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サバイディー、南方上座部仏教国の夕陽 ㉟
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第一章 2001年 春
※ このころはあまり写真を撮らなかったので、画像は時にwebからフリーのものをお借りしています。今回の2枚はお借りしたものです。サーセン🙏
三十五
雨のルアンパバーンは、緑の多い街並みはしっとりと濡れて少し色褪せて見え、行きかう人々の様子も穏やかで、落ち着いた風流な街の雰囲気を感じた。
僕達はタラートを出てから、先ずHさんが家に絵葉書を出すため郵便局に立ち寄った。
郵便局はラオテレコムと同じ建物の中にあり、窓口では女性ふたりと男性ひとりが暇そうにあくびをしていて、僕たち日本人三人が入って行っても、けだるそうな態度で応対をするのだった。
君達もっとやる気を出せよと思いながら、僕もそこで一枚の絵葉書を購入して、去年ベトナムで一緒だった女性に即興で文章を書き込んで窓口に持って行った。
日本までの切手代は二万五千Kip(約三百五十円)と意外に高かった。
日本に帰ってから彼女に聞くと、この日から一週間ほどで届いたらしい。
再び外に出ると、雨はシトシト降っては止みまた降るといったおかしな天候だったが、僕達はメインストリート沿いのアートクラフト屋や絹織物屋などを覗いてから、通りのはずれの方にあるワット・シェントーンを訪れた。
◆ワットシェントーン
この寺院はラオスで最も美しいといわれ、ガイドブックによると千五百六十年に当時の王セタティラートによって建立されたとある。
中に入ると広い敷地内に観光客はひとりも見当たらず、本堂の方に向かうと小さな小屋があり、中年女性が入場券を買ってねと言う。
僕達は、「やっぱり無料じゃないんだね」と厚かましいことを言いながら、ひとり千Kip(十四円)を支払った。
ワット・シェントーンは、僕が受けた印象としては孔雀が羽を広げた形の屋根が重ねられているといった感じの、日本にはない建築様式で素晴らしいと思ったが、ここではこの寺院の建設に至った歴史や建築スタイルの詳細はうまく説明できないので省きます。
本堂の中の仏陀をかしこまって拝んだあと寺院の裏手から出ると、目の前がメコン川だった。
メコン川は雨が降っていることもあってか、豊富な水量を誇り、川の流れも速く感じた。
僕達三人は、やはりラオスはメコンの国なんだなぁとしばし見とれていると、ひとりの現地青年が声をかけてきた。
達者な英語で話す内容は、川向こうに船で渡って洞窟やラオラーオの酒造り、陶器作りなどの村を訪ねる三時間ほどのツアーはどうかと言っているのだった。
洞窟はともかく、アルコール度が強烈なラオラーオという酒造りの様子は、ちょっと覗いてみたい気がする。
青年は最初ひとり六ドルと言っていたのだが、僕達が思案しているとすぐに一ドル値段が下がり、結局五ドルで行ってみようということになり、その前に昼食を摂るので午後一時にこの場所で約束をして、メインストリートの方に戻った。
◆メインストリート
レインコートを脱いで一軒のカフェに入って僕はバナナシェイクを注文したが、ここは食べるものがピザしかなかったので、HさんとN君は隣のレストランに移った。
ところが僕はこのころから体調がおかしく、熱も少しあるように感じた。
しばらく旅行のメモなどを整理していたが、どうも身体全体がふわふわした感じで、それに疲労感もあるので、熟考した結果、残念だが洞窟探訪他のツアーは行かないことに決めた。
店を出て隣の彼女達の店に行くと、テーブルにはHさんとN君の他に三十代後半くらいの日本人男性が一緒にいた。
男性はIさんといい神奈川県在住、僕たちと同じサラリーマンで、年に二度か三度はこのような短期の旅を楽しんでいるとのことで、内一度は必ず妻を同行しなければ許してくれないのですと、苦笑いをしながら話していた。
僕は、「ちょうどよかった。僕の体調がちょっと悪くなってきたので、代わりに洞窟その他ツアーに行ってくれませんか?」と言うと、Hさんが「さっきお誘いしたのですよ。藤井さんは行かないのですか?身体は大丈夫ですか?」と少し心配をしてくれているようだった。
N君は、「行きましょうよ。ラオラーオのキョーレツな酒をグビッとあおったら治るんとちゃいますか」と無責任なことを言っていたが、ともかく夜八時に「ナジム」というインド料理店で夕食の約束をして僕は宿に戻ることにした。
ブルーのテルテル坊主姿で、僕は道行く現地人の嘲笑を浴びながらヘトヘトになって宿に帰った。
フロントにはお姉ちゃんがふたり、何をするでもなくぼんやり座っていたので、「ドゥーユーハブ、ケミカルサモミター?」と訊いてみたが、「無いのよ~」と声を揃えて冷たく言う。
