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更に数年後
終話4
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自室に戻っていく藤堂を、思わず黙って見送ってしまった。驚き過ぎて、何が起こったのかまだよく理解出来ない。
だって、藤堂を逃すつもりなんてこれっぽっちもなかったけれど、それは藤堂が別れる理由を見つけられずに「まぁいいか」って許容できるくらいに居心地のいい空間を作り続けていくことで囲い込もうと思っていたわけで。言うなればなしくずしというか、そういう感じのもので。
それがまさか、藤堂からあんなことを言ってくれるなんて思ってもいなくてーー
さっきの言葉を反芻して顔が赤くなる。けれど、幸せに浸りかけたところで、藤堂の去り際の言葉を思い出した。
藤堂、「忘れてくれ」って言わなかったか?
気づいたら、脚が藤堂の部屋へと向かっていて、いつの間にか手が藤堂の部屋のドアを力一杯ノックしていた。
「藤堂、開けてくれ!」
返事はない。
しつこくノックする。
「藤堂、藤堂!」
やっぱり返事はない。
一応ドアノブを回してみたけれど、鍵がかかっていた。
「…藤堂。ドアから離れて」
「え…?」
少し離れた位置からぼやけた声がした。
その距離なら大丈夫だ。
脚を上げてドアを思いきり蹴りつける。大きな音を立ててドアが開く。
藤堂はベッドの上からポカンとこちらを見つめていた。…その頬が濡れている。
…泣くほど悲しかった?
俺に断られたと思って?
胸の中を満たした暴力的な歓喜に逆らわずに、藤堂を押し倒した。
「何すーー」
上からじっと見下ろすと黙った。
「藤堂、さっきの本気?」
気まずそうに顔を逸らされる。
「忘れてくれて…いい…」
「嫌だよ」
消え入りそうな声を即座に拒否すると、不満そうに睨みつけてきた。
「忘れろよ!嫌なんだろ!悪かったな!空気読めなくて思い上がってて!どうせ俺はおまえに見合うような男じゃーー」
「俺がどれだけこの日を待ってたと思ってるんだ」
なんか変な声が出た。自分の声じゃないみたいな。なんかそう、ドラマでたまに出てくるストーカーのヤバいやつみたいなひっくり返ったおかしな声。
藤堂の頬をそっと撫でると黙った。少し怯えたような顔で。
今、俺はどんな顔してるんだろうな。嬉しすぎて頭がおかしくなりそうだ。
「藤堂、やっと俺と死ぬまで一緒にいる覚悟ができたんだね…」
ヤバいな。
執着が溢れかえってる。
自分の身体からどす黒いオーラが出てるのが見えそうな気さえする。
「やっと、って…」
「待ってた…ずっと待ってた…おまえがそう言ってくれるの…」
「え…」
藤堂の目が、大きく見開かれた。
そんなに意外?
「もう絶対に離さない。何があっても」
「…おまえ怖いよ」
「うん…知ってる」
喜ぶ俺に、藤堂が若干引いている。
けれど、俺がおかしいくらいに藤堂を好きなのなんて、ずっと前からだ。
俺は、俺がおかしいこともヤバいこともちゃんと知ってる。
「おい」
「もうどれだけ嫌がっても逃さない。おまえが言ったんだ。一生、一緒にいようって」
なかったことになんてさせない。
「いや、言ったけど…」
「もうおまえは俺のものだ」
一生。死ぬまで、死んでも俺のものだ。
戸惑ったような目で俺を見ていた藤堂は、ついに大きくため息を吐いた。
「もう、いいよそれで」
目を逸らして頬を少し赤く染めながら。
だって、藤堂を逃すつもりなんてこれっぽっちもなかったけれど、それは藤堂が別れる理由を見つけられずに「まぁいいか」って許容できるくらいに居心地のいい空間を作り続けていくことで囲い込もうと思っていたわけで。言うなればなしくずしというか、そういう感じのもので。
それがまさか、藤堂からあんなことを言ってくれるなんて思ってもいなくてーー
さっきの言葉を反芻して顔が赤くなる。けれど、幸せに浸りかけたところで、藤堂の去り際の言葉を思い出した。
藤堂、「忘れてくれ」って言わなかったか?
気づいたら、脚が藤堂の部屋へと向かっていて、いつの間にか手が藤堂の部屋のドアを力一杯ノックしていた。
「藤堂、開けてくれ!」
返事はない。
しつこくノックする。
「藤堂、藤堂!」
やっぱり返事はない。
一応ドアノブを回してみたけれど、鍵がかかっていた。
「…藤堂。ドアから離れて」
「え…?」
少し離れた位置からぼやけた声がした。
その距離なら大丈夫だ。
脚を上げてドアを思いきり蹴りつける。大きな音を立ててドアが開く。
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…泣くほど悲しかった?
俺に断られたと思って?
胸の中を満たした暴力的な歓喜に逆らわずに、藤堂を押し倒した。
「何すーー」
上からじっと見下ろすと黙った。
「藤堂、さっきの本気?」
気まずそうに顔を逸らされる。
「忘れてくれて…いい…」
「嫌だよ」
消え入りそうな声を即座に拒否すると、不満そうに睨みつけてきた。
「忘れろよ!嫌なんだろ!悪かったな!空気読めなくて思い上がってて!どうせ俺はおまえに見合うような男じゃーー」
「俺がどれだけこの日を待ってたと思ってるんだ」
なんか変な声が出た。自分の声じゃないみたいな。なんかそう、ドラマでたまに出てくるストーカーのヤバいやつみたいなひっくり返ったおかしな声。
藤堂の頬をそっと撫でると黙った。少し怯えたような顔で。
今、俺はどんな顔してるんだろうな。嬉しすぎて頭がおかしくなりそうだ。
「藤堂、やっと俺と死ぬまで一緒にいる覚悟ができたんだね…」
ヤバいな。
執着が溢れかえってる。
自分の身体からどす黒いオーラが出てるのが見えそうな気さえする。
「やっと、って…」
「待ってた…ずっと待ってた…おまえがそう言ってくれるの…」
「え…」
藤堂の目が、大きく見開かれた。
そんなに意外?
「もう絶対に離さない。何があっても」
「…おまえ怖いよ」
「うん…知ってる」
喜ぶ俺に、藤堂が若干引いている。
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俺は、俺がおかしいこともヤバいこともちゃんと知ってる。
「おい」
「もうどれだけ嫌がっても逃さない。おまえが言ったんだ。一生、一緒にいようって」
なかったことになんてさせない。
「いや、言ったけど…」
「もうおまえは俺のものだ」
一生。死ぬまで、死んでも俺のものだ。
戸惑ったような目で俺を見ていた藤堂は、ついに大きくため息を吐いた。
「もう、いいよそれで」
目を逸らして頬を少し赤く染めながら。
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