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ヴィラン
しおりを挟む「穂花が見た男は、恐らく・・ヴァイスだと思う。」
ーーヴァイス。
心の中でそっと名を唱えながら、愛おしい彼を思い出す。
この世界につながるゲートへ足を踏み入れる、きっかけをくれた色男。
黒く長いウェーブヘアをなびかせ、舞台衣装のような派手な服装にも負けない異様な存在感を纏う。
遠目でもわかる整った顔立ちに、恵まれた体躯。
(話したことも無い人なのに・・・・どうしてこんなに彼に惹かれるの・・・・・・?)
ゲートで目にした彼の姿が忘れられず、私は彼を探すと心に決めていた。
「穂花?聞いてる?」
アーサーが訝しげに、私の顔を覗き込んでいる。
我に返った私は、アーサーとの距離感に心臓が爆発しそうになった。
ヴァイスとはまた違ったタイプのイケメン。
メガネの奥にある緑色の瞳には、底知れない知性を感じる。
この世界についてもっと知りたくて、私はアーサーの部屋を訪ねたのだ。
おしゃれなカップに紅茶を注いでくれた彼の仕草は、洗練されていて美しかった。
壁を埋め尽くす本棚には、たくさんの分厚い本。
彼の部屋で二人きり。
「お姫様。俺の話に集中してもらうためには、どうしたらいいのかな?」
(知的イケメンの顎クイ・・・っ!!!尊すぎる・・・っ・・・♡)
ドアップで迫る彼の美しさに、見惚れてしまう。
挑発的な雄の視線が淫らに絡みついて、下半身が疼いた。
知的メガネ男子の魅力が、荒々しく暴走している。
「き・・・聞いてる、聞いてる!!ヴァイスは、どんな人?どこにいるの?」
「彼は・・・ヴィランだよ。メルヘンの森で暮らす、俺たち獣人側の言い分ではね。」
「ヴィラン・・?」
テーマパークのキャラ設定を思い出す。
メルヘンの森で暮らす彼らには、その幸せを邪魔しようと企む敵役がいる。
どこの世界も「正義」と「悪」は存在するのだ。
「深淵の森に巣くう、俺たちの敵役。」
彼がおとぎ話でも口にするようにサラリと言ったので、その言葉にはまるで現実味がなかった。
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