BOYS❸

♢『抱かれる側』（SIDE 屋敷 比呂久）

～～～～登場人物～～～～


♢屋敷　比呂久（やしき　ひろひさ）　文学部教授　　４５歳

有名な大学教授で、何冊も本を出版している。
出版社の女性担当者から言い寄られるほどのイケオジ。
細身の長身。フェロモン漂う大人の男。垂れ目、茶髪で緩やかなウエーブがかかった髪。
研究以外のほとんどのことには興味がない。大学院で助手をしている南川梓と恋人同士だったが、自分の浮気が原因で振られる。


♢林崎　亜弥（はやしざき　あみ）　４５歳

屋敷の小学校の同級生。
茶髪ロングヘア。サイドを編み込んだ髪を後ろでゆるく一本にまとめている。スタイリスト。
外面がものすごく良いが、気を許した相手にだけ見せる顔はまるで別人。
二面性がある。二重人格、とさえ言われている。口うるさい毒舌家。
能力を買われ、イタリア人俳優の専属のスタイリストとして、イタリアと日本を行き来している。



♢王賀　努（おうが　つとむ）　　４５歳

屋敷、亜弥の同級生。
アメリカで遺伝子工学の研究をしており、大学教授として活躍していた。
帰国したばかり。学生時代から犬猿の仲だった屋敷に憎まれ口を叩き、からかうのが好き。
前髪が重ためのカーキグレージュの髪色。丸メガネ。１９０センチ近くある長身。
体格に恵まれており、細身だが骨がしっかりしている男らしい肉体の持ち主。


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『抱かれる側』（SIDE　屋敷 比呂久）　



学生時代から犬猿の仲だった王賀おうが 努つとむが隣の部屋に引っ越してきて、数ヶ月。
私と彼は、毎日のように身体を重ねる関係になっていた。


「王賀って、あの王賀 努？」

親友の一人、林崎はやしざき 亜弥あみに報告すると、彼は思い切り怪訝な顔をして私を見た。
批難する気満々の彼の表情に、覚悟して身構える。

「あんたってほんと下半身どうなってんの？自由奔放すぎるでしょ。恋愛なんて興味ありません～って顔して、教え子に手を出すわ、教え子と浮気するわ、犬猿の仲だってあれほど拒絶してた男に身体捧げるわ、ほんとすごいわ、この鬼畜野郎。」

亜弥あみの毒舌がヒートアップしている理由の一つは、王賀が彼好みの色男だということ。
学生時代、元就もとなり（亜弥の片思いの相手）がダメなら王賀に童貞捧げたいわ、だなんて笑えない冗談を何度も聞かされた。


「ところで、王賀と寝てるってことは・・・比呂久、あんたがヤられる側ってことよね？」

お互い４０半なかばにもなって、話す内容がこれだ。
二人とも全然大人になっていないし、成長していない。

「・・・想像にお任せするよ。」

「ちょっと何よそれ、今更恥ずかしがることないでしょ。」

口を尖らせブーイングする亜弥に、やれやれとため息が漏れる。


「当たりだ。」

背後から低い声が耳に届いて振り返ると、王賀がドアの前に立っていた。
毎晩のようにこの部屋で寝起きを共にする彼に、合鍵を渡したことを思い出す。


「俺が比呂久に突っ込む側で、あってるよ。」

涼しい顔で卑猥なことをサラリと言ってのける彼に、見惚れてしまったのは内緒だ。


「王賀！ハァ・・・あんたってほんと・・いちいちスタイリッシュでハンサムよねぇ・・・♡」

亜弥の目が、ハートマークに早変わりする。
私は二人の同級生に挟まれながら、うんざりと深いため息を吐き出した。



♢♢♢


「林崎の前で俺と話すの、そんなに恥ずかしい？」

「え・・・なんだよ急に。」

王賀は、鋭い。
私の些細な変化や、隠しておきたい感情にすぐに気付く。

亜弥をタクシーに乗せ部屋に戻ってくると、「飲み直そう」と甘い声で囁く王賀にワイングラスを手渡された。

テーブルを挟んで向かい側の席に座る王賀は、にっこりと意地悪な笑みを浮かべてこちらを見ている。
ベッドで私を虐める執拗さを思い出し、赤面した。


「俺に全てを曝け出してぐちゃぐちゃに犯されてるって・・・林崎に想像されたら、そりゃあ恥ずかしいよな？」

亜弥に詮索され、動揺したのは確かだ。

梓あずさとの関係は、私が抱く側だったからか彼に詮索されてもあまり気にならなかったが、今は違う。
自分が抱かれる側であるという事実を、友人に知られることが妙に気恥ずかしく、すんなりとは受け入れられなかった。

「お前が意味不明な劣等感に戸惑っている顔、最高にソソるよ。」

王賀はワイングラスをテーブルに置くと立ち上がり、私の手を取った。
誘導されるままにソファへ移動すると、トンと胸を指先で押され、押し倒される。


ーーーああ、これだ。この顔。

ゾクリと、背筋が震えた。
彼が、激しく欲情しているのがわかる。

いつも冷静で涼しげな顔をしている彼が劣情に突き動かされている姿は、たまらなくセクシーだった。