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昔の愛人の暮らしぶり ②
しおりを挟む「昔の愛人の暮らしぶり」
その二
A氏とB子が知り合ったのは、A氏が三十代後半の頃、大手建設会社のサラリーマンだった同氏は管理職に就き、仕事がますます面白くなってくる年齢だった。
神戸市内に妻子との平穏な家庭を築いていたが、京都府舞鶴市のプラント建設現場へ二年の予定で出向の命が下った。
当時、二人の子供は小学生で、出向先が特に遠方でもなかったため、A氏は単身赴任を選択した。
舞鶴から神戸まで、舞鶴自動車道から中国自動車道を経て、数時間で戻ることができる。
赴任後も、当初はほぼ毎週末には妻子の元へ帰っていたという。
舞鶴市内に会社が用意してくれた2DK程度のアパートに引越し、朝から夜遅くまで現場監督として働いた。
真面目な仕事一途の性格で、家庭も大切にするマイホーム人間でもあったが、赴任後は、平日の仕事の疲れで、週末に神戸へ帰る頻度も次第に少なくなってきた。
赴任生活にも慣れた頃、取引先の関係で接待を受けた。
その場所が宮津市内の料理店で、そこで店内の手伝いとして働いていたB子と知り合ったのだ。
当時、B子は二十五歳を過ぎたばかりであった。
宮津市は人口二万人あまりの小都市で、地
場産業といえるものは特になく、天橋立や丹後由良海水浴場などの観光産業に市の収入を依存している状況である。
B子も宮津市内の高校を卒業後、地元の観光物産会社に就職、みやげ物店に勤務した。
両親と弟がいたが、弟はやがて大阪へ就職のため家を出た。
B子は両親との三人暮らしを送り、A氏と知り合う少し前に観光物産会社を辞めて、父の知人が営む料理店を手伝うようになったらしい。
相談員に語った二人が知り合ってからの経緯だが、初めて接待で訪れてから間もなく、B子が土日にA氏のアパートを訪れて、食事や洗濯などの世話をするようになったという。
仕事の疲れも確かにあったので、神戸の家族のもとへは二週間に一度となり、やがて月に一度となっていった。
A氏は調査を依頼するにあたり、これ以上詳しくは述べたがらなかったらしいが、現況を調べるには別れた時の状況を知る必要がある。
そこを相談員が突っ込んでお聞きしたところ、「実は今十二歳になる子がいるはずです。その子は私とB子との間の子供なのです」と恥ずかしそうに答えたと言うのだ。
B子がA氏のアパートに来るようになって一年余りが経ってから、B子が妊娠をした。
A氏には家庭があるので当然結婚はできない。
A氏は堕胎を何度も頼んだらしいが、B子は産みたいと首を縦に振らない。
やがて二年の出向が終わり、現場を引き払う頃には既に妊娠八ヶ月を過ぎていたという。
A氏はB子と話し合いの末、三百万円を渡し、神戸へ帰った。
そしてそれ以後、たった一度たりともB子からA氏に連絡がないということは前にも述べたとおりである。
そして最後にA氏は相談員に「子供が健康に育っているか、どんな子供なのか、写真を撮っていただけるものなら一枚でもいいから欲しい」と言い残して帰って行ったとのことだった。
調査はB子の現在の暮らしぶりだけではなく、A氏との間にできた子供の現在の写真撮影も必要となった。
もちろん相談員は、「写真撮影は調査発覚のおそれがあれば無理に実施しないので、要望に添えない可能性もありますよ」と伝えてはいるが、当然必須事項として調査員には指示される。
かなり難しい調査内容ではあるが、下調べを行ってから調査先へ向かった。
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