サバイディー、南方上座部仏教国の夕陽

Pero

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第五章・ミャンマー行きの予定が何故か雲南へ

サバイディー、南方上座部仏教国の夕陽 153

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       第三話


 ドミトリーの寝慣れたベッドは快適で、日本で仕事に追われている日々とは異なり、朝早く起きる心配がないので、翌日は九時前までぐっすり寝た。

 同室には男性と女性各1名の欧米人がいたが、軽く挨拶を交わしただけで特に会話はない。

 シャワーを浴びてきちんとしてから階下へ降りて行くと、朝食は中庭に設けられたスペースでビュッフェ式になっていた。

 大きな炊飯器と蓋がついたステンレスのトレーが六つほど置かれていて、平皿に好きなだけご飯を入れて好みのおかずをかける、いわゆるぶっかけメシである。

 トレーの中には野菜と肉の炒め物やカレーやスパゲティや春巻きまであった。

 ここの料理は味付けが素晴らしい。

 一流の調理師が料理しているのか、或いはタイの料理人はこれくらいの腕が当たり前なのか、ともかく美味しい。

 五卓ほどある丸テーブルの一つで食べていたら、従業員がグレープジュースのような飲み物を持ってきてくれた。

 今日だけのサービスのようだ。

 昨年の九月ごろから朝食がビュッフェ式に変わったようで、宿泊料にこれが含まれている。

 そういえばエアコンのドミトリーが30B程度値上がりしていたので、この朝食ビュッフェと1キログラム以内のクリーニング代と20分間利用可能なインターネット料金が含まれているようである。

 旅行者にとっては個々に支払うよりはかなりお得である。

 2006年の暮れ以来、来るたびにゲストハウスが快適になっていることから、オーナーの杉山氏が常に営業努力を重ねていることが窺える。

 バンコクはこの時期、快晴が続く。

 いつものようにバンダナを頭に巻いて出かけた。
 今日は大田周二さんを先ず訪ねてみようと思っていた。

 BTSのオンヌット駅からアソーク駅で地下鉄に乗り換えて、終点のホアランポーンまで30分あまりで着く。

 おそらく既に廃業しているだろうファミリーゲストハウスを訪ねてみたら、やっぱりシャッターがおりていて、「For Rent」と書かれた大きな紙が貼られていた。

 前回訪ねた時、大田さんが「チェンマイで旅行代理店を営むオーナーが、赤字続きで店を閉めたいと言っている。タイ人に店を任せきりにするとこうなるのですよ」と語っていたので、その通りになったのだろう。

 駅に戻って公衆電話から大田さんから聞いていた携帯電話にかけてみた。

 するとタイ語に続いて英語でのアナウンスが流れた。

 日本の携帯でも流れる「おかけの番号は圏外にいらっしゃるか電源をきっておられます」という内容のものと思われた。

 仕方がないので今日のところは引き上げて、ランナム通りの一等食堂へ向かうことにした。

 地下鉄ホアランポーン駅から二つ目のシーロム駅で再びBTSに乗り換え、さらにサイアムでモーチット行きに乗り換えて三つ目がアヌサワリー・チャイ駅(ビクトリーモニュメント駅)である。

◆ビクトリーモニュメント駅からの風景

 



 見慣れた街並みをあるいているとタイにいるのだなぁと実感してきた。

 今頃日本では厳寒の中、通勤している友人知人や職場のスタッフさんなどのことを思うと、少しのうしろめたさと大きな幸せを感じるのだった。

 一等食堂を訪ねるのは五ヶ月ぶり、前回はオーナーのMさんが店の大家さんと少し揉めていると言っていたのが気がかりであった。

 大家が家賃の前払いをうるさく言ってくるのでうんざりしているとか。
 大家が金に困ってどうすんねん!って印象なのだが。

 一等食堂のドアを開けて中に入ると、ちょうどランチタイムの真っ只中で、この日は平日にも関わらず客は昼間からビールを飲んでいる年配の男性一人だけだった。

 Mさんは店に来ておらず、店員も見たことのない女の子だった。

 女の子に「Mさんは?」と訊くが要領を得ない。

 いったいどうなっているのだろう?


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