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第四章 タイ・ラオス・ベトナム駆け足雨季の旅

サバイディー、南方上座部仏教国の夕陽 147

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       三十一話


 ウオーキングストリートと呼ばれる(19時~深夜まで歩行者天国のようだ)通りにはシーフードレストランが並んでいた。

 N君とパタヤー湾に面した桟敷レストランに入った僕は、まず入り口の生簀で泳いでいる魚介類に驚いた。

 情報ではパタヤー湾はあまり綺麗でないとのことだったが、日本近海でも取れる魚介がパタヤーで獲れないはずはない。

 生簀があっても当たり前のことである。

 小雨がパラついていたが、桟敷レストランは天井がついていて問題はない。

 海の方にはナイトクルージングが行われているのか、船のライトが点在していた。

 「蟹が食べたい」と僕がリクエストすると、注文を聞きに来た女の子にN君は流暢なタイ語で伝えていた。

 すっかりタイ人になったN君、この時点では四年余りのタイでの滞在、職場ではほとんどタイ語らしく、日本語を一言も話さない日もあるのだとか。

 大したものである。

 ビアシンに氷りを放り込んで再会を乾杯した。
 僕はタイでN君と飲むのが最高のリラックスタイムである。

 2001年のゴールデンウイークにラオス国境で知り合ったN君。
 大阪在住で大学が同じだったこともあって(当時僕は大阪でした)、仕事が終わればよく飲みに行っていた。

 一流企業のプラントの設計に関わっていて、係長だった彼は、「日本を離れてタイで住みたいと思ってますねん。仕事は好きですが、上司がアホばかりであきまへんわ」と言っていたなぁ。

 有限不実行の僕とは違って、N君は不言実行タイプ、2003年の3月に仕事をきっぱり辞めて、インドやネパールを旅したあとタイに入り、そのままタイ語学校に入学したのだった。

 目下は日本の商社系列の物流会社でマネージャーの立場、タイの女子大生ともお付き合いがあり、羨ましい限りの暮らしに見えるが、本人は全くそうではないらしい。

 「タイ人の悪口を言えと言ったら三日では足りませんな。あいつら訳分かりませんわ。現場の奴らも言うたことしかやりよりませんねん。あとはクイッティアオとソムタムとビアチャンがあったらそれで満足な奴らですわ」と辛辣なことを言っていた。

 さて、すっかりシーフードに満足をした僕は、N君にナイトライフを案内してもらうことになった。

 シーフードレストランは決して安くはありませんが、一人700バーツ程度で新鮮な魚介類を食べてビールもしこたま飲んだし、リゾート地の料金としては良しでしょう。

 「パタヤーにもゴーゴーバーがありますよ。でもここはバービアが基本で、あとはいろんな飲み屋がありますわ」

 パタヤーに欧米人が好むタイプのバーが乱立しており、至るところにビアバーがあり、昼間から女の子相手に飲むファランをよく見かけた。

 他にはコヨーテバーてなものもあるらしく、どんなものか分からないが、N君が時々覗くと言うのでこの夜はチョイと行ってみた。

 でも店は普通のアイリッシュパブもどきで、単に店の女の子が客の周りをウロウロしているだけで、何が「コヨーテ」なのかサッパリ分からない。

 N君に聞いても「何か分かりませんが、コヨーテバーということになっているんですわ。奢ってやれば横に座りますよ」と言う。

 つまり普通のキャバクラもどきパブか?

 僕とN君はビールを少し飲んでとっとと出て、普通のビアバーに行った。

 ビアバーとはコの字やロの字型になったカウンター内に女の子が数名いるスペースがいくつも集まっているもので、大規模なビアバーになるとその数は30位にも及ぶ。

 何がどう楽しくてファラン達は行くのか、僕達はちょっとエキゾチックな顔つきをした女の子がいたスペースに座った。

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