Perfect Beat!

aika

文字の大きさ
上 下
13 / 19

music.12 嫉妬(SIDE 陸)

しおりを挟む

三幸の機嫌が最高に悪い。

スタジオから一緒に帰ろうと車に乗せてくれたのはいいけれど、いつも以上に乱暴な彼の運転に助手席の俺は生きた心地がしなかった。

「腹減ったな、なんか作ろうか?」

何食べたい?と彼の機嫌を取ろうとして、早速失敗した。

「いらねぇよ。」

俺の提案を一蹴すると、彼は荷物をぶん投げてソファーに寝転んだ。


三幸は蓮寺さんと仲が悪いらしい。
社長に聞くまでもなく、二人を見ていたらわかったけれど、同じバンドのメンバーでもそういうことってあるんだな、と不思議に思った。
俺らのバンドはみんな、お互いのことが好きで仲が良いから。

それってすごく恵まれていることなのかもしれない。

「お前、蓮寺にベラベラ何でもかんでも話すんじゃねぇよ。」

チッと舌打ちが聞こえたかと思うと、彼は上半身を起こしてソファー越しにこちらを振り返った。

「何でもかんでもなんて、話してねぇし。」

聞いてなかったくせに文句をつけてくる彼の態度に腹が立って言い返す。

「嬉しそうにしっぽ振って話してたじゃねぇかよ。」

「はぁ?!尻尾なんて振ってねぇし。」

「い~や、振ってたね。現にあいつもワンコ君とか言ってただろうが。」

お互いにどんどんヒートアップして声が大きくなっていく。
三幸の八つ当たりとも取れる物言いに、俺は引くに引けなかった。
ソファーまでつかつかと歩いていくと、彼の隣にどすんと腰掛ける。

「振ってねぇ!!」

三幸を睨みつけて言うと、彼が俺の顎を手で掴んで黙らせた。
まるで子どもの喧嘩だ。

彼がガシッと俺の手首を掴む。

「俺の犬のくせして、他の男に気安く触らせてんじゃねぇよ!」

一段と大きな声量で吐き出された彼の言葉に、俺は自分の耳を疑った。

「・・・え・・・」

それって・・・

他の男に気安く触らせるなって・・・

期待してしまう自分がいる。

やきもち・・?

「俺・・・何言って・・・」

俺よりも、三幸が一番驚いた顔をしていた。
綺麗な長い指で、口元を覆って俺を見ている。

「それって、やきもち・・・?」

嬉しい。

「な・・そんなわけねぇだろ。」

彼の視線が泳ぐ。
自分で口にした言葉の意味を、考え込んでいるようだった。

「やきもちじゃねぇの・・・?」

彼に触れたい。
そう思った。

初めての感情。

「ねぇ、三幸。」

こっち見て。
ちゃんと、俺を見てよ。

ドキドキとうるさい鼓動に胸が苦しい。

この苦しさの理由を、俺はどうしても知りたかった。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【BL】国民的アイドルグループ内でBLなんて勘弁してください。

白猫
BL
国民的アイドルグループ【kasis】のメンバーである、片桐悠真(18)は悩んでいた。 最近どうも自分がおかしい。まさに悪い夢のようだ。ノーマルだったはずのこの自分が。 (同じグループにいる王子様系アイドルに恋をしてしまったかもしれないなんて……!) (勘違いだよな? そうに決まってる!) 気のせいであることを確認しようとすればするほどドツボにハマっていき……。

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

うちの鬼上司が僕だけに甘い理由(わけ)

みづき
BL
匠が勤める建築デザイン事務所には、洗練された見た目と完璧な仕事で社員誰もが憧れる一流デザイナーの克彦がいる。しかしとにかく仕事に厳しい姿に、陰で『鬼上司』と呼ばれていた。 そんな克彦が家に帰ると甘く変わることを知っているのは、同棲している恋人の匠だけだった。 けれどこの関係の始まりはお互いに惹かれ合って始めたものではない。 始めは甘やかされることが嬉しかったが、次第に自分の気持ちも克彦の気持ちも分からなくなり、この関係に不安を感じるようになる匠だが――

大学生はバックヤードで

リリーブルー
BL
大学生がクラブのバックヤードにつれこまれ初体験にあえぐ。

【BLーR18】箱入り王子(プリンス)は俺サマ情報屋(実は上級貴族)に心奪われる

奏音 美都
BL
<あらすじ>  エレンザードの正統な王位継承者である王子、ジュリアンは、城の情報屋であるリアムと秘密の恋人関係にあった。城内でしか逢瀬できないジュリアンは、最近顔を見せないリアムを寂しく思っていた。  そんなある日、幼馴染であり、執事のエリックからリアムが治安の悪いザード地区の居酒屋で働いているらしいと聞き、いても立ってもいられず、夜中城を抜け出してリアムに会いに行くが……  俺様意地悪ちょいS情報屋攻め×可愛い健気流され王子受け

催眠アプリ(???)

あずき
BL
俺の性癖を詰め込んだバカみたいな小説です() 暖かい目で見てね☆(((殴殴殴

上司と俺のSM関係

雫@更新不定期です
BL
タイトルの通りです。

平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです

おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの) BDSM要素はほぼ無し。 甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。 順次スケベパートも追加していきます

処理中です...