「今は・・ね。」

生徒たちが下校した後、不気味なほどに静まり返った校舎の前。
僕に構わず、田中先生は歩き出した。

先生はもう結婚しているのかもしれないし、恋人がいるかもしれない。
僕よりいくつも年上の大人の男なのだから、どんな可能性だってあった。


「ここで、一人暮らし?」

「一人暮らしに見える?」

「見える。所帯持ちじゃないでしょ。」

「本当、はっきり言うね。純は。」

鍵を開けてマンションの中に入る。
僕が後ろからついて行っているのをわかっていながら、先生は何も言わない。

エレベーターで5階まで上がり、一番奥の部屋の鍵を開けるとまるで僕が見えていないように、彼は部屋の中に入って行った。

「お邪魔します~・・・」

あまり物がない、部屋。
先生らしいと思った。

硬そうなソファーが一つと、シンプルなローテーブル。
テーブルの上には、たくさんの本が積み重ねられている。


「人の世界に入り込むのが得意なのは、変わらないみたいだね。」

「先生は人の中に勝手に世界作って、出て行っちゃうじゃん。」

「純、俺はもう担任教師じゃないよ。」

怒っているのか、疎ましく思っているのか、彼の瞳からは何も読み取れない。
先生の言葉をどう捉えていいのかわからず、僕は牽制するようにじっと彼を見つめていた。






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