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第三章 バンコク近郊・意外展開旅行記
サバイディー、南方上座部仏教国の夕陽 100
しおりを挟む遺跡めぐり
ワット・ロカヤスタは寝釈迦像である。
宿の近くからトゥクトゥクに乗って、距離的には四キロメートル程の位置に所在している。
到着した所は普通の住宅街を抜けたところで、いきなり腕を顔にあてて寝ている大きな仏像が現れた。
僕は予定通り四十バーツを支払ったが、トゥクトゥクのオヤジさんはその金額には不満を示さなかったものの、このあと別の寺院にも連れて行ってやるというのだ。
僕は歩いて回るからとそれを丁寧に断り、ようやく彼は納得して帰って行った。
ワット・ロカヤスタ自体は何てことのない寺院だ。
寝仏像の写真を数枚撮って、すぐに引き揚げた。
次にワット・プラ・シーサンペットに行こうと思って、地図を見て南方向に歩き始めた。
すぐに住宅街に入った。この住宅街は、日本でも昔あちこちにあった平家造りの公営住宅のような印象を受けた。
住宅街をどんどん歩くが、目的とする寺院らしき建物が見えてこない。
住宅は日本のように塀で囲まれているものは殆どなく、外から家の庭などがよく見える。
人々はバンダナ頭の僕の姿を見て、一瞬怪訝そうな顔をするが、すぐにやや微笑んだような顔に変わって行く。
旅行者にとっては危険を全然感じない町である。
ところがどんどん歩いても一向に寺院が見えない。
ちょうどよろず屋のような店があったので中に入ってみると、中年の女性が店番をしていた。
「ワット・プラ・シーサンペットはどの方向ですか?」と僕は訊いてみた。
しかし彼女は英語が分からないようだった。
寺院の名前もタイ語ではきっとかなり発音が違うのだろう。
「ワット・プラ・シーサンペット!」と何度か言ってみたが分からないようだった。
丁寧に礼を言って店を出た。
今度は来た道を少し戻って右に折れてみた。
するとしばらくして舗装工事中の比較的広い通りに出た。
注意をしながら歩いた。十分程歩くと右側に公園が見えてきた。それに大きな池もある。
近づいてみるとそこはエレファント・キャンプだった。
七、八頭の象がいてその背中に乗って公園を一周してくれるのだ。
勿論一人で乗るのではなく、象使いが同乗してくれるから安全だ。
バスで乗り入れて来たツアー客がたくさん順番待ちをしていた。
日本人も混じっている。
僕はしばらくその光景を眺めていたが、象に乗る気はなく、寺院の方向に公園内を歩いた。
池を渡るとヴィハーン・プラ・モンコン・ポピットという、タイ最大の青銅仏の一つが安置されている寺院にぶつかった。
本堂もかなり立派だが、これもビルマ(ミャンマー)軍に破壊されたあと、一九五六年に復元されたものらしい。
この寺院の隣がワット・プラ・シーサンペットである。
入り口で二十バーツを支払って中に入った。
しかし中は昨日訪れたワット・ラーチャプラナと同じように、破壊された建造物が大規模に並んでいるだけだった。
よくまあこれだけ破壊し尽くしたものだと思う。
三十分程回ってからそこを出て宿の方向に歩き出した。
暑くてかなりグロッキー状態だ。ビールが飲みたくなってきた。
宿への直線道路にかかる角に一軒のカフェがあり、看板に何とアサヒスーパードライの写真が掛かっていた。
躊躇なくその店に飛び込んだ。
そこはちょっと洒落たオープンレストランになっていた。
テーブルに着くとすぐに青年が注文を聞きに来た。
「アサヒスーパードライ冷えているかな?」と英語で訊いてみたら、その青年は日本語で「勿論よく冷えてますよ」と答えるのだった。
僕はサラダとカオパッドを注文し、すぐに運ばれてきたアサヒスーパードライをグラスに注いで一気に飲んだ。
日本のものとは少しだけ味が違うような気がしたが、なかなか美味しい。
ラベルが銀色ではなくて緑色だったが、訊けばこのビールはタイ国内のアサヒビールの工場で製造されているとのことだ。
青年は気さくに僕に日本語で話しかけてきた。
「日本語が上手だね」と言うと、「ありがとうございます。僕の彼女は日本人です。大阪に住んでいます。百貨店に勤めているらしいです。来月またアユタヤに来る予定です。もうかりまっか、あきまへん、ぼちぼちでんな」と一気に言うのだ。
僕はこてこての大阪弁を聞いて、飲んでいたビールを吹き出してしまった。
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