仕方なく部屋に入り布団に包まって寝た。
全身からみるみる汗が流れ落ちてきた。
※ このころはあまり写真を撮らなかったので、画像は時にwebからフリーのものをお借りしています。今回の2枚はお借りしたものです。サーセン🙏
三十五
雨のルアンパバーンは、緑の多い街並みはしっとりと濡れて少し色褪せて見え、行きかう人々の様子も穏やかで、落ち着いた風流な街の雰囲気を感じた。
僕達はタラートを出てから、先ずHさんが家に絵葉書を出すため郵便局に立ち寄った。
郵便局はラオテレコムと同じ建物の中にあり、窓口では女性ふたりと男性ひとりが暇そうにあくびをしていて、僕たち日本人三人が入って行っても、けだるそうな態度で応対をするのだった。
君達もっとやる気を出せよと思いながら、僕もそこで一枚の絵葉書を購入して、去年ベトナムで一緒だった女性に即興で文章を書き込んで窓口に持って行った。
日本までの切手代は二万五千Kip(約三百五十円)と意外に高かった。
日本に帰ってから彼女に聞くと、この日から一週間ほどで届いたらしい。
再び外に出ると、雨はシトシト降っては止みまた降るといったおかしな天候だったが、僕達はメインストリート沿いのアートクラフト屋や絹織物屋などを覗いてから、通りのはずれの方にあるワット・シェントーンを訪れた。
◆ワットシェントーン
この寺院はラオスで最も美しいといわれ、ガイドブックによると千五百六十年に当時の王セタティラートによって建立されたとある。
中に入ると広い敷地内に観光客はひとりも見当たらず、本堂の方に向かうと小さな小屋があり、中年女性が入場券を買ってねと言う。
僕達は、「やっぱり無料じゃないんだね」と厚かましいことを言いながら、ひとり千Kip(十四円)を支払った。
ワット・シェントーンは、僕が受けた印象としては孔雀が羽を広げた形の屋根が重ねられているといった感じの、日本にはない建築様式で素晴らしいと思ったが、ここではこの寺院の建設に至った歴史や建築スタイルの詳細はうまく説明できないので省きます。
本堂の中の仏陀をかしこまって拝んだあと寺院の裏手から出ると、目の前がメコン川だった。
メコン川は雨が降っていることもあってか、豊富な水量を誇り、川の流れも速く感じた。
僕達三人は、やはりラオスはメコンの国なんだなぁとしばし見とれていると、ひとりの現地青年が声をかけてきた。
達者な英語で話す内容は、川向こうに船で渡って洞窟やラオラーオの酒造り、陶器作りなどの村を訪ねる三時間ほどのツアーはどうかと言っているのだった。
洞窟はともかく、アルコール度が強烈なラオラーオという酒造りの様子は、ちょっと覗いてみたい気がする。
青年は最初ひとり六ドルと言っていたのだが、僕達が思案しているとすぐに一ドル値段が下がり、結局五ドルで行ってみようということになり、その前に昼食を摂るので午後一時にこの場所で約束をして、メインストリートの方に戻った。
◆メインストリート
レインコートを脱いで一軒のカフェに入って僕はバナナシェイクを注文したが、ここは食べるものがピザしかなかったので、HさんとN君は隣のレストランに移った。
ところが僕はこのころから体調がおかしく、熱も少しあるように感じた。
しばらく旅行のメモなどを整理していたが、どうも身体全体がふわふわした感じで、それに疲労感もあるので、熟考した結果、残念だが洞窟探訪他のツアーは行かないことに決めた。
店を出て隣の彼女達の店に行くと、テーブルにはHさんとN君の他に三十代後半くらいの日本人男性が一緒にいた。
男性はIさんといい神奈川県在住、僕たちと同じサラリーマンで、年に二度か三度はこのような短期の旅を楽しんでいるとのことで、内一度は必ず妻を同行しなければ許してくれないのですと、苦笑いをしながら話していた。
僕は、「ちょうどよかった。僕の体調がちょっと悪くなってきたので、代わりに洞窟その他ツアーに行ってくれませんか?」と言うと、Hさんが「さっきお誘いしたのですよ。藤井さんは行かないのですか?身体は大丈夫ですか?」と少し心配をしてくれているようだった。
N君は、「行きましょうよ。ラオラーオのキョーレツな酒をグビッとあおったら治るんとちゃいますか」と無責任なことを言っていたが、ともかく夜八時に「ナジム」というインド料理店で夕食の約束をして僕は宿に戻ることにした。
ブルーのテルテル坊主姿で、僕は道行く現地人の嘲笑を浴びながらヘトヘトになって宿に帰った。
フロントにはお姉ちゃんがふたり、何をするでもなくぼんやり座っていたので、「ドゥーユーハブ、ケミカルサモミター?」と訊いてみたが、「無いのよ~」と声を揃えて冷たく言う。
仕方なく部屋に入り布団に包まって寝た。
全身からみるみる汗が流れ落ちてきた。
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