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オマケの舞台裏

3 妻の好きな小説

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侍女から受け取った小説を読んでみたのだが………

結構凄いな!

驚いた。
妻はどちらかと言うと恥ずかしがり屋なのかと思っていたが、なかなかに刺激的な話を読んでいた。

ただ、そういう描写がない本もあって、妻はこういう甘やかなやり取りに憧れているのかもしれないと反省した。

世の男の例に漏れず、俺もそういうのは苦手だ。だが、妻が望んでいるなら叶えてやりたいとも思うのだ。


買ってこさせた本を一通り読んではみたが、それでも何故泣かれたのかは理解できなかった。
なので明くる日、昔から俺についてくれている侍従に聞いてみた。

「妻が俺に不満があるとすれば、どういうところだろうな?」

トニーは呆れたように肩をすくめて

「そういうところじゃないですかね」

と返してきた。
ちょっと待て。それじゃわからん。

「どういうところだ」

思わず不機嫌になって眉が寄るが、トニーは慣れているからか気にもしない。

「そういうところですよ。察しが悪くて直球で質問するところ」

「わからないことを聞いて何が悪い」

「そういうの、女性はあんまり好きじゃないですよ?」

「……そうなのか?」

ギクリとする。

「少なくとも、私の知ってる女性たちは察して欲しい、わかって欲しい、って感じですね」

「………無理だ」

「ええ、そうでしょうとも」

こいつの遠慮のない態度は、別にいいのだがたまにイライラさせられる。

雰囲気から望みを察するなんて、俺には無理な芸当だ。
だがこいつならわかるんじゃだろうか。突然泣いた妻の気持ちも。
9人兄弟の唯一の男として育ったこいつなら。

…もうこの際だ。聞いてしまおう。

「…この前、妻に泣かれたんだが、どうしてだと思う?」

トニーは嫌そうに顔をしかめた。

「あんまり込み入った話は聞きたくないんですけど」

「寝室で妻を抱いている最中に、突然泣かれてしまった。どうしてだと思う?」

「………聞きたくないって言ってんのに、このクソあるじ

舌打ちと暴言が聞こえた気がしたが、それは聞き流した。

「………何したんですか」

黙って答えを待っていると、諦めたのか嫌々聞いてきた。

「可愛い顔をする癖に何も言わないものだから、つい気持ちよくないのかと聞いたのだが…」

途端に大きなため息をつかれた。

「そりゃ泣くでしょうよ。何やってんですか」

当然だと呆れられて、少しムッとする。

「だが妻がよく読んでる小説に出てくる女は、嬉々として答えていたぞ?」

昨日まで知らなかったことではあるが、妻が愛読している本と同じ行動なら問題ない筈だ。
職場に持ってきていたうちの一冊を机の上から取り上げてみせると、ひったくられた。

「どんな流れですか」

「割と序盤だ」

パラパラとめくって該当箇所を見つけたのかしばらく読んで、トニーはため息を吐いた。

「これ、若奥様の愛読書なんですよね?」

「どうやらそうらしい」

「じゃあ、泣くのも無理ないですよ」

トニーはもう一度、大きなため息を吐いた。

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