【完結、R18】公爵婦人ソフィアの結婚【燃え盛る小屋の中に夫が飛び込んでいきました】

仰木 あん

文字の大きさ
上 下
7 / 9

しおりを挟む
その日ハルトは父に屋敷へと呼び出され、胸騒ぎを感じていた。

ジェイコブが産まれ、使用人を使いながらも、息子の世話に忙しいソフィアが森はへ、あの家に行くのではないか?

そんな思考が頭の中をぐるぐると回り、父と進める仕事の話も全然頭に入らず、時間ばかりかかることとなり、予定より帰る事が遅くなる。

【そろそろジェイコブを寝かしつける時間か……これなら大丈夫そうか?】

そんな事を思いながら、焦る気持ちを抱えながら、自分の屋敷へと馬車に揺られる……そんなハルトが、客車のまどから空に視線を移すと、屋敷の先にある森の空が僅かに赤く染まっているのが目に飛び込んでくる!

火事?

焦るハルトはその場に馬車を止めさせると、客車から飛び降り、馬に飛び乗る。

使用人と、客車をその場に残すと、一路森へと飛び込んで行く!

嫌な予感は的中し、ハルトの大切な物がある森の中の一軒家から火の手が上がっていた。

既に火は、赤々その勢いを周りの木々にも襲いかからんとしていた。森の異変に気付いた、ライアンとキースが消火しようと水魔法を使っているが、焼け石に水のようで、その勢いを殺すことが出来ずにいる。

「ハルト様!申し訳ありません!」

そんなキースとライアンの声がハルトに届く事はなく、燃え上がる家しか目に入らないハルトは、

「レイラ!レイラ!」

  そう叫び、ライアンやキースが静止するのも構わず、一人その家へと駆け込んで行く…。

その様子を大木のそばで見ているソフィア。

「レイラ?そう……あれはレイラって名前なのね……そうなの…ハルト……♪」

うっすらと微笑みをたたえ、虚ろな瞳で立ち尽くすソフィア。

炎はハルトが家に入った後も激しく燃え盛っている…

暫くすると、空から大粒の雨が降り注ぎ、火事はゆっくりと鎮火へと向かいはじめる。

「ハルト様!」

ライアンとキースが、黒く煤けた家へと突入し、二階へと向かうが、

そこにあったのは、全身が焼かれ、無惨な姿をさらすハルトだった。

そんな彼が大事そうに覆い被さっていたのは、苦悶の表情を浮かべ、緑色に光る魔石に全身を包まるメイド服の女………

おそらく、ハルトが家へと突入する時に叫んでいた『レイラ』がこれなのだろう……。

魔石からは、彼女の白骨化した掌だけが外に出ている。

「そう……だから私の掌を………。」

途端にソフィアの顔に怒りの色が浮かぶ……。

「ライアン、キース……ハルト様はもう駄目みたい……ジェイコブが心配だし、この事はノワール公爵様に知らせる必要があるわ…お願い出来る?」

そう言われた二人は、直ぐに役割を決める。

「あの…ソフィア様は…」

そうライアンが声をかけると、ソフィアは、

「少しハルト様と二人だけにしてくれる?大丈夫、この森に魔物はいないんでしょ?」

そう言われた二人は静かに頷くと、ソフィアを残し、各々の役目をはたすべく、走り出すのだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

勘違い妻は騎士隊長に愛される。

更紗
恋愛
政略結婚後、退屈な毎日を送っていたレオノーラの前に現れた、旦那様の元カノ。 ああ なるほど、身分違いの恋で引き裂かれたから別れてくれと。よっしゃそんなら離婚して人生軌道修正いたしましょう!とばかりに勢い込んで旦那様に離縁を勧めてみたところ―― あれ?何か怒ってる? 私が一体何をした…っ!?なお話。 有り難い事に書籍化の運びとなりました。これもひとえに読んで下さった方々のお蔭です。本当に有難うございます。 ※本編完結後、脇役キャラの外伝を連載しています。本編自体は終わっているので、その都度完結表示になっております。ご了承下さい。

届かぬ温もり

HARUKA
恋愛
夫には忘れられない人がいた。それを知りながら、私は彼のそばにいたかった。愛することで自分を捨て、夫の隣にいることを選んだ私。だけど、その恋に答えはなかった。すべてを失いかけた私が選んだのは、彼から離れ、自分自身の人生を取り戻す道だった····· ◆◇◆◇◆◇◆ すべてフィクションです。読んでくだり感謝いたします。 ゆっくり更新していきます。 誤字脱字も見つけ次第直していきます。 よろしくお願いします。

(完結)いつのまにか懐かれました。懐かれたからには私が守ります。

水無月あん
恋愛
私、マチルダは子爵家の娘。騎士団長様のような騎士になることを目指し、剣の稽古に励んでいる。 そんなある日、泣いている赤い髪の子どもを見つけて、かばった。すると、なぜだか懐かれました。懐かれた以上は私が守ります!  「無表情の美形王子に婚約解消され、自由の身になりました! なのに、なんで、近づいてくるんですか?」のスピンオフとなりますが、この作品だけでも読めます。 番外編ででてくる登場人物たちが数人でてきます。 いつもながら設定はゆるいです。気軽に楽しんでいただければ嬉しいです。 よろしくお願いします。

[完結」(R18)最強の聖女様は全てを手に入れる

青空一夏
恋愛
私はトリスタン王国の王女ナオミ。18歳なのに50過ぎの隣国の老王の嫁がされる。最悪なんだけど、両国の安寧のため仕方がないと諦めた。我慢するわ、でも‥‥これって最高に幸せなのだけど!!その秘密は?ラブコメディー

片想いの相手と二人、深夜、狭い部屋。何も起きないはずはなく

おりの まるる
恋愛
ユディットは片想いしている室長が、再婚すると言う噂を聞いて、情緒不安定な日々を過ごしていた。 そんなある日、怖い噂話が尽きない古い教会を改装して使っている書庫で、仕事を終えるとすっかり夜になっていた。 夕方からの大雨で研究棟へ帰れなくなり、途方に暮れていた。 そんな彼女を室長が迎えに来てくれたのだが、トラブルに見舞われ、二人っきりで夜を過ごすことになる。 全4話です。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

大好きな幼馴染と結婚した夜

clayclay
恋愛
架空の国、アーケディア国でのお話。幼馴染との初めての夜。 前作の両親から生まれたエイミーと、その幼馴染のお話です。

騎士団長のアレは誰が手に入れるのか!?

うさぎくま
恋愛
黄金のようだと言われるほどに濁りがない金色の瞳。肩より少し短いくらいの、いい塩梅で切り揃えられた柔らかく靡く金色の髪。甘やかな声で、誰もが振り返る美男子であり、屈強な肉体美、魔力、剣技、男の象徴も立派、全てが完璧な騎士団長ギルバルドが、遅い初恋に落ち、男心を振り回される物語。 濃厚で甘やかな『性』やり取りを楽しんで頂けたら幸いです!

処理中です...