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第三十四話 後始末(ファンタジー風味)
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「全く………ウチの会長は人使いが荒いぜ!」
日が落ち、関所の辺りはすっかりと闇に支配された頃、
普段は星と月の光だけが頼りの平原に、魔法の光と松明が入り交じりながらユラユラと揺れている中で、ぶつぶつと愚痴りながら作業を進めるモーリヤス率いる魔法使い部隊の姿があった。
「生け捕りって発想は怨みも少なくなるから良いかも知れないけど、その後の作業の事も考えてほしいぜ!」
ぶつぶつ文句を言うモーリヤス隊長その部下のジェムズが声をかける。
「まぁ、まぁ、そうぶつぶつ文句言わないで、早く作業進めないと朝になっちまいますよ?」
ジェムズは作業を進めながらモーリヤスをなだめる。
「う~ん、それはそうだが……それにな、会長は昔からそうなんだよ……発想は素晴らしいし、考えていることも正しい……けどその作業が大変な事までは頭が回らないんだよ。つまりいつも現場が苦労するんだ!」
モーリヤスも作業を進めながらもぶつぶつ文句を言うのは止まらない。
そんなモーリヤスにジェムズが尋ねる。
「それでも、エネロワ公爵様に遣えたのは理由があるんじゃないですか?」
そう問われて、それはそうだが……何て思いながら、次の捕虜を捕縛しようとしていると、
「そりゃそうだが……って!テリー!お前テリーか?」
手を伸ばした先にいたのは、モーリヤスの魔法学生時代、一緒に苦楽を共にした、同級生のテリーだった。
「くっ、確かに俺はテリーだ!……なんだ……聞き覚えのある声だぞ?!その声はモーリヤス?」
テリーは驚きのあまり大声をだす。
モーリヤスは、テリーをスライムもどきから引っ張り出すと、近くの足場まで連れていき、降り立つ。
「なんだ久しぶりだな?お前こんなところで……ってそう言えば、魔法下手のお前は、王国陸軍に仕官してたんだよな。」
そう言ってテリーの肩を叩くモーリヤス。
「ああ、だが今は捕虜の一人さ……。」
そう肩を落とし、応えるテリー。
そんなテリーにモーリヤスは、
「なぁ、テリー、お前ってギネリン王って尊敬してる?」
唐突に問う!
「は?なんだよ唐突に………そんなわけ無いだろ…俺が仕官したのは金のためだからな……知ってるだろ?」
そう、うつむき加減に答えるテリー。
そんなテリーにモーリヤスは、良い考えが生まれたと、ハッとした顔で、
「ああ、お前の家って、貧乏だったしな……なぁ、今から俺たちにつかないか?」
突然のスカウトに戸惑うテリー。
「は?」
テリーは戸惑っているが、モーリヤスはこれが最善手だとさらに続ける。
「だって、考えても見ろよ?このスライムもどきの壁が本物の岩壁だったら、テリー、お前って確実に死んでたぜ……一度死んだ気になって考えてみろよ……」
そう言われても、テリーは腕組みをして、
「ん~、でも家族がな……」
迷っているテリーにモーリヤスは、
「あっ、キース会長がどっちに行ったか見たか?」
「ああ、王都の方に………は!」
色々な考えが回るテリー。
「そうだ!ギネリン王国はこの後どうなるか……まぁ、お前がこっちについてくれたらこっちの戦力にもなるし……どうだ?」
「それよりも、王都で戦ったら俺の家族は!……いや、ここでの戦いも殺そうと思えば俺達を殺してしまえばモーリヤスもこんな仕事をしなかったんだもんな……何より大将は会長か……そうか……」
テリーはスッキリした顔になり、モーリヤスの目を見て、
「なぁ、この戦争が終わったら兵士止めて何か普通の仕事をしたいんだが……」
そう言われたモーリヤスは優しい笑顔を見せ、
「ああ、そう言うことなら俺が会長に話を通してやる!」
モーリヤスが自分の胸を叩き、任せろとアピールする!
