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第二十八話 次の動きの前に……

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キースのもとに、モーリヤスからの報告が届く。

「ふむ、アメリア、君の発案した水中潜伏用魔法具が大活躍したらしいぞ。」

キースは報告書を手に、とても満足そうにアメリアに声をかける。

アメリアは、戸惑いの表情で、両手を前にだして大きく振りながら、

「キース様!それは違います。私は古文書の中に見つけた物を上手く形に出来ただけで、私が発案したわけでは…」

そう謙遜するアメリアにキースは、

「ふ、まぁ、君がそう言うなら、そういう事にしても良いが、書物の中の物をどう形にして生かすのか、それが一番肝心だと言うことだけは言わせてもらおう。何より、いくら価値のある情報が眠っている古文書があっても、ただそれを生かせなければ宝の持ち腐れだ。だから君の仕事は素晴らしい。誇って良いことなんだぞ。」


そうキースは優しい目をして
、アメリアをじっと見て滔々と語った。

キースの視線に照れ笑いをするアメリア。

「ありがとうございます。そう言って頂けるだけで私は幸せです。」

アメリアはそう答え、キースと視線が合う。

じっと見つめ合い、良い雰囲気の二人……

手と手が伸びて、触れあうかと思った瞬間………


『バタン!!』


と大きな音を立てて扉が開かれ、伝令役のライアンが部屋へとノックも無しに駆け込んでくる!!

「キース様!!火急の要件ですので失礼します!」

サッと手を引っ込めるアメリアと、後ろ手を組み、胸を張り、アメリアに背を向けるキース。
キースは慌てる伝令役のライアンとは対照的に落ち着いた様子で、

「ん?ギネリン王国軍がこちらに進軍していると言うところか?」

何か、とんでもなく、ダメなタイミングで部屋へ入った事を感じ取ったライアンは言葉を詰まらせ、

「あ………の…………あっ!!!はい!もう既に領地に入るところでして……」

と報告するのがやっとだった。
そんなライアンの態度を他所に、キースは落ち着いた表情を取り戻したからなのか、ライアンに振り返り問う。

「住民の避難は?」

キースの真剣な表情に、先程の見つめ合い手を伸ばしあっていた二人の光景とのギャップに少し可笑しくなったライアンは、笑いをこらえつつ、

「は、はい…終わっております。」

キースは再びアメリアと伝令役のライアンに背を向け、部屋を一週思案するかのように歩くと、

「そうか、ご苦労。」

と返事をした。
伝令に来たライアンは慌てて来たのに落ち着いた対応をされたことにようやく疑問を持ち訪ねようとする。

「あの……」

口を開こうとするライアンに、キースは、

「ああ、不安は分かるがしなければいけない事はわかっているだろう?」

そう優しく話をし、

「はい!」

と返し、真剣な表情になるライアン。
キースはライアンの顔を見て満足そうに、

「うん、大丈夫だ。詳しく話すことは出来ないが私にも守りたい者が増えたのでね。」

そうキースは、アメリアの顔を視界に入れて答えるのだった。





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