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二十七話 アミラル提督の受難

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数日の時が流れると、

エネロワ公爵領の港から見える海に、ギネリン王国の戦艦隊が姿を現した!

既に住民の避難は済み、ひと気の無い港の姿を望遠鏡を使い確認する王国軍。 

「ど、どう言うことだ?人の気配が見られないぞ?漁に出ていた小舟も見えないし、これは……どこかで情報が漏れたのか?しかし、住民が居ないのであれば占領するのも簡単だが……罠か?罠だよな……。くそ!情報が足りない!物見をだせ!」

船上で、人気の無い港を見て、取り乱す王国軍のアミラル提督。

小舟が港に向けて出ていき、すんなりと港にたどり着き、先行して、小舟から上陸する。

民家の中に入ったり、辺りを望遠鏡で見回したり、魔法を使い、周辺を探すが、民間人を確認することが出来なかった。

先行隊の隊長は、一つ息をつくと、

戦艦にいる提督にむかい、通信の魔法を使い、

「目視、魔法、両方から確認しましたが、この街は放棄されたものと思われます。」

と伝える。

その報告を聞いたアミラル提督は、

「そうか……ゲリラの様な者はいないのだな?」

そう念を、押し、
先行部隊の隊長は、

「はい、人の気配も熱や、魔法具のトラップなどもありません。」

それを聞いたアミラル提督は、ニヤリと笑い、

「キース公爵、恐れる程の人物ではないようだ。そうとなれば、上陸してヤツの屋敷に乗り込むぞ!」

そうアミラル提督言い、艦隊を進ませ、港へと入って行こうとしたその刹那、

海底がパッ!

と光ったかと思うと、船底から大きな爆発音が響き、舟全体が一瞬宙に浮いた様な動きを見せ、乗組員もその衝撃で立っていた場所の天井に叩きつけられる勢いで弾き飛ばされる!!

「な、何が起きた!!現状報告しろ!!」

アミラル提督はよろめきながら体制を立て直すと、そう大声で怒鳴り散らし、現状を把握しようとするが、辺りは蜘蛛の子を散らすような大騒ぎで、とても収集がつかなかった!

「し、衝撃はしたからだ!被害報告!!」

まだ乗組員はあたふたしているが、どこかから、

「本船は、海底から攻撃された模様!!船体に穴が空き、その損傷から水が流れ込んでいるそうであります!!」

その声に慌てふためき、舟から海へ飛び込む者や、我先にと救命ボートへと走る者、など、船上はパニック状態に陥る!!

「落ち着け!!落ち着くのだ!!」

これまでアミラル提督の艦隊が攻撃され、損傷を受けた事は一度も無かった……

それは優秀な魔法使いの部隊が戦艦に向けられる攻撃を全て跳ね返していたこともあるが、何より攻撃される前に敵船を沈めていたからであった。
そんな最強の艦隊が今はもう後数時間で海の藻屑である……

「わ、私の船が沈むのか…私は…私は……」

王国の歴史の中で最強と吟われていたアミラル提督率いる艦隊がその大砲を放つこともなく、海へと消えていくのだった………


海へと放り出されたアミラル提督率いる艦隊の乗組員。

そこへ海中から数人の男が姿を現す!!

水の中にいたにも関わらず、その集団の装備は濡れておらず、ふわりと空中に浮かび上がるとアミラル達を見下ろす


「やぁ諸君海水浴を楽しんでくれているかい?」

そう隊長らしき男が声をかける。
その顔を見たアミラルは、

「お、お前は?!モーリヤス?」

そう呼ばれた男は空中で見下ろしながらも優雅にお辞儀をし、あいさつする。

「お久しぶりです。アミラル公爵。サッ皆さんはこれから捕虜になります。大人しくしていてくださいね。」

抵抗をみせようとする一団に有無を言わさず拘束魔法をかけると、それでも抵抗するもの達はブクブクと海中へと消えていく……

「な、お前は……」

アミラルが何か言っているが、モーリヤスは我意に関せずと言った感じで、作業を進めながら、

「しかし、この装備すごいな。海中でも快適だったし、何より軽い!」

「ああ、何でもキース会長の新しい奥さんの発明らしいですよ?」

「ん?まだ付き合ってないと言われたぞ?」

「いや…でもあの雰囲気は…」

「おい、おい、あまり興味本意でそんな話をしていると会長に怒られるぞ。」

「いや、そもそも、もう会長じゃ無いしな」

ハハハハハハハハハハハ!!

大きな笑い声の中、回収作業を進めるモーリヤス一行。

こうして、ギネリン王の先発隊は皆捕虜になるのだった。



    
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