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第二十三話 ローラの帰郷 ヘンリー視点
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魔物討伐実習、あれが僕とグレースの結婚生活を狂わせた。元々僕はグレースとの結婚には乗り気ではなかったから、最初から不調和なのは当たり前だったんだ。でも、グレースの先にローラを見ながらした行為から、僕の子供が出来たんだ。嬉しかった。グレースには悪い事をしていたと思うが、でも、子供が出来て僕の心は変わったんだ。
「グレース、体調は大丈夫かい?」
「ええ、ヘンリー、大丈夫よありがとう。」
「いや、それならいいんだ。君のお腹には大事な僕の子供がいる。君はそれを産み、そして、育てるんだ。ああ、なんて素晴らしいんだ。」
「そうね、あ、今度のお祝いの会にはローラを呼んでね。」
「ああ、幼馴染み三人で、祝えたらどんなに良いだろうね。」
「それもあるけど、今度の魔物討伐実習に、私も見学に行くと伝えて頂戴。」
「え?あれは魔物の森に行くんだよ。お腹の子のこともあるし、止めた方が良いんじゃないか?」
「だからこそよ。お腹の子に貴方の勇ましく格好良い所を見せて挙げたいのよ。ほら、こんな宝珠も用意したのよ。これがあれば、貴方の活躍が大きなスクリーンで写し出されるのよ。」
「そ、そうなのか?」
「ええ、他の魔法学園の保護者にも見てもらって、貴方がどれだけ凄いか知ってもらう良いチャンスになるんじゃない?」
「おお、それは良いな。じゃあ、張り切って大物を倒して来るかな。」
「そのいきよ!他の保護者の前で、小さいのばっかりじゃ物足りないものね。お願いね。」
「ああ、わかっているよ。」
そんなことを言って、ローラの制止も聞かず、森の奥で猪の魔物を、討伐した。相討ちに近い状態だったけど、すぐに医療班が来て、治してくれるから良いだろうなんて、軽い気持ちだったんだ。
でも、子供は生まれることなく、消えてしまった。
それからは、グレースが部屋に閉じ籠るようになったんだ。僕がグレースの部屋に訪れると、
「ねぇ、ヘンリー、何故あの時貴方は私を助けてくれなかったの?」
「え、あ、あの時は………怪我をしいて、君があんなことになっていたなんて知らなかったんだ。」
「同じような魔物だったじゃない!貴方だったら私を、お腹の子を、救えたわ!なのに、何であそこにいなかったのよ!」
「だ、たから、森の奥で魔物と戦って、怪我を……。」
そうやって毎日僕を責めるんだ……そして、グレースは、魔法学園を退学すると言い出した。
「そんな、後一年で卒業じゃないか、やっぱり体調が思わしくないのかい?」
「うるさいわね、だったら貴方は卒業するまであの学園に通えば良いのよ!とにかく私は辞めるから、わかったわね!」
そんな、日が続いていたとき、ローラ、君が僕の屋敷を訪れた。
毎日、グレースに責められて疲れていた僕の前に現れた君は、とても輝いて見えたよ。
すっかり、殿下の婚約者といった感じで、幼馴染みの君を、とても遠くに感じたよ。
ああ、全てを捨てて、どこかに行きたいな。そんな風に思うことが増えたんだ。
「グレース、体調は大丈夫かい?」
「ええ、ヘンリー、大丈夫よありがとう。」
「いや、それならいいんだ。君のお腹には大事な僕の子供がいる。君はそれを産み、そして、育てるんだ。ああ、なんて素晴らしいんだ。」
「そうね、あ、今度のお祝いの会にはローラを呼んでね。」
「ああ、幼馴染み三人で、祝えたらどんなに良いだろうね。」
「それもあるけど、今度の魔物討伐実習に、私も見学に行くと伝えて頂戴。」
「え?あれは魔物の森に行くんだよ。お腹の子のこともあるし、止めた方が良いんじゃないか?」
「だからこそよ。お腹の子に貴方の勇ましく格好良い所を見せて挙げたいのよ。ほら、こんな宝珠も用意したのよ。これがあれば、貴方の活躍が大きなスクリーンで写し出されるのよ。」
「そ、そうなのか?」
「ええ、他の魔法学園の保護者にも見てもらって、貴方がどれだけ凄いか知ってもらう良いチャンスになるんじゃない?」
「おお、それは良いな。じゃあ、張り切って大物を倒して来るかな。」
「そのいきよ!他の保護者の前で、小さいのばっかりじゃ物足りないものね。お願いね。」
「ああ、わかっているよ。」
そんなことを言って、ローラの制止も聞かず、森の奥で猪の魔物を、討伐した。相討ちに近い状態だったけど、すぐに医療班が来て、治してくれるから良いだろうなんて、軽い気持ちだったんだ。
でも、子供は生まれることなく、消えてしまった。
それからは、グレースが部屋に閉じ籠るようになったんだ。僕がグレースの部屋に訪れると、
「ねぇ、ヘンリー、何故あの時貴方は私を助けてくれなかったの?」
「え、あ、あの時は………怪我をしいて、君があんなことになっていたなんて知らなかったんだ。」
「同じような魔物だったじゃない!貴方だったら私を、お腹の子を、救えたわ!なのに、何であそこにいなかったのよ!」
「だ、たから、森の奥で魔物と戦って、怪我を……。」
そうやって毎日僕を責めるんだ……そして、グレースは、魔法学園を退学すると言い出した。
「そんな、後一年で卒業じゃないか、やっぱり体調が思わしくないのかい?」
「うるさいわね、だったら貴方は卒業するまであの学園に通えば良いのよ!とにかく私は辞めるから、わかったわね!」
そんな、日が続いていたとき、ローラ、君が僕の屋敷を訪れた。
毎日、グレースに責められて疲れていた僕の前に現れた君は、とても輝いて見えたよ。
すっかり、殿下の婚約者といった感じで、幼馴染みの君を、とても遠くに感じたよ。
ああ、全てを捨てて、どこかに行きたいな。そんな風に思うことが増えたんだ。
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