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三話 『サヨナラ』そう言って崖に………(加筆)

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アメリアが部屋の扉を開くと、自室のシャワールームから水の流れるおとがする。

???

アメリアは、頭の中が混乱する。
ハルトが来ているからと、慌てて浴びせかけられたバケツの汚水を流し、着替えたものの、しっかりと、シャワーの水は止めて部屋を出たはず………先程のソフィアの『お風呂にでも行ってきたら』と言う言葉が引っ掛かる!!
嫌な予感に心が乱されながら、アメリアはシャワールームの扉を開けると、シャワーがあるものに向かって水を放ち続けている!!

「嫌、いや、い……や……イヤー!!」

アメリアはシャワーを止めると、水に濡れた物を手に取る。
それは、亡くなった母との思いでのドライフラワーだった……。
アメリアの実母、ジェシカが存命中に、一緒に作った思いでの品だった……。
アメリアの叫び声を聞いて、ソフィアがシャワールームの入り口に顔を出してくる。

「あら、なんだかお義姉さまが大切にしていたお花が枯れていて、元気が無さそうだったから、お水をあげたのに、何だか気持ち悪い感じになったわね、ソレ♪」

ソフィアはさも優しさからしたような事を口では言いつつも、顔は悪戯を通り越して、悪魔のような顔で笑っている。

「な、何て事を………ひ…ど…い…………。」

泣き崩れ、その場を動けずにいるアメリアに、ソフィアは、

「な~んだ、それだけ?もっと激しく突っかかって来るかと思って楽しみにしてたのに、つまんな~い。あっ、いけない、ハルト様に私のお部屋で楽しもうと言われてたんだっけ?じゃっ、そう言うことで~。」

ソフィアはそう言い残すと、力なく項垂れるアメリアをシャワールームに残し、部屋を後にする。

婚約者を妹に奪われ、継母には毎日のようにこき使われ、そして、虐められ、実の父親にも大切にしてもらえない……。

そんな家にはもういたくないと、アメリアは何も持たずに家を飛び出した!!

闇が世界を支配するなか、
アメリアは無我夢中で、
夜通しあてもなく森の中を進み、屋敷から離れたい一心で、ひとときも休まずに歩き続ける。

一晩中森の中を彷徨い歩き、絶望の中にいるようにアメリアは、その心の内の様に、ドレスもボロボロになりながら、宛もなく、ただ、ただ、遠くへ行きたい………それだけの想いで進み続けるのだった。

そして遂には、

森を抜けると、

ゴツゴツとした岩場が辺りに広がり、その岩へと打ち寄せる波が飛沫を上げる、荒れ狂う海に出るのだった。

そんな海に突き出した崖のさきへアメリアは歩を進める。

そんなアメリアのドレスは、

ボロボロになり、

顔は涙でグシャグシャ、

そして、

絶望の表情を浮かべている。

「お母さん……わたし……もう生きていたくないの………こんな形でそばに来られても嫌かな?………もう私には何もないのよ?大切にしていた宝物も婚約者もそして、お母さん、アナタとの思いでの品も………ごめんなさい……もう…全部嫌なの………。」



『サヨナラ』



そう言い残し、崖から身を投げようとするアメリア……



しかし、

心身ともにボロボロになり、

夜通し歩いて冷たくなっていた
アメリアの手の先に温かい、なにかが触れる。

その温かいモノに包まれたアメリアの手は引かれ、崖から連れ戻されていく。
母のもとへと、逝く覚悟を決めていたアメリアを連れ戻す存在に、アメリアは戸惑いながらも振り向き、その存在を確認する………。
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