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第五章・ミャンマー行きの予定が何故か雲南へ

サバイディー、南方上座部仏教国の夕陽 158

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  第八話・ノンカイへ その二


 今回ミャンマーへ一緒に行く予定になっていた仙人さんからメールが届いていた。

 内容は、目下タイ北部の国境の町・ノンカイにいらっしゃって、表面張力という名称の駅前にあるゲストハウス(僕も泊まったことがあります)にて体調を崩し病臥に伏していらっしゃるとのことだった。

 「そうか・・・そうなのか・・・」

 仙人さんが体調不良、ミャンマー行きチケットを仙人さんとカオサンで合流したあと一緒に購入する予定だったのだが、さてどうしよう。

 僕はコーヒーを注文してゆっくり味わいながらしばらく考えた。(ゲストハウスのコーヒーは最高です、スタバの豆をオーナーが購入しています)

 今日は12月25日、三年前にバンコク・ホアランポーンからノンカイ行きのチケットを購入しようと駅窓口で「Full!」と冷たい返事を浴びせられたのが確か12月29日だったはず。

 今夜の夜行列車のチケットならきっと空いているはずだ。

 僕は仙人さんのメールに返事を送ったあと、思い立ったように身支度をして(といっても短パンにTシャツにバンダナなのだが)、ホアランポーン駅へ急いだ。

 ゲストハウスには今日の宿泊料も既に支払っているがたいしたことはない。

 仙人さんは既に70を少し超えていらっしゃるのだ。

 65歳で現役をリタイアして、様々な仕事関係のつながりを断ち切ってバックパッカーとなった凄い人である。(最後はオフィシャル団体の役員だったようだ)

 一年のうち、寒い時期に入る11月初旬に日本を離れ、主に東南アジアを放浪して毎年4月下旬から5月初旬に帰国される。

 留守の間、愛知県の実家は奥様がジッと無事の帰国を祈って待っていらっしゃるのだ。素晴らしいことである。

 仙人さんと初めてお会いしたのは2008年の1月下旬から2月上旬にかけての3度目のバンビエンを訪ねた際であった。

 帰路、ノンカイで3泊ほどしたのだが、前述の、駅前にあるゲストハウス「表面張力」にお世話になっていたら、仙人さんがタイ北部の秘境と当時はいわれていた「パーイ」から戻ってきた。

 ちょうど、その日の夜行列車でバンコクへ戻る僕を駅まで見送ってくれて、缶ビールとおつまみまで差し入れてくれた。

 そして列車が動き出すまで手を振って見送ってくれたのだった。嬉しかった。

 旅行中の出会いは本当に一期一会である。

 さよならだけが人生ともいわれるが、旅行もさよならの繰り返しである。

 ただ、そのような繰り返しの中で、共有する時間を、緊張とリラックスとの混在したひと時を過ごせて、コーヒーの一杯、ビールの一杯でも共にすることができれば、それは素敵なことであり、先々の懐かしい思い出となるのだ。

 さて、ホアランポーンの駅に毎日来ているような錯覚に陥りながらも、窓口にノンカイ、トゥデイ、20:00デパーチャー、エアコンスリーピング、アンダー!と叫んだ。

 するとチケット売りのオネイサンは「上段しかないけど、いいかな?」と言う。
 上等である、エアコン二等寝台680バーツ、二千円少々だ。

 即行でノンカイ行きチケットをゲットした僕は、一等食堂改め長月のMさんに報告と挨拶をするために、地下鉄とBTSを乗り継いでアヌサワリー駅へ向かった。

 BTSと地下鉄にも、今回バンコクに到着後毎日乗っているような気がするし(現実そうなのだが)、ソイ・ランナムにも毎日訪れているような気がした。(そうなのだが)

 ここ数年で急激に人の往来が増した感のあるソイ・ランナムは、ちょうどランチタイムでもあり、タイ人のサラリーマンやオフィスレディや、ネクタイを締めた欧米人やインド人などが通りの両側に乱立するレストランで賑やかに食事をしていた。

 長月のドアを押すとMさんがいた。
 店にはお客さんが数組ランチメニューを食べていた。

 Mさんはランチタイムと夜しか店には出ない。
 それ以外は主に部屋で読書をしているようだ。かなりの読書家である。

 「あれ?藤井さん、どうしましたか?」

 昨夜のソイ・カウボーイでの興奮冷めやらぬうちに訪れたこともあってか、Mさんは少し驚いたようだった。

 「今夜の列車でノンカイへ行きます。一緒に行く予定の人が病気でダウンしているんですよ」

 「それでは今回はまたラオスですか?」

 そうなのだ、僕はもうラオスを6度も訪れている。

「なのにあなたは京都へ行くの」というチェリッシュの懐メロがあるが(知らんかな)、「何故にあなたはラオスへ行くの」という印象をMさんは受けているのかもしれない。

 でも病臥に伏しているミャンマー戦線突撃予定の戦友を放っておけないではない。

 勿論、仙人さんが隊長で僕が部下となるのだが、体調悪化の隊長を、ともかくはお見舞いに行くことに相成ったのでありました。


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