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その日ハルトは父に屋敷へと呼び出され、胸騒ぎを感じていた。
ジェイコブが産まれ、使用人を使いながらも、息子の世話に忙しいソフィアが森はへ、あの家に行くのではないか?
そんな思考が頭の中をぐるぐると回り、父と進める仕事の話も全然頭に入らず、時間ばかりかかることとなり、予定より帰る事が遅くなる。
【そろそろジェイコブを寝かしつける時間か……これなら大丈夫そうか?】
そんな事を思いながら、焦る気持ちを抱えながら、自分の屋敷へと馬車に揺られる……そんなハルトが、客車のまどから空に視線を移すと、屋敷の先にある森の空が僅かに赤く染まっているのが目に飛び込んでくる!
火事?
焦るハルトはその場に馬車を止めさせると、客車から飛び降り、馬に飛び乗る。
使用人と、客車をその場に残すと、一路森へと飛び込んで行く!
嫌な予感は的中し、ハルトの大切な物がある森の中の一軒家から火の手が上がっていた。
既に火は、赤々その勢いを周りの木々にも襲いかからんとしていた。森の異変に気付いた、ライアンとキースが消火しようと水魔法を使っているが、焼け石に水のようで、その勢いを殺すことが出来ずにいる。
「ハルト様!申し訳ありません!」
そんなキースとライアンの声がハルトに届く事はなく、燃え上がる家しか目に入らないハルトは、
「レイラ!レイラ!」
そう叫び、ライアンやキースが静止するのも構わず、一人その家へと駆け込んで行く…。
その様子を大木のそばで見ているソフィア。
「レイラ?そう……あれはレイラって名前なのね……そうなの…ハルト……♪」
うっすらと微笑みをたたえ、虚ろな瞳で立ち尽くすソフィア。
炎はハルトが家に入った後も激しく燃え盛っている…
暫くすると、空から大粒の雨が降り注ぎ、火事はゆっくりと鎮火へと向かいはじめる。
「ハルト様!」
ライアンとキースが、黒く煤けた家へと突入し、二階へと向かうが、
そこにあったのは、全身が焼かれ、無惨な姿をさらすハルトだった。
そんな彼が大事そうに覆い被さっていたのは、苦悶の表情を浮かべ、緑色に光る魔石に全身を包まるメイド服の女………
おそらく、ハルトが家へと突入する時に叫んでいた『レイラ』がこれなのだろう……。
魔石からは、彼女の白骨化した掌だけが外に出ている。
「そう……だから私の掌を………。」
途端にソフィアの顔に怒りの色が浮かぶ……。
「ライアン、キース……ハルト様はもう駄目みたい……ジェイコブが心配だし、この事はノワール公爵様に知らせる必要があるわ…お願い出来る?」
そう言われた二人は、直ぐに役割を決める。
「あの…ソフィア様は…」
そうライアンが声をかけると、ソフィアは、
「少しハルト様と二人だけにしてくれる?大丈夫、この森に魔物はいないんでしょ?」
そう言われた二人は静かに頷くと、ソフィアを残し、各々の役目をはたすべく、走り出すのだった。
ジェイコブが産まれ、使用人を使いながらも、息子の世話に忙しいソフィアが森はへ、あの家に行くのではないか?
そんな思考が頭の中をぐるぐると回り、父と進める仕事の話も全然頭に入らず、時間ばかりかかることとなり、予定より帰る事が遅くなる。
【そろそろジェイコブを寝かしつける時間か……これなら大丈夫そうか?】
そんな事を思いながら、焦る気持ちを抱えながら、自分の屋敷へと馬車に揺られる……そんなハルトが、客車のまどから空に視線を移すと、屋敷の先にある森の空が僅かに赤く染まっているのが目に飛び込んでくる!
火事?
焦るハルトはその場に馬車を止めさせると、客車から飛び降り、馬に飛び乗る。
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嫌な予感は的中し、ハルトの大切な物がある森の中の一軒家から火の手が上がっていた。
既に火は、赤々その勢いを周りの木々にも襲いかからんとしていた。森の異変に気付いた、ライアンとキースが消火しようと水魔法を使っているが、焼け石に水のようで、その勢いを殺すことが出来ずにいる。
「ハルト様!申し訳ありません!」
そんなキースとライアンの声がハルトに届く事はなく、燃え上がる家しか目に入らないハルトは、
「レイラ!レイラ!」
そう叫び、ライアンやキースが静止するのも構わず、一人その家へと駆け込んで行く…。
その様子を大木のそばで見ているソフィア。
「レイラ?そう……あれはレイラって名前なのね……そうなの…ハルト……♪」
うっすらと微笑みをたたえ、虚ろな瞳で立ち尽くすソフィア。
炎はハルトが家に入った後も激しく燃え盛っている…
暫くすると、空から大粒の雨が降り注ぎ、火事はゆっくりと鎮火へと向かいはじめる。
「ハルト様!」
ライアンとキースが、黒く煤けた家へと突入し、二階へと向かうが、
そこにあったのは、全身が焼かれ、無惨な姿をさらすハルトだった。
そんな彼が大事そうに覆い被さっていたのは、苦悶の表情を浮かべ、緑色に光る魔石に全身を包まるメイド服の女………
おそらく、ハルトが家へと突入する時に叫んでいた『レイラ』がこれなのだろう……。
魔石からは、彼女の白骨化した掌だけが外に出ている。
「そう……だから私の掌を………。」
途端にソフィアの顔に怒りの色が浮かぶ……。
「ライアン、キース……ハルト様はもう駄目みたい……ジェイコブが心配だし、この事はノワール公爵様に知らせる必要があるわ…お願い出来る?」
そう言われた二人は、直ぐに役割を決める。
「あの…ソフィア様は…」
そうライアンが声をかけると、ソフィアは、
「少しハルト様と二人だけにしてくれる?大丈夫、この森に魔物はいないんでしょ?」
そう言われた二人は静かに頷くと、ソフィアを残し、各々の役目をはたすべく、走り出すのだった。
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