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music.9 恋? (SIDE 陸)
しおりを挟む三幸に褒められた。
彼に褒められるのがこんなに嬉しいなんて、自分でも驚いた。
聴いてくれる人がいて、俺の歌は初めて成立する。
一番最初に聴いてくれるのが、三幸で嬉しい。
そう思っている自分がいた。
「新曲。歌詞覚えた?」
碧がマイクの前に立つ俺のそばに寄って来て、覗き込む。
練習が始まる前、事務所内のスタジオに集まった俺たちはそれぞれの音を確認しながら雑談していた。
「もっちろん!!」
俺は嬉しくて、歌詞の歌い出しをメロディに乗せた。
新しい曲。俺たちの曲は、いつもドラムの碧が作っている。
碧はドラマーだけど、ピアノもギターも弾けて、どんなジャンルの曲も作曲できるマルチな男だ。
「すっごい良い曲で、俺マジで感動した!!!」
俺たちの雰囲気にぴったりの曲。
「三幸がすげー俺の声に合ってて良いって言ってくれて。」
「三幸が?」
「そうそう。それで、三幸がジャケット撮影のイメージ作ったからって見せてくれて、」
「へぇ~三幸が、ねぇ。」
顔が近い。碧の顔が俺の真ん前にある。
腕を組んで俺に顔をギリギリまで近づける碧が、パンパンと天井に向けて手を叩いた。
「みんな、集合~!!」
ギターとベースを合わせていた暁人と一哉が、なんだよ、と文句を言いながら近づいてくる。
「何?今練習中。」
「みんな気付いてると思うけど、陸の歌今まで以上にめちゃくちゃ良くなったじゃん。」
ドラムスティックを片手で器用にくるくる回しながら、碧が言う。
「それ思った。より深くなったっていうか、ガラッと変わってびっくりした。」
「一皮剥けたって感じ。」
暁人が俺の頭を撫でながらそう言うと、一哉も俺を見て深く頷いた。
「これは、恋だな。」
碧が顎に親指と人差し指を当てながら、ドヤ顔で言い切る。
しばしの沈黙。
「恋、だな!」
誰も反応しないので、彼はもう一度念を押すように言った。
「え???え?恋?!」
俺は訳が分からなくて、ドヤ顔の碧を見つめ返す。
「「恋って誰と?」」
全員が揃って俺を見る。
「陸。お前、美雨音 三幸のことが好きなんだろ?」
再び、全員の沈黙。
「え~~~~?!」
思ってもいない碧の発言に、俺は本日一番の大声をあげていた。
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