【完結】『サヨナラ』そう呟き、崖から身を投げようとする私の手を誰かに引かれました。

十二話 その頃フュルスト家は① 【胸糞注意】

アメリアが屋敷を飛び出してから2ヶ月、フュルスト家は蜂の巣をつついたような慌てようだった。

「おい！アメリアは見つかったのか？」

実父である、オリビエは眉間にシワを寄せ、アメリアの行衛が未だつかめない事に苛立ちを隠すことが出来ないでいた。

「すみません、旦那様、なにぶん、お嬢様が出ていかれたのが夜分遅くの事であったので、目撃者も少なく、足取りがまったく掴めないのです。ご心配なのは重々わかりますがもうしばらくお時間を……………。」

使用人の男が申し訳なさそうに報告するが、この2ヶ月の間、この男から出てくる言葉はまったく変わらない。
そんな風に事態がまったく進まない事に、オリビエは報告の度に苛立ちを募らせている！！

「ふん！まったく使えんやつだ！娘一人を見つけることも出来ないなんて、この無能が！！」

オリビエが使用人を蹴りつける！

「す、すみません、この次は必ずお嬢様を連れて帰りますのでお許しを。」

使用人の男は蹴られながらも、娘を心配する父親の姿をオリビエに見ていた。
その為、何度蹴られても、強い言葉で叱責されても、耐えることが出来た。 

「とにかくアメリアを見つけだせ！！」

オリビエの怒号が屋敷にこだまする！！
そこへドアをノックする人物が………アメリアの義理の妹のソフィアである。

「お父様、失礼致します。ハルト様との結婚式の事でご相談があります、列席の方で……あら、お取り込み中でしたね、すみません。」

謝意を示すソフィアに、オリビエは、先程まで使用人を蹴りつけていた人物はどこへ行ってしまったのか、表情を柔らかくして、

「おおソフィア、うん、うん、なんだ？結婚式の話か？それは重要なことだな。」

そう話すオリビエの手は、使用人へ向けて、

シッ！シッ！

と早く部屋を出るように動いている。

使用人が部屋を出て行くと、オリビエの手がソフィアの顔を撫でる。

「しかしソフィア、お前は母親に似て本当にきれいだな。ハルト君にやるのは実にもったいない！」

そんな言葉にソフィアは妖しい笑みを浮かべ、

「あら、ありがとう、お義父様。でもハルト様との屋敷からここはそう離れていないもの、いつでも逢えますわ。」

そう話すソフィアの掌がオリビエの髪を撫で、ソフィアの唇がオリビエの唇に近づき………

二人はキスをする！！

熱いキスをかわす二人のところへ、再びノックの音がして、邪魔が入る！

部屋に入って来たのはエリザベス！！

しかし、

「あら、二人ではじめていたの？もう、オリビエっ！早く私も混ぜて♪」

この関係はオリビエとエリザベスが結婚して、直ぐに始まり、エリザベスも公認の仲であった。