完結R18)夢だと思ってヤったのに！

嵌められた！？

教会に入ってすぐのところで

「ちょっとここで待ってて」

と言われた。
握ってた手を離したシュウは、奥に行って聖職者っぽい人と何か話し始めた。ほどなくして、振り返った彼に手招きされる。

足音のよく響く床を歩いてシュウの隣まで行くと、しっかりと肩を抱かれた。
聖職者っぽい服を着たご老人は、じっと私を見ている。

挨拶…した方がいいのかな？

口を開きかけたとき

「…僕のこと、好きだよね？」

唐突にシュウが、少し緊張してるみたいな声で尋ねた。

「うん、好き」

反射的にシュウの方を向いて、ついポロっと答えて焦った。

…知らない人の目の前で！

でもシュウは嬉しそうに笑うし、ご老人は何故か重々しく頷いた。

「わかりました。よろしいでしょう」

何がよろしいのか全くわからない。
知らない人の目の前でいきなり惚気たみたいな形になって、凄く恥ずかしいんですけど！

けれどご老人は、それ以上は何も言わずに私たちに向かって手のひらをかざした。続けて呟かれる、不思議な節の耳慣れない言葉。なんとなくオカルト染みててブルっと震える。
でも見上げたシュウは微笑んでいるから、多分危険は無いのだろう。

呪文みたいなそれが終わると、皺々の手からふわっと淡い光が放たれて私とシュウを包んだ。

超常現象！？

思わずシュウの腕を強く掴む。

「大丈夫だよ」

宥めるように肩を撫でられて、力を抜こうとした次の瞬間、決して聞き捨てならない台詞が聞こえてきた。

「これであなた方は、愛と嫉妬の女神ミラに祝福された夫婦です。行く末に幸多からんことを。
そして己の命が尽きるまで、決して互いを裏切らず離れないように」

ふぁっ！？？？

バッとご老人を凝視する。

今、なんて言った？！？

驚き硬直する私とは対照的に、シュウはにこやかに微笑んでお礼を言っている。っていうか謝礼っぽいのまで渡してる。

「な…何！？どういうこと！？」

全く状況についていけない私。

「うん。僕らは夫婦になったんだ」

落ち着き払っているシュウ。
でも落ち着いてる場合じゃないよね！？
夫婦だよ！？夫婦！
おかしいよね！？
私とシュウは昨日会ったばかりだよ！？しかもまだ碌に喋ってもいないよ！？
……だってこれって、現実だよね！！？

「何でっ…！？？」

「君が僕にプロポーズして、僕がそれを受け入れたから」

「え…えええ……？？！？」

う、うん……。
いや、理屈はわかるけど。
プロポーズをする→相手がオーケーする→結婚する。
それは確かにそうだけど……


でもそれ以前にさあ！！！
なんかこう、もっとあるじゃん！
結婚までの道のり、みたいなのが！
結婚式で嫌味ったらしく見せつけられる、二人の歴史（ハート）みたいなやつが！
そういうの、私たちほぼ0だよ！！？
昨日出会ってから、いっぱいエッチしたって記憶しか、私には無いんだけど！？！！？

ほぼパニックに陥っている私を見ても、シュウは笑っている。

「プロポーズしたのは君でしょ？」

………確かにポロっと「結婚したい」って言っちゃったけど。
でもあれは、ほんの弾みだし。
すぐに冗談だって訂正したし。
…その後「結婚しよう」ってシュウに言ってもらえて嬉しかったのは事実だけど……
でもそもそも、あの時は全部夢だと思ってた訳で……

それに、たったあれだけのやり取りで結婚するなんて思わないよ！？
…っていうか

「…………本当に？」

恐る恐る確認した。
冗談を言ってるようには見えないけど、あまりに展開が急すぎる。

「もちろん」

答えるシュウの笑顔が、微妙に黒く見えるのは気のせいなのか…。
でも思えば、行き先をはぐらかされたままここに連れて来られて、気づいたら結婚したって言われて……
因みに聖職者の人は、用は済んだとばかりにどこかへ行ってしまっていた。

「帰ろう。詳しいことは家で説明するから」

背中を押されて、混乱しながらもひとまず扉に向かって足を動かす。

…こういうところが、ダメなんだろうか…