「そうか……なぁ、他にも俺みたいのがいるんだが……」
その後の作業は次々と増える仲間により、朝日を待たずに終える。
マルシャルと、その他に、千人程が捕虜となり、キースの軍は、彼の知らぬ間に10万にまで膨れ上がることとなる。
日が落ち、関所の辺りはすっかりと闇に支配された頃、
普段は星と月の光だけが頼りの平原に、魔法の光と松明が入り交じりながらユラユラと揺れている中で、ぶつぶつと愚痴りながら作業を進めるモーリヤス率いる魔法使い部隊の姿があった。
「生け捕りって発想は怨みも少なくなるから良いかも知れないけど、その後の作業の事も考えてほしいぜ!」
ぶつぶつ文句を言うモーリヤス隊長その部下のジェムズが声をかける。
「まぁ、まぁ、そうぶつぶつ文句言わないで、早く作業進めないと朝になっちまいますよ?」
ジェムズは作業を進めながらモーリヤスをなだめる。
「う~ん、それはそうだが……それにな、会長は昔からそうなんだよ……発想は素晴らしいし、考えていることも正しい……けどその作業が大変な事までは頭が回らないんだよ。つまりいつも現場が苦労するんだ!」
モーリヤスも作業を進めながらもぶつぶつ文句を言うのは止まらない。
そんなモーリヤスにジェムズが尋ねる。
「それでも、エネロワ公爵様に遣えたのは理由があるんじゃないですか?」
そう問われて、それはそうだが……何て思いながら、次の捕虜を捕縛しようとしていると、
「そりゃそうだが……って!テリー!お前テリーか?」
手を伸ばした先にいたのは、モーリヤスの魔法学生時代、一緒に苦楽を共にした、同級生のテリーだった。
「くっ、確かに俺はテリーだ!……なんだ……聞き覚えのある声だぞ?!その声はモーリヤス?」
テリーは驚きのあまり大声をだす。
モーリヤスは、テリーをスライムもどきから引っ張り出すと、近くの足場まで連れていき、降り立つ。
「なんだ久しぶりだな?お前こんなところで……ってそう言えば、魔法下手のお前は、王国陸軍に仕官してたんだよな。」
そう言ってテリーの肩を叩くモーリヤス。
「ああ、だが今は捕虜の一人さ……。」
そう肩を落とし、応えるテリー。
そんなテリーにモーリヤスは、
「なぁ、テリー、お前ってギネリン王って尊敬してる?」
唐突に問う!
「は?なんだよ唐突に………そんなわけ無いだろ…俺が仕官したのは金のためだからな……知ってるだろ?」
そう、うつむき加減に答えるテリー。
そんなテリーにモーリヤスは、良い考えが生まれたと、ハッとした顔で、
「ああ、お前の家って、貧乏だったしな……なぁ、今から俺たちにつかないか?」
突然のスカウトに戸惑うテリー。
「は?」
テリーは戸惑っているが、モーリヤスはこれが最善手だとさらに続ける。
「だって、考えても見ろよ?このスライムもどきの壁が本物の岩壁だったら、テリー、お前って確実に死んでたぜ……一度死んだ気になって考えてみろよ……」
そう言われても、テリーは腕組みをして、
「ん~、でも家族がな……」
迷っているテリーにモーリヤスは、
「あっ、キース会長がどっちに行ったか見たか?」
「ああ、王都の方に………は!」
色々な考えが回るテリー。
「そうだ!ギネリン王国はこの後どうなるか……まぁ、お前がこっちについてくれたらこっちの戦力にもなるし……どうだ?」
「それよりも、王都で戦ったら俺の家族は!……いや、ここでの戦いも殺そうと思えば俺達を殺してしまえばモーリヤスもこんな仕事をしなかったんだもんな……何より大将は会長か……そうか……」
テリーはスッキリした顔になり、モーリヤスの目を見て、
「なぁ、この戦争が終わったら兵士止めて何か普通の仕事をしたいんだが……」
そう言われたモーリヤスは優しい笑顔を見せ、
「ああ、そう言うことなら俺が会長に話を通してやる!」
モーリヤスが自分の胸を叩き、任せろとアピールする!
「そうか……なぁ、他にも俺みたいのがいるんだが……」
その後の作業は次々と増える仲間により、朝日を待たずに終える。
マルシャルと、その他に、千人程が捕虜となり、キースの軍は、彼の知らぬ間に10万にまで膨れ上がることとなる。
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