28 / 58
第二十八話 次の動きの前に……
しおりを挟む
キースのもとに、モーリヤスからの報告が届く。
「ふむ、アメリア、君の発案した水中潜伏用魔法具が大活躍したらしいぞ。」
キースは報告書を手に、とても満足そうにアメリアに声をかける。
アメリアは、戸惑いの表情で、両手を前にだして大きく振りながら、
「キース様!それは違います。私は古文書の中に見つけた物を上手く形に出来ただけで、私が発案したわけでは…」
そう謙遜するアメリアにキースは、
「ふ、まぁ、君がそう言うなら、そういう事にしても良いが、書物の中の物をどう形にして生かすのか、それが一番肝心だと言うことだけは言わせてもらおう。何より、いくら価値のある情報が眠っている古文書があっても、ただそれを生かせなければ宝の持ち腐れだ。だから君の仕事は素晴らしい。誇って良いことなんだぞ。」
そうキースは優しい目をして
、アメリアをじっと見て滔々と語った。
キースの視線に照れ笑いをするアメリア。
「ありがとうございます。そう言って頂けるだけで私は幸せです。」
アメリアはそう答え、キースと視線が合う。
じっと見つめ合い、良い雰囲気の二人……
手と手が伸びて、触れあうかと思った瞬間………
『バタン!!』
と大きな音を立てて扉が開かれ、伝令役のライアンが部屋へとノックも無しに駆け込んでくる!!
「キース様!!火急の要件ですので失礼します!」
サッと手を引っ込めるアメリアと、後ろ手を組み、胸を張り、アメリアに背を向けるキース。
キースは慌てる伝令役のライアンとは対照的に落ち着いた様子で、
「ん?ギネリン王国軍がこちらに進軍していると言うところか?」
何か、とんでもなく、ダメなタイミングで部屋へ入った事を感じ取ったライアンは言葉を詰まらせ、
「あ………の…………あっ!!!はい!もう既に領地に入るところでして……」
と報告するのがやっとだった。
そんなライアンの態度を他所に、キースは落ち着いた表情を取り戻したからなのか、ライアンに振り返り問う。
「住民の避難は?」
キースの真剣な表情に、先程の見つめ合い手を伸ばしあっていた二人の光景とのギャップに少し可笑しくなったライアンは、笑いをこらえつつ、
「は、はい…終わっております。」
キースは再びアメリアと伝令役のライアンに背を向け、部屋を一週思案するかのように歩くと、
「そうか、ご苦労。」
と返事をした。
伝令に来たライアンは慌てて来たのに落ち着いた対応をされたことにようやく疑問を持ち訪ねようとする。
「あの……」
口を開こうとするライアンに、キースは、
「ああ、不安は分かるがしなければいけない事はわかっているだろう?」
そう優しく話をし、
「はい!」
と返し、真剣な表情になるライアン。
キースはライアンの顔を見て満足そうに、
「うん、大丈夫だ。詳しく話すことは出来ないが私にも守りたい者が増えたのでね。」
そうキースは、アメリアの顔を視界に入れて答えるのだった。
「ふむ、アメリア、君の発案した水中潜伏用魔法具が大活躍したらしいぞ。」
キースは報告書を手に、とても満足そうにアメリアに声をかける。
アメリアは、戸惑いの表情で、両手を前にだして大きく振りながら、
「キース様!それは違います。私は古文書の中に見つけた物を上手く形に出来ただけで、私が発案したわけでは…」
そう謙遜するアメリアにキースは、
「ふ、まぁ、君がそう言うなら、そういう事にしても良いが、書物の中の物をどう形にして生かすのか、それが一番肝心だと言うことだけは言わせてもらおう。何より、いくら価値のある情報が眠っている古文書があっても、ただそれを生かせなければ宝の持ち腐れだ。だから君の仕事は素晴らしい。誇って良いことなんだぞ。」
そうキースは優しい目をして
、アメリアをじっと見て滔々と語った。
キースの視線に照れ笑いをするアメリア。
「ありがとうございます。そう言って頂けるだけで私は幸せです。」
アメリアはそう答え、キースと視線が合う。
じっと見つめ合い、良い雰囲気の二人……
手と手が伸びて、触れあうかと思った瞬間………
『バタン!!』
と大きな音を立てて扉が開かれ、伝令役のライアンが部屋へとノックも無しに駆け込んでくる!!
