【※R-18】Doctors!

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『消化器外科医の憂鬱』(SIDE 笹原 水樹)

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~~~~登場人物~~~~


♡笹原 水樹(ささはら みずき) 33歳

消化器外科医。
千秋とは同期で仲が良い。
黒髪、前髪は真ん中分け、毛先は緩くカールしている。
いつもは軽い印象だが、観察眼があり物事を見極める能力が高い冷静な医師。
千秋のことを一途に想っている。

♡朝萩 千秋(あさはぎ ちあき)33歳

消化器外科医。
サラサラのロングヘア 。後ろ姿は女性に見えるのでよく間違われる。
女性のような可愛らしい顔立ち。
双子の姉がおり、他病院で医者をしている。


♡白河 傑(しらかわ すぐる) 33歳

皮膚科医。サラサラの黒髪。黒縁メガネ。
日常会話はほとんどしないが、仕事の話となると饒舌。
生検好き。
病理検査技師の鮎原と仲が良く、皮膚科にいないときは病理検査室にいる。


~~~~~~~~~~~



「良性なんだから、そんなに慌てて切る必要ないんじゃねぇの?」

消化器外科医の同期、千秋に片思いをして早数年。
俺は珍しく焦っていた。

「そうは思ったんだけど、なんだか気になる場所だから、どうせいつか切るなら早いうちにと思ってね。」

千秋は最近、皮膚科医の白河の話ばかりする。


白河しらかわ すぐるは医学部の同期で、変わり者として有名な男だ。
先週生検をしてもらってからというもの、千秋は白河が気になって仕方ないらしい。

俺はあまり物事を深く考え込まない性格だと思われている。
そういうキャラを作っているのは、自分の意思だ。

医者というのは、ただ働いているだけで派閥やらしがらみやらに巻き込まれることが多い。
単純であっけらかんとしたキャラクターでいることで、避けられることがたくさんある。

俺は病気の人を治したいという気持ちだけで医者になったわけで、昔から出世や地位には全く興味がなかった。
大きな病院ではなく、地域密着型の医院を開く方が性に合っていると思いながらも、この病院で働いているのは、千秋と一緒に居たいからという理由が大きい。
もう少し彼の隣で、同じような悩みを共有して、医者として成長していきたい気持ちがあるからだった。

「これくらい自分で貼れるのに。」

仕事の合間に日帰りの手術を受ける千秋に麻酔テープを貼っていたら、彼が苦笑しながら言った。

千秋の胸。良性腫瘍と分かったのだから、それほど慌てて切る必要もないのに。
俺は内心面白くなかった。
彼の柔肌に自分以外の男がメスを入れる。
医師じゃなければわからない感覚かもしれない。
恋人を寝取られるような嫉妬心がこみ上げる。

自分の想い人の手術をする白河傑という男。
確かに奴は、学生時代から優秀だった。


「これくらい、いつでもやるって。」

千秋の胸に麻酔テープを貼る。
上半身裸になった彼を見て、鼓動が早くなっている自分に苦笑する。
医者がこれくらいのことで動揺してどうする。

同じ男とは思えない、キメの細かい白い肌。
千秋は綺麗だ。

俺が千秋を好きになったのは、医学生になってすぐの夏だった。
事務員の女性が熱中症になったのを見て、彼はすぐに医務室に運んだ。

女性のような顔つき、華奢な身体をした千秋が、とても男らしく行動したのを見て、俺はそのギャップにやられてしまった。
見た目はとても繊細でか弱い雰囲気のある彼の性格は、男らしくてサバサバとしている。
信念をしっかり持って医師を目指す彼に、俺は共感と尊敬を覚えた。

彼に触れることが出来るなら、と考えただけで、万年欲求不満のこの身体はすぐに男の反応をしてしまう。
千秋の胸に触れて、可愛らしく色づいたその突起を口に含んでみたい。
彼の華奢な脚を大きく開かせて、その中心に俺の醜い欲望を注ぎ込みたい。
長く綺麗な髪を振り乱してヨガる彼を見てみたい。

欲望は尽きることなく、いつも俺を苦しめる。



「痛くなかったか?」

「全然。大丈夫だったよ。」

手術から消化器外科のデスクに戻ってきた彼は、頬を赤く蒸気させ、妙に色っぽかった。
俺が変な妄想をしていたから、そう見えるのだろうか?

どこか上の空な様子で、彼はパソコンに向かう。
最近の千秋はなんだか変だ。

白河のことを明らかに意識している。
気付きたくない彼の変化にも、俺はすぐに気付いてしまうのだ。

いつも一緒にいるから。
いつでも千秋のことを一番近くで見ているから。


彼のことを誰にも取られたくない。
俺のものにして、首に縄でもつけておきたい。

千秋に対してだけは激しい感情を抱いてしまう自分が時々恐ろしかった。
それ以外のことは思い通りに感情をコントロールできるのに。

自分が自分でなくなってしまうようで、不思議な感覚。


「白河はやっぱり巧いみたいだな。」

「うん。すごかった。」

自分で聞いておきながら、心がひどく乱された。

白河が、千秋の胸につけた傷跡。


「千秋、今週末泊めてくれないか?」

「ん?いいよ。水樹が泊まりに来るの久しぶりだね。」


昔はよく千秋の部屋に泊まっていた。

彼に欲情する自分を抑えられなくなり、彼の部屋に行くこと自体を避けるようになった。

白河というライバルが現れたことで、起きた変化。

千秋を誰にも取られたくない。


俺は長年の一途な片思いに決着をつけようと、心に決めた。



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