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第五章・ミャンマー行きの予定が何故か雲南へ
サバイディー、南方上座部仏教国の夕陽 176
しおりを挟む第二十六話
2009年12月29日の夕食は、中国の雲南地方にある小都市・景洪(ジンホン)のバスターミナル近くの小さな食堂に飛び込んだ。
四人掛けのテーブル席が四つあるだけの小さな食堂だが、店先で大きなフライパンを振り回して、炒め物を中心とした料理を作り、大きなボールにそれらを入れて、仕事帰りの人たちを相手にテイクアウトも行っていた。
店には紺色の作業服か人民服か分からないが、地味な服装の六人の男性グループがいて、真ん中に置かれた惣菜の入った三つのお皿を全員がつついてご飯を食べていた。
まったく言葉を交わさないで黙々と食べている姿に少し違和感を覚えながらも、僕は隣の席に着いて適当な惣菜を指差し、そしてビールの小瓶を注文した。
ビールは青島ビールのような色の瓶だったが、銘柄は違っていた。
それでもご飯とスープと惣菜とビールとで8元(ちょうど100円程度)と安かった。
◆ビールは雪花という銘柄ですね
ビールは軽かったがそれなりに美味しく、惣菜は脂っこかったがスープが絶品で、100円で晩飯を食べられるのだったら長期滞在しても良い町かなとフト思ったりした。
でもどうも居心地が良くないのを感じていた。
6人グループは本当に誰もしゃべらず、黙って箸を動かし、口をモグモグしている姿はいったいなんだろうと不思議だった。
おそらく現場仕事の帰りに、雇用側が用意した夕食だろうと推測されたが、あまりに寂しい雰囲気の夕食じゃないか。
食堂を出て少し街歩きをした。
街灯がたくさんついていて、街は明るかった。
大きな公園から巨大なボリュームの音楽が聞こえてきたので行ってみると、なんと、大勢の市民がディスコティックなサウンドに合わせてエアロビクスの真っ最中。
◆公園でリズムに乗って踊る老若男女(あまり乗っていないが)
若い女性が多いが、おばさんやおじさんも一緒になって手足を動かしている姿は、日本ではあまり見かけない光景だった。
通りには様々な店が並んでいて、デパートのようなショッピングモールもあれば、日本の家電量販店のような大きな電気店もあった。
まだ宵の口、カップルや職場の同僚など大勢の人々が通りを歩き、公園のベンチでくつろいだり、ショッピングなどを楽しんでいた。
でもなぜか僕はリラックスできなかった。
寂しさの風が心の中を吹き抜けたような気がした。
午後八時過ぎ、まだまだ早い時刻だが、バーや屋台の飲み屋の類が見当たらないので、仕方なくホテルへ戻った。
探せばこの景洪市内にも歓楽街はあるだろうが、その気にはならなかった。
夜になると少し肌寒く、熱いシャワーで体を温めた。
フロントに下りていくとさっきの男性が一人で受付にいた。
ランドリーサービスはあるかと訊いてみたが、首を振ったのでそんなものはないのだろう。
部屋に戻って広いベッドに寝転がり、ゴルゴ内籐の「太陽と風のダンス」を読んでいたら、眠くなってきた。
明日はもうラオス方面へ戻ろうと思った。
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