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『告白』(SIDE 湊 京)
しおりを挟む~~~~登場人物~~~~
♡湊 京(みなと けい) 33歳
愛治医療センターに勤務する、優秀な心臓外科医。
肩まで伸ばしたロン毛。青光りする黒髪。タレ目で甘いマスク。
医者とは思えないチャラチャラした軽い雰囲気に見えるが、根は真面目。
患者に対しては、優しく紳士的。若いが、腕の良い一流の心臓外科医。
先輩である朝倉医師のことを尊敬している。
♡朝倉 脩二(あさくら しゅうじ) 38歳
愛治医療センターに勤務する、一流の心臓外科医。
長身で体格が良い色男。ハンサムという言葉が似合うイケメン。
プライベートでは細かいことを気にしない男前な性格。
仕事に命をかけている熱い男。
研修医時代に面倒を見ていた湊を手術のパートナーに育て上げ、とても可愛がっている。
~~~~~~~~~~~
「京、今夜は泊まっていけよ。」
朝倉先生が急にそんなことを言い出したので、驚いて手が止まった。
本を棚へ戻す手が震える。
「わかりました。そうします。」
悟られないように、短い言葉で返事をした。
同じマンションで暮らしていることがわかってから、俺は毎日のように彼の部屋へ通うようになった。
今まで職場以外での接触をなるべく避けてきたのは、自分自身を冷静に保っていたかったからだ。
朝倉先生は俺にとって特別な人であることは間違いないけれど、俺は優秀な医師でありたいがためにその理由を探さずに知らないフリを続けていた。
「俺も、好きだ。」
彼が言った何気ない言葉にさえ、敏感に反応してしまう自分がいる。
好きだ、というのは飲み物の話だというのに、彼が口にする言葉全てに意味を見出そうとしてしまう。
これ以上近づかないように制御するか、彼との関係を変えようと一歩踏み出すか。
決断する時期が来たようだ。
先手を打ったのは、彼の方だった。
俺は覚悟を決める。
そう決めてもグラグラと足元がふらついて思考がまとまらず、身体に力が入らなかった。
緊張しているのだとわかって、自分の不甲斐なさに思わず嘲笑が漏れる。
人の体を開いて心臓の手術を行う日々。
どんなに難しい手術でも身体が震えるような緊張は経験したことがない。
自分が何を恐れているのか、わからなかった。
朝倉先生と彼の部屋で過ごす中で、彼が自分を特別な目で見ていると感じることが何度かあった。
職場では完璧な医師、人格者。彼を見るたび「ハンサム」という言葉が浮かぶ。
色男であることはもちろん、彼の誠実さや優しさがにじみ出ている表情。
男として人間としての器の大きさ。
この人には、適わない。
初めてそう感じた相手だ。
そんな男が自分に対して特別な感情を抱いているなんてことが、あり得るだろうか?
俺は朝倉脩二という男に、心底惚れている。
尊敬に値する医師だから、というだけではない。男としての彼を欲しているのだ。
そう自覚してしまうことが、何故だかひどく恐ろしいことのように思えて身体がすくむ。
「京、どうした?」
考え込んで立ち尽くしたままでいたらしい。情けない。
いつの間にか彼が至近距離に立っていて、俺はひどく動揺してしまった。
「別に、ちょっと考え事してて、」
慌てて彼から目を逸らす。
俺はどうしてこんなに緊張している?
経験のない極度の緊張感に、俺はすぐにでもこの場を立ち去りたい衝動に駆られていた。
「京、」
彼の低くて男らしい声が、耳元に届く。
近い。近すぎて、心臓が痛い。
「俺、着替え・・取りに行ってきます。」
ここからすぐに逃げ出したい。弱気になるのは初めてだった。
「京、行くな。」
何が起きたのか一瞬わからなかった。
朝倉先生のにおいに包まれる。
彼の部屋でこの香りを感じるたびに、どうにかなってしまいそうだった。
後ろから、きつく抱きしめられていた。
「お前が好きだ。」
彼が、俺の知らない男の声でそう告げた。
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