【完結】失恋した者同士で傷を舐め合っていただけの筈だったのに…

ハリエニシダ・レン

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時間があくとちょっと気まずい

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あれから何度か、週末に彼の部屋を訪ねた。彼はその度に、嫌な顔一つせずに迎え入れてくれた。鍵を返せとも言われていない。

だからつい、この関係に甘えてしまう。もうそろそろ、終わりにしなければいけないと思いつつ…。

あまりズルズルと引きずるのはよくない、そう分かっている。
けれど、既に彼から離れられなくなりかかっている。


◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎


はあっと大きくため息を吐いた。
気分が乗らない。仕事中だとわかっているけれど。
だらしなく頬杖をついて卓上の小さなカレンダーをつついた。

今日は木曜日。
明日は金曜日。

どうしよう…。

ここ数週間、仕事が忙しくて彼の家に行けていない。
別にいつ行くと約束してる訳ではないのだけれど。だからこそ、こんなに日が開いてしまうと行きづらくもある。

もう一度ため息を吐く。
仕事は明日には片がつきそうだから、行こうと思えば多分行けるのだけれど…

行っても迷惑にならないだろうか

迷いが先に立つ。
いい加減、彼も吹っ切れているかもしれない。もしくは彼の仕事が忙しくなっているかも…

呆れたことに、私たちはまだ連絡先を交換していなかった。こんなに何度も身体を繋げておいて。
だから、話をするにも彼のマンションまで行かないといけないのだ。そしてそこで断られたらそれで終わり。

ちょっとハードルが高すぎやしないだろうかと苦笑する。
もう一度カレンダーを眺めて、悩むのをやめた。

今悩んでもしょうがない。
どうせ明日になったらいきなり忙しくなって、それどころではなくなる可能性だって十分あるのだ。
それはもう、この数週間で経験済みだ。

気合いを入れ直して仕事に戻る。
まずは目の前の仕事を終わらせなければ。そう意識を切り替えた。



翌日、金曜日。
なにごともなく終業時間がきてしまった。週末、家に仕事を持ち帰らなくてもいいし、ましてや出勤する必要もない。
久々に完全にフリーな週末。

どうしよう…

改めて悩みながら会社を出た。
今日は、彼の家に行こうと思えば行ける。やっと。

でも、もし迷惑そうな顔をされたら…

そう思うと二の足を踏んでしまう。
私たちはあくまで互いを癒し合う存在だ。相手の迷惑になってはいけない。
それが暗黙のルールだ。

まず相手の都合を優先すること。

そう、もしかしたらこの数週間で彼に彼女が出来ている可能性だってあるのだ。鉢合わせしたらなんと弁解したらいいのか………
グルグル悩んだけれど…

えーい、こういうのは勢いだ!

そうなっても切り抜ける自信はある。辻褄合わせなら得意だ。

たくさんの言い訳と手土産を用意して、断られても平気な振りができるようにシミュレーションを頭の中で繰り返しながら、彼のマンションへと向かう電車に乗った。

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