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『行かないで・・』(SIDE 三条 冬紀)
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♡三条 冬紀(さんじょう ふゆき) 34歳
鶴屋医師とは小学校からの同級生で、医学部同期。
無表情で無口。淡々と喋る。
子ども相手にもにこりともしないポーカーフェイス。人間らしい表情や感情表現は誰も見たことがない。いつも冷静で、素早い診断と的確な治療で信頼されている小児科医。
♡鶴屋 高貴(つるや こうき) 34歳
小児科の医師。ピョンピョンと外側に跳ねたカールした毛先が特徴。少し長めのオレンジ色の髪にピアス
明るくて爽やかなイケメンなのでモテモテ。冬紀のことが好きだが、後輩の由と関係を持ったことを知りショックを受ける。
♡小椋 由(おぐら ゆう) 26歳
赤い髪、短髪、スポーツ万能。
単細胞で人懐っこい後輩キャラの医師。先輩医師の鶴屋と三条の二人に教育されながら、小児科医として日々奮闘している新米。冬紀に片思いをしている。
♡赤原 冬樹(あかはら ふゆき) 36歳
冬紀、高貴の大学時代の先輩。優秀な小児科医で海外に新技術を学びに行っていた。
黒髪ロン毛、派手でナンパな性格。女遊びも激しくモラルに欠ける。
高貴のことが気に入っていて、ちょっかいをかけるしつこい男。
~~~~~~~~~~~~
「高貴・・・!」
長年一緒にいるけれど、最近は高貴の言動が全く理解できず動揺しっぱなしだ。
赤原と二人で飲みに行くとホテルを出て行った彼を、必死で止めようとしたけれど引き止めても無駄だと虚しくなるほどに、高貴は頑なだった。
追いかけようとした俺の手を、由が引っ張る。
「三条先生・・・・」
「由、離せ。」
「・・・行かないで・・・・」
顔を真っ赤にして俺を見上げている由の目は潤んでいて、俺はもう何が何だかわからず混乱してしまった。
高貴が赤原と飲みに行くくらい、別にいいじゃないか。
何をそんなに焦っているんだ?
彼は医師で、分別のある大人の男だ。
そう言い聞かせてみても、高貴が赤原と二人きりで酒を飲んでいるのだと想像しただけで眩暈がした。
何度電話をしても彼は捕まらない。
電源を切ったのか、そのうち呼び出し音さえ鳴らなくなってしまった。
「三条先生・・・そんなに心配ですか?鶴屋先生のこと・・・」
「最近様子がおかしかったんだ。高貴のやつ、何を考えてるのか全然わからない。」
諦めてスマホを投げ出した。
いくら心配してみたところで、高貴には繋がらない。
俺の気持ちなんて、彼には到底届かないのだ。
「三条先生・・・、」
部屋の窓から夜景を見下ろしていた俺に、背後から由が抱きついてくる。
「由、どうした・・・?」
ぎゅっと力一杯俺を抱きしめたまま、彼は動こうとしなかった。
「俺・・・三条先生のこと・・・好きなんです・・・・っ」
「由・・・、」
「言わないで。・・・先生・・・お願い・・・。何も言わないでください・・・」
絞り出すような彼の声に、俺はただ黙って耳を傾けるしかなかった。
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