23 / 131
昔の男との縁切り証明依頼 ④
しおりを挟むその四
御手洗氏へのアポイント一回目は話の途中で向こうから電話を切られてしまった。
「貴方がご存知の人の縁談話があるので、お会いしてその人についてのコメントを得たい」と申し出たが、「誰のことかを言わないのなら会えない」といわゆるガチャ切りされてしまったのだった。
無理もないことである。
ここで簡単に諦めるわけにはいかない。
この日は架けなかったが、翌日の朝10時ごろに再度アタックしてみた。
不動産屋の始業時刻は大体10時ごろと決まっている。
昨日と同様に女性が応対に出た。
丁寧にこちらの名前を伝えて、御手洗氏に
取り次いでいただくよう依頼した。
しかしいったん電話が保留になったあと「御手洗はまだ出社しておりません」との返答だった。
一時間後、再びアポイントの電話。
同じ女性が応対に出た。
だが、「御手洗は取引先のもとに直行するとの連絡が入り、不在でございます」との返答であった。
「ホンマでっか?」と言いたいところだったがやむなく切電。
依頼人への報告書手渡し日まで二週間を切ってしまった。
翌日さらに電話アポ、同様の女性、「御手洗は外出中、帰社時刻?不明です」との返答。
さらに次の日も時間帯を変えて三度架けてみたが「御手洗外出中、帰社時刻不明」の返答、女性の声も心なしか冷たく感じるのであった。
通常、内偵担当は調査案件を4、5件持って、平行して調査にあたる。
1件の調査が終了して報告書を書き上げて次の調査に入るのでは効率が悪く、1件の調査が一気に終わるわけでもない。
従って、複数の案件をいつも持っているわけだが、繁忙期には手持ち案件が10件近くになることもある。
そうなると、聞き込み調査の際にどの案件だったか分からなくなってしまう、ってなことは有り得ないが、調査が一向に進まない案件があると焦る。
今回のこの件も、調査内容自体は一発で終わる簡単なものなのだが、その一発のためのアポイントが取れないのだった。
いよいよアポなし訪問の強引策に出るしかないか。
阪神電鉄打出駅は大阪梅田阪神百貨店地下の梅田駅より特急電車に乗り、西宮駅で各駅停車に乗り換えて三つ目の駅である。
平安商事は水曜日が定休日なので、その前日の火曜日の夕方にアポイントなしで訪問することにした。
翌日が休みだと御手洗氏も気分が普段よりリラックスしていると思ったからである。
午後四時過ぎ、平安商事は打出駅を下車して浜側(南方向)へ少し歩いたところにすぐ見つかった。
入り口横のガラス張りのスペースには、賃貸物件や分譲物件の資料がたくさん貼られていた。
仲介が主体の業容のようだ。
私は勢いをつけてドアを開けた。
店舗事務所はさほど広くなく、入ったところに低い受付カウンターがあり、椅子が3脚、カウンターの向こうには女性のスタッフが2人と若い男性が一人、その向こうについ立があった。
「御手洗社長にお目にかかりたいのですが・・・」
従業員の「いらっしゃいませ」の声が終わらないうちに私は言った。
奥のつい立の向こうから長身の男性が現れた。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

アルファポリスで規約違反しないために気を付けていることメモ
youmery
エッセイ・ノンフィクション
アルファポリスで小説を投稿させてもらう中で、気を付けていることや気付いたことをメモしていきます。
小説を投稿しようとお考えの皆さんの参考になれば。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。



ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる