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逃したくない・・!
しおりを挟む「まさかミノアさんが来てくれるなんて、驚きました。」
(スメラギ公爵に久々にお会いするのがこんな形になるなんて・・・)
ミノアは苦虫を噛み潰すような顔になる自分を、気合と根性でなんとか制御した。
「お会いできて光栄です。」
引き攣った笑顔では、久々の再会が台無しになってしまう。
彼からなかなか連絡をもらえず、心配していたミノアはなんとしてでも良い印象を与えたかった。
「兄さんの言っていた通りの素晴らしい女性ですね。僕が働いているカフェに彼女が偶然いらした時に、一眼見てミノアさんだとわかりました。」
(白々しい。調べ上げて全てわかった上で、私に近づいてきたくせに・・・)
内心悪態をつきながらも、ミノアはにっこりとアーサーに笑顔を向けた。
「私もアーサーさんが、実の弟だと名乗り出てくださった時は、驚いて声も出なかったくらいです。」
これは本当の話だ。
嘘と真実は、バランスよく織り交ぜて話さなければ、薄っぺらい印象になる。
「本当は・・・ずっとミノアさんにお会いしたかった。どうすればあなたにふさわしい男になれるのかと、真剣に考えて自分なりに実践していたんです。」
スメラギ公爵が、罪を白状するような丁寧な口調で、ゆっくりと言葉を吐き出す。
(真面目・・・・っ!!!)
連絡をもらえなかったのは、彼が私のために努力していたからだと聞き、ますます彼を逃したくなくなった。
(なんとしてでも手に入れたい。逃したくない・・・!私のものにしたいわ。)
ミノアの中で、またしてもドス黒い欲望がムクムクと膨らんでいく。
どれほど男を手に入れても、おさまることのない欲求。
「ワインを取ってきますね。」
アーサーが席を立った隙に、ミノアはスメラギ公爵に熱い視線を送る。
隣に座っている彼に、身体を擦り寄せるように近付く。
彼の膝にミノアの膝が少しだけ触れる位置まで、距離を縮めていった。
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