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第五章・ミャンマー行きの予定が何故か雲南へ
サバイディー、南方上座部仏教国の夕陽 160
しおりを挟む第十話 ノンカイへ その四
2009年12月25日の20:00発の夜行列車でラオスとの国境の町・ノンカイへ向かう僕は、駅前の「テッチャン」が営む屋台食堂でビアリオ(タイの比較的格安のビール銘柄)とバミーナーム(ラーメン)と豚肉入りチャーハンを食べた。しめて130Bなり。(330円位、安い!)
バンコクに滞在する大田周二さんについて、テッチャンは「ここに大田さん来るよ、向こうに住んでいる」とアバウトで不明確なことを言っていたが、この近くにいらっしゃることは間違いない。
あちこち回ってバンコクへ戻ってきたら、もう一度周辺のゲストハウスなどを訊きまわってみようと思う。
きっと大田さんに会えるに違いないと確信を持った。
夜になっても生暖かい風がホアランポーン駅のコンコースに漂っていて、ジッとしていても背中に汗がにじみ出る。
サンダルを脱いでタイル張りのコンコースへ素足を落とすと冷やりと心地良い。
たった一本のビールしか飲んでいないのに少し睡魔が訪れた。
バンコクに着いてからこの三日間、毎日暑い日差しの中、考えてみればかなり歩き回ったので疲れが出たのか。
このまま眠ってしまっては乗り遅れるので、早めに改札をくぐり右端のホームへ行くとノンカイ行きの列車が既に到着していた。
重厚な鋼鉄の車体が逞しく、ガーガーとジーゼル機関の音が、まるで乗客たちに早く乗れと文句を言っているようだった。
予測と反して20時ちょうどに突然列車が動き出した。
僕の前の席は空いたままだ。
通路の反対側の席は年配の欧米人カップル、その隣はこれも年配の欧米人男性だがお相手はアジア女性(おそらくタイ人)、チョイと周りを見渡しても日本人らしき旅行者はいない。
肌が浅黒く髪の毛がベチャっと額に流しているアジア人はあちこちで見かけるが、この人たちはタイ人かラオス人か或いはチャイナか?
十年前頃は必ず一つの車両に数人の日本人旅行者がいたものだが、ノンカイ行きの夜行列車は、車体自体はおそらく十年前のものと変わりがないが、乗せる乗客のお国柄はずいぶんと変わったものだ。
夜行列車は走ってしまえばつまらない。
しばらくはバンコク市内の夜の営みを眺められるが、間もなく暗闇の中に時々走る車やバイクの姿以外は見えなくなってしまう。
さらに走ると全くの暗闇。
原野を貫いて東北部への列車は走り続け、田舎の町や村の民家のかすかな明かりだけが寂しく光る。
そしてその頃に列車の乗務員がベッドメイクにやってくるのだ。
タイの夜行列車のベッドメイクは、「世界の車窓」からでも紹介されたことがあるようだが、その手際よさは見事の一言に尽きる。
下手なマジシャンよりも感服するほどである。
二、三分で清潔なシーツに枕カバー、タオルケットがセットされ、次の席のメイクへ移る。
一つの車両すべての作業が終わるのに、三十分も要していないような気がするくらいだ。
ベッドメイクが終わると列車はグングン暗闇を押しのけて走り続ける。
時折駅に停車しても、ベトナムの列車のように、発車の際に大爆撃音を発することもないので安心して寝られる。
僕は車両が消灯される前に、一気に深い眠りに落ちた。ガタンゴトンと規則正しいリズムが夢の中だ。
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