「キース様!!火急の要件ですので失礼します!」
サッと手を引っ込めるアメリアと、後ろ手を組み、胸を張り、アメリアに背を向けるキース。
キースは慌てる伝令役のライアンとは対照的に落ち着いた様子で、
「ん?ギネリン王国軍がこちらに進軍していると言うところか?」
何か、とんでもなく、ダメなタイミングで部屋へ入った事を感じ取ったライアンは言葉を詰まらせ、
「あ………の…………あっ!!!はい!もう既に領地に入るところでして……」
と報告するのがやっとだった。
そんなライアンの態度を他所に、キースは落ち着いた表情を取り戻したからなのか、ライアンに振り返り問う。
「住民の避難は?」
キースの真剣な表情に、先程の見つめ合い手を伸ばしあっていた二人の光景とのギャップに少し可笑しくなったライアンは、笑いをこらえつつ、
「は、はい…終わっております。」
キースは再びアメリアと伝令役のライアンに背を向け、部屋を一週思案するかのように歩くと、
「そうか、ご苦労。」
と返事をした。
伝令に来たライアンは慌てて来たのに落ち着いた対応をされたことにようやく疑問を持ち訪ねようとする。
「あの……」
口を開こうとするライアンに、キースは、
「ああ、不安は分かるがしなければいけない事はわかっているだろう?」
そう優しく話をし、
「はい!」
と返し、真剣な表情になるライアン。
キースはライアンの顔を見て満足そうに、
「うん、大丈夫だ。詳しく話すことは出来ないが私にも守りたい者が増えたのでね。」
そうキースは、アメリアの顔を視界に入れて答えるのだった。
0
お気に入りに追加
218
あなたにおすすめの小説
【完結】英雄様、婚約破棄なさるなら我々もこれにて失礼いたします。
紺
ファンタジー
「婚約者であるニーナと誓いの破棄を望みます。あの女は何もせずのうのうと暮らしていた役立たずだ」
実力主義者のホリックは魔王討伐戦を終結させた褒美として国王に直談判する。どうやら戦争中も優雅に暮らしていたニーナを嫌っており、しかも戦地で出会った聖女との結婚を望んでいた。英雄となった自分に酔いしれる彼の元に、それまで苦楽を共にした仲間たちが寄ってきて……
「「「ならば我々も失礼させてもらいましょう」」」
信頼していた部下たちは唐突にホリックの元を去っていった。
微ざまぁあり。
私、実は若返り王妃ですの。シミュレーション能力で第二の人生を切り開いておりますので、邪魔はしないでくださいませ
もぐすけ
ファンタジー
シーファは王妃だが、王が新しい妃に夢中になり始めてからは、王宮内でぞんざいに扱われるようになり、遂には廃屋で暮らすよう言い渡される。
あまりの扱いにシーファは侍女のテレサと王宮を抜け出すことを決意するが、王の寵愛をかさに横暴を極めるユリカ姫は、シーファを見張っており、逃亡の準備をしていたテレサを手討ちにしてしまう。
テレサを娘のように思っていたシーファは絶望するが、テレサは天に召される前に、シーファに二つのギフトを手渡した。
聖女追放 ~私が去ったあとは病で国は大変なことになっているでしょう~
白横町ねる
ファンタジー
聖女エリスは民の幸福を日々祈っていたが、ある日突然、王子から解任を告げられる。
王子の説得もままならないまま、国を追い出されてしまうエリス。
彼女は亡命のため、鞄一つで遠い隣国へ向かうのだった……。
#表紙絵は、もふ様に描いていただきました。
#エブリスタにて連載しました。
もしかして私ってヒロイン?ざまぁなんてごめんです
もきち
ファンタジー
私は男に肩を抱かれ、真横で婚約破棄を言い渡す瞬間に立ち会っている。
この位置って…もしかして私ってヒロインの位置じゃない?え、やだやだ。だってこの場合のヒロインって最終的にはざまぁされるんでしょうぉぉぉぉぉ
知らない間にヒロインになっていたアリアナ・カビラ
しがない男爵の末娘だったアリアナがなぜ?
宮廷から追放された聖女の回復魔法は最強でした。後から戻って来いと言われても今更遅いです
ダイナイ
ファンタジー
「お前が聖女だな、お前はいらないからクビだ」
宮廷に派遣されていた聖女メアリーは、お金の無駄だお前の代わりはいくらでもいるから、と宮廷を追放されてしまった。
聖国から王国に派遣されていた聖女は、この先どうしようか迷ってしまう。とりあえず、冒険者が集まる都市に行って仕事をしようと考えた。
しかし聖女は自分の回復魔法が異常であることを知らなかった。
冒険者都市に行った聖女は、自分の回復魔法が周囲に知られて大変なことになってしまう。
華都のローズマリー
みるくてぃー
ファンタジー
ひょんな事から前世の記憶が蘇った私、アリス・デュランタン。意地悪な義兄に『超』貧乏騎士爵家を追い出され、無一文の状態で妹と一緒に王都へ向かうが、そこは若い女性には厳しすぎる世界。一時は妹の為に身売りの覚悟をするも、気づけば何故か王都で人気のスィーツショップを経営することに。えっ、私この世界のお金の単位って全然わからないんですけど!?これは初めて見たお金が金貨の山だったという金銭感覚ゼロ、ハチャメチャ少女のラブ?コメディな物語。
新たなお仕事シリーズ第一弾、不定期掲載にて始めます!
もう私、好きなようにさせていただきますね? 〜とりあえず、元婚約者はコテンパン〜
野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「婚約破棄ですね、はいどうぞ」
婚約者から、婚約破棄を言い渡されたので、そういう対応を致しました。
もう面倒だし、食い下がる事も辞めたのですが、まぁ家族が許してくれたから全ては大団円ですね。
……え? いまさら何ですか? 殿下。
そんな虫のいいお話に、まさか私が「はい分かりました」と頷くとは思っていませんよね?
もう私の、使い潰されるだけの生活からは解放されたのです。
だって私はもう貴方の婚約者ではありませんから。
これはそうやって、自らが得た自由の為に戦う令嬢の物語。
※本作はそれぞれ違うタイプのざまぁをお届けする、『野菜の夏休みざまぁ』作品、4作の内の1作です。
他作品は検索画面で『野菜の夏休みざまぁ』と打つとヒット致します。
公爵令嬢アナスタシアの華麗なる鉄槌
招杜羅147
ファンタジー
「婚約は破棄だ!」
毒殺容疑の冤罪で、婚約者の手によって投獄された公爵令嬢・アナスタシア。
彼女は獄中死し、それによって3年前に巻き戻る。
そして…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる