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八話 立派な令嬢

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浜辺で暫くの間休憩すると、キースが冷静になり、アメリアに質問する……

「しかし、アメリア、君は何故こんなところに……と言うか、その身なりはどうしたんだい?フュルスト侯爵家の令嬢なのに…。」

キースは髪はボサボサで、ボロボロの服装を身に付けたアメリアに問う。
アメリアは、その問いに、うつむき加減になり、答える。

「これは………」

涙を浮かべるアメリア……

「すまない、話をしたくないのなら、しなくても良いんだよ。悪いことを聞いたようだね……すまない。」

キースが謝罪するが、アメリアは首を振り、構わないと、話をはじめた…

「とても辛くて……上手く伝えられるか分かりませんが、 三年前に母のが亡くなり、父がその後、すぐに再婚したのがはじまりでした。継母には連れ子のソフィアがいました。父と義母が結婚してすぐに、ソフィアは私の髪飾りを欲しがりました。私は誕生日に贈られた物だったので、断ったんですが、結局取られる事になります………それから私は屋敷でのけ者にされはじめたんです。継母のエリザベスには毎日の様にこき使われ、妹のソフィアには様々な物を奪い取られ、先日は婚約者まで奪われました。………そして、私はソフィアに母との思いでの品を壊され、屋敷を飛び出して来たんです………。」

アメリアは涙を流しながら、ゆっくりと話を終える…。
それを聞いたキースは、

「そうか………辛い話をさせたようだね……。すまない。」

と謝罪すると、アメリアは構わないと、

「いえ、それは真実なので……。」

涙を手で拭うアメリアに、キースはハンカチを手渡しながら、

「しかし、飛び出して来たのは分かったが、何故ここに?」

アメリアは、その問いにうつむきながら答える。

「ええ、あてもなく歩いていたんですが、気付いたらあの崖の上にいました………。そして、全てを終わらせようとした時に、マリアさんとお会いしたんです。」

話の最後には笑顔を見せるアメリア。
キースは誇らしげな表情で、

「そうか……マリア、お前はもう立派な公爵令嬢のようだな……天国の母も誇らしく想っているだろう……。」

キースはマリアを抱き上げ、

「そして、父はそれが堪らなく嬉しいぞ!」

人目も憚らず、マリアを抱きしめるキースに、マリアは慌てて、顔を赤くしながら、

「な、何を言っているの?!お父様!!は、恥ずかしいから……お止めに……止めて!!」

キースから逃れる様に離れるマリアに、皆が笑いに包まれる。
キースは頭をポリポリと掻きながら、

「すまない……嬉しくてつい……。」

マリアは照れながらも、

「もう!!………しょうがないお父様ね……。」

また笑いに包まれる一同、そんななか、キースがアメリアに提案をする。

「フュルストの屋敷にはもう帰るつもりはないんだろう?」

アメリアはうつむき、

「は……い……。」

キースはそんなアメリアに、

「そうか……それなら私の屋敷にくるかい?」

しかし、アメリアは、

「そんな……ご迷惑に…」

そんなやり取りをみて、ヤキモキしたマリアが割って入り、

「なるわけ無いでしょ!そんなに気まずいなら私の専属家庭教師になりなさい。貴女は、魔法は下手だとお父様に言われていたけど、座学は得意なんでしょ?」

その言葉にアメリアは、

「そうですね……キース様、宜しいでしょうか?」

キースは話が決まったことに満足して、

「当たり前だ。」

こうしてアメリアは、キースの屋敷に身を寄せることになる。



    
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