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第四章 タイ・ラオス・ベトナム駆け足雨季の旅
サバイディー、南方上座部仏教国の夕陽 137
しおりを挟む第二十一話
細身の頼りなさそうな男がキコキコと漕ぐ僕を乗せたシクロは、フエ市内を雄大に流れるフォーン川にかかるチャンティエン橋を渡りグングン進む。
僕の横を車やバイクがどんどん追い抜いて行く。
もしぶつかれば即死だなと、ふと思ったりする。しかし、ハノイに比べるとシクロはあまり走っていないようだ。
シクロ男は迷うこともなく、橋を渡ってさらに広い通りをまっすぐに四百メートルほど走ると止まった。
「この先の路地を入ったところにある」と彼はキッパリと言った。
走行距離としては1.5キロメートル程度か、男の約束だから2ドルを渡した。
「サンキュー」と言ってシクロ男は走り去った。
おそらく2ドルはべらぼうに高いに違いない。
僕のような旅行者がいるから「日本人はチョロいもんさ」と思われ、他の旅行者に迷惑を掛けているのだろう。
言われたとおりに路地を入ると右手にBinh Duong3 Hotel(ビン・ジュオン3ホテル)があった。
入ってすぐに小さなフロントがあり、部屋は空いているかを聞くと、ここは満室だがBinh Duong Hotelのほうは空いているとのことだ。
日本語が話せる若いお兄さんが、通りの奥に位置するホテルまで案内してくれた。
ホテルといってもゲストハウスだろうとお思いのアナタ。
確かに一般に言う「ホテル」ほどの設備や贅沢さはないが、ゲストハウスとも異なります。
ベトナムにはこの種の「ミニホテル」と呼ばれる宿がたくさん存在する。
Binh Duong 3Hotelはミニホテルではなく、レッキとしたそれなりのホテルとのことだが、僕が泊まるのはBinh Duong Hotelで、こちらはドミトリーから30ドルもする部屋まで様々あるらしい。
残念ながら6ドル程度の手ごろなシングルは空きがなく、目下の空室は12ドルのツインだけと言う。
あとで分かったことだが、確かにほぼ満室で、僕よりあとに到着した欧米人は「Full」と断られていた。
ベトナムは天候も良く、ラオスと違って旅行者が多いようだ。
バスを降りてホテルまで来る間に欧米人をたくさん見たし、このホテルのロビー(といってもごく小さなものですが)には日本人の若者が数人いた。
若い男性従業員が3階の部屋まで案内してくれた。
周りに高層建物はなく、とても見晴らしが良い。
部屋は勿論エアコン、TV、バスルームがあり(バスタブもありました)、さらにパソコンも設置されていてインターネットが無料で使えるのだ。
これで12ドルなら安いのではあるまいか。
ツインだから、カップルで旅行される人はこのBinh Duong Hotelの3階のツイン部屋をお勧めします。
さて、バックパックを置いてサッとシャワーを浴びて汗を流したあとは、すぐに街へ出かけた。
目的は「フォー24」というところ。
今回の旅行前に、友人から「ベトナムへ行くならフォー24に行ってみて」と言われていたのだ。
勿論、ベトナム名物というか、ご存知フォー屋である。
ただ、この「24」という数字がいったい何なのかが不明だった。
それを判明させるべく、僕はフエの新市街、フォーン川沿いにあるという店へ向かった。
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