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九州縦断・中国横断、1200キロの調査の旅 ③
しおりを挟む第三話
午前中にとっとと散髪を済ませて被調査人の両親の人柄を凡そ掴んだ私は、そのあと車をぶっ飛ばして鹿児島市内に入った。
鹿児島には何度も来ているから地理は大体分かる。
スイスイと車を走らせて午前の閲覧時間ギリギリに法務局に滑り込んだ。
地方の法務局は融通が利く。
少々規定の閲覧時間をオーバーしても大丈夫だ。
昼休みは局内の蛍光灯は省エネのために消されて、職員さんたちはどこかへ行ってしまうが、「閲覧が終わったらそこらへんに置いといてくれたらよかです」とか何とか言われて、ほのぼのとした気分になる。
さて水俣だ。
鹿児島県との境にある熊本県水俣市は、チッソによるメチル水銀など工場排水が原因の「水俣病」を思い浮かべるが、実は緑豊かな気候温暖な都市である。
ここではどのような調査をするかというと、もちろん水俣病の調査ではない。
今回の三件の案件のうち最も楽なもので、実は本来の調査は大阪に住む被調査人事項なのだが、もともとの出身が水俣だというので、その場所の概要と菩提寺の写真撮影等であった。
法務局の仕事を終えて簡単に昼食を済ませたあと鹿児島市を出て、国道三号線をグングン北上した。
だが、海岸線を走り串木野市から阿久根市、出水市を抜けてようやく水俣市に入った頃には、既に午後四時前になっていた。
仕方なく調査は翌日にすることにした。
そしてこの日の宿は湯の児(ゆのこ)温泉である。
ここは不知火海に面した温泉で、旅館やホテルが十数軒あるらしいが、経費的に観光旅館やホテルには宿泊できないので国民宿舎を予約していた。
国民宿舎といっても私が予約していた水天荘は民営であった。
三号線から県道に入り、丘陵道路をグルリングルリンと登って行けば水天荘に着いた。
高台から不知火海が見渡せるグッドビューの国民宿舎である。
しかもフロントには若くて綺麗な女性がいた。
残念ながら、のちに聞けば民営の国民宿舎の運営はかなり厳しいらしく、どうしても値段設定を低くしているので薄利を余儀なくされるという問題点があるらしい。
この水天荘も平成十二年には廃業となってしまった。
何しろ私が泊めてもらったこの日も、一泊二食、夕食にはビールも飲んで七千円ほどだったのだのだから。
水天荘の写真が載っていました。 ↓
http://www.yado.co.jp/kankou/kumamoto/kumanan/yunokoo/yunokoo.htm
さて、この時点で何キロ走っただろう?
宮崎から宮崎自動車道、九州自動車道を経て加治木町、鹿児島市と入り、国道三号線を北上して熊本県水俣市と来た。
既に三百キロメートル以上を走破している。
この先、熊本を抜けて阿蘇山を仰ぎながら大分に向かうのだ。
この調査旅行(?)の面白さや意外な展開はこれから。
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