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ソフィアの気持ちがヴェール侯爵へと伝わると、そこからの話はスムーズに進んだ。
マリアの読んだ通り、話はトントン拍子に進んで行き、二人の婚約が決まる。
ハルトの気持ちは別として、親同士がどんどんと話を進める。
ソフィアの希望から始まったこととはいえ、貴族の婚約、家同士の利益も絡み、瞬く間に結婚式が行われる。
「お嬢様、お綺麗です。」
大聖堂の控え室で、ウエディングドレス姿のソフィアを前に、マリアが感極まって今にも泣きそうになっている。
「ありがとうマリア。でも本当に貴女の言う通りに事が運んだわね……少し怖いくらいよ。」
自分の望んだ相手と結婚できるなんて、侯爵家の令嬢として産まれ、半ば諦めていただけに、ソフィアは不安な気持ちに襲われる。
「そうですねお嬢様。でもそれもこれもお嬢様のお選びになった方が良かったのです。家柄も領内の産業も順調、そして女性の影が無いこんな令息はなかなか……。」
ソフィアのまわりでは、忙しくマリア以外のメイドが何やらソフィアの衣装を整えたりしている。
ソフィアは目の前にある大きな鏡に映る自分の姿を見つめながら、
「そうね、でも言い寄ってくる女性はハルト様御自身が遠ざけていたみたいよ?」
鏡の中の自分を色々な角度から見ながら話すソフィアの頭に、マリアはヴェールを被せ新婦の衣装の仕上げにかかりながら、
「そうですね。だからこそ、ヴェール侯爵様とノワール公爵の間で上手く話が纏まって、お嬢様はハルト様と結婚する事になったのですよ。あ!でも安心してください。男性の影も確認されていません!」
鏡のソフィアの姿を確認しながら、うんうんと頷くマリア。
ソフィアはマリアの『男の影』発言に驚いたのか、振り返り、マリアを見て、
「ちょっとマリア、急にBL路線にもっていかないでくれない?」
マリアはフフフと笑うと、
「でもお嬢様、可能性はゼロとは限りませんので……。」
そう言って、ソフィアを鏡に向き直させ、振り返ったことで乱れたヴェールをテキパキと直していく。
ソフィアはフッと軽く溜め息をつくと、
「はい、はい……。ハルト様御自身が女性を遠ざけていたから、そう言うお話が周りで噂されて無かったとは、言わないけど、マリア、今日は私とハルト様の結婚式なのよ?冗談でもそんなこと言わないでよね。」
わざとらしく怒った表情を見せるソフィアにマリアは、
「はい、大変失礼致しました。」
今までの冗談混じりの話とは違い、真剣な顔で謝罪するマリア。
そんなマリアに、ソフィアは鏡越しに真剣な眼差しで、
「でもね、マリア。私、貴女に感謝してるのよ。お父様に話した時も、ハルト様が女性を遠ざけているから、私の望みではあるけど、あくまでも政略結婚としてノワール公爵様とお話してくださいともっていけたのも貴女のおかげ……。
私がノワールに行っても一緒にいてくれる?」
そんなソフィアの願いをマリアは微笑みながら、
「もちろんです、お嬢様。」
そう言ってヴェールの位置を直し、
「さっ、お嬢様。お時間です。そろそろ式場に。」
そう言われたソフィアは、スッと立ち上がり、
「ええ、そうね。みんな、ありがとう。」
そうマリア以外のメイドにも声をかけ、控え室を後にするのだった。
マリアの読んだ通り、話はトントン拍子に進んで行き、二人の婚約が決まる。
ハルトの気持ちは別として、親同士がどんどんと話を進める。
ソフィアの希望から始まったこととはいえ、貴族の婚約、家同士の利益も絡み、瞬く間に結婚式が行われる。
「お嬢様、お綺麗です。」
大聖堂の控え室で、ウエディングドレス姿のソフィアを前に、マリアが感極まって今にも泣きそうになっている。
「ありがとうマリア。でも本当に貴女の言う通りに事が運んだわね……少し怖いくらいよ。」
自分の望んだ相手と結婚できるなんて、侯爵家の令嬢として産まれ、半ば諦めていただけに、ソフィアは不安な気持ちに襲われる。
「そうですねお嬢様。でもそれもこれもお嬢様のお選びになった方が良かったのです。家柄も領内の産業も順調、そして女性の影が無いこんな令息はなかなか……。」
ソフィアのまわりでは、忙しくマリア以外のメイドが何やらソフィアの衣装を整えたりしている。
ソフィアは目の前にある大きな鏡に映る自分の姿を見つめながら、
「そうね、でも言い寄ってくる女性はハルト様御自身が遠ざけていたみたいよ?」
鏡の中の自分を色々な角度から見ながら話すソフィアの頭に、マリアはヴェールを被せ新婦の衣装の仕上げにかかりながら、
「そうですね。だからこそ、ヴェール侯爵様とノワール公爵の間で上手く話が纏まって、お嬢様はハルト様と結婚する事になったのですよ。あ!でも安心してください。男性の影も確認されていません!」
鏡のソフィアの姿を確認しながら、うんうんと頷くマリア。
ソフィアはマリアの『男の影』発言に驚いたのか、振り返り、マリアを見て、
「ちょっとマリア、急にBL路線にもっていかないでくれない?」
マリアはフフフと笑うと、
「でもお嬢様、可能性はゼロとは限りませんので……。」
そう言って、ソフィアを鏡に向き直させ、振り返ったことで乱れたヴェールをテキパキと直していく。
ソフィアはフッと軽く溜め息をつくと、
「はい、はい……。ハルト様御自身が女性を遠ざけていたから、そう言うお話が周りで噂されて無かったとは、言わないけど、マリア、今日は私とハルト様の結婚式なのよ?冗談でもそんなこと言わないでよね。」
わざとらしく怒った表情を見せるソフィアにマリアは、
「はい、大変失礼致しました。」
今までの冗談混じりの話とは違い、真剣な顔で謝罪するマリア。
そんなマリアに、ソフィアは鏡越しに真剣な眼差しで、
「でもね、マリア。私、貴女に感謝してるのよ。お父様に話した時も、ハルト様が女性を遠ざけているから、私の望みではあるけど、あくまでも政略結婚としてノワール公爵様とお話してくださいともっていけたのも貴女のおかげ……。
私がノワールに行っても一緒にいてくれる?」
そんなソフィアの願いをマリアは微笑みながら、
「もちろんです、お嬢様。」
そう言ってヴェールの位置を直し、
「さっ、お嬢様。お時間です。そろそろ式場に。」
そう言われたソフィアは、スッと立ち上がり、
「ええ、そうね。みんな、ありがとう。」
そうマリア以外のメイドにも声をかけ、控え室を後にするのだった。
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