生身の男とAI、両方イケメンならどっちが良い？

『セクシー』

「緑みどり君は本当に精巧な作りで、私の要望になんでも応えてくれる夫なんです。」

（こりゃ報告の内容覚えてないだろうなぁ・・副社長・・・・）

明日の朝になればすっかり忘れているとわかっている人間の前で、仕事の報告なんて馬鹿げている。
夜景の見える大きなガラス窓を背景に微笑む翠みどりさんは、信じられないほど美しくて大人の男のフェロモンを惜しげもなくバラ撒き散らしていた。

（ダメだ、見るな・・・・！見たらやられる・・・・っ！！）

フェロモンにあてられて発情しそうになりながら、必死に耐える。

「俺のAI が君に名前で呼ばれているのに・・・本物の俺が「副社長」呼びじゃ・・なんだか切ないな。」

（み、翠さん・・・・っ・・・セクシーダイナマイト・・・・！！！）

感想の質が落ちまくっているのは、アルコールが入っているせいだ。
勧められるままに赤ワインを、２、３杯飲み干してしまった。

（こんなエロイケメン副社長にグラス渡されて・・断れる女いる・・・？）

自分の落ち度を無に還すために、言い訳を考える。

私は彼に、「AI 夫」のモニター進捗状況を報告するためにやって来た。
蒼あおに促され、副社長の自宅へ来てみたら、フェロモンダダ漏れの色男から最高のもてなしを受ける羽目になったのだ。

（彼氏いない歴＝年齢の三十路女には荷が重すぎるんですけど・・・ぉ・・・！！）

「俺のことタイプだって聞いてから・・・ずっと気になってたんだよね。」

空になったワイングラスを私の手から受け取ると、彼はカタン、とテーブルの上に置いた。
私たちはソファーに二人、身をピッタリと寄せ合って座っている。

一体全体どうしてこんな流れになったのか、もはや思い出せない。

「俺のどういうところが好きなの？」

メガネの奥の瞳は相変わらず知的だけれど、会社では見せない彼の甘ったるい視線と声に私はパニクっていた。

「ぜぜぜ・・・全部・・・好きです・・・っ・・・」

パニックついでに愛の告白までしそうになり、慌てて口を押さえる。

「それ本当？・・・ねぇ、繭・・・こっちにおいで・・・？」

立ち上がった翠さんは、酔いなどまるで感じさせないスマートな足取りで私をエスコートした。

（え・・・うそ、寝室・・・・・？！）

導かれた先の部屋で私が目にしたのは・・・クィーンサイズのベッドだった。