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3年次
ある週末の朝
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俺の好きにさせて欲しいって言われて、深く考えもせずについ頷いたけど…。
…昨夜何があったかなんて俺の口からは言えねぇ。言えるわけがねぇ。
なんなの?こいつ。あんな恥ずかしいことするなんて信じらんねぇ。
これくらいどうってことない、なんて考えは最初の数分で吹っ飛んだ。
よく心臓が保ったもんだ。
あんなことして、あんなこと言わされて、あんな風に…
ああもう!
死ぬほど恥ずかしいのに、思い出したらなんか妙な気分になってきたし。
隣で穏やかな寝息を立てている男を見下ろす。
相変わらず寝顔もかっこいいな。
なんとなく髪に手を伸ばす。
癖のないサラリとした黒髪。
…そういえば東雲は、俺と付き合い始めてから髪を染めるのをやめた。何の気なしに「髪、傷んでるな」って言ったせいかもしれない。
それで今は、つやっつやの綺麗な黒髪だ。神は細部に宿るってやつか?いや違うか。
指で持ち上げた髪は、パラパラと奴の肌に落ちていく。それがくすぐったかったのか、奴は眉根を寄せた。
そして薄っすらと目を開けると、髪を弄んでいた俺の手を取った。
「おはよう」
そのまま手を引き寄せられ唇を押し当てられる。
「俺の姫君」
起き抜けに何言いやがるんだこいつは!
一瞬で顔が真っ赤になった。
断じて迂闊にもほんのイチミリも嬉しいなんて思ってねぇ!
「誰が姫君だ!ぶっ飛ばすぞ!」
奴はクスクス笑って意に介した様子はない。
「昨夜はあんなに可愛らしかったのに?」
流し目にゾクリとした。
朝から色気がダダ漏れだ。
この猥褻物め。
「俺は男だ!せめて王子って言いやがれ!」
何を言ってるんだ、俺は。
「お前がそう望むなら」
繋がれた手を引かれて、奴の下に組み敷かれた。
「俺の王子」
見下ろされて、鼓動が速くなる。
筋肉のついた、引き締まった肩や胸が視界に入って
「別におまえのってわけじゃ…」
恥ずかしさから否定しかけた言葉は、最後まで言えなかった。
奴の視線が急に冷たいものに変わったから。
「ないの?」
口調は優しいのに、目が笑っていない。
失言だったらしい。
右手で頰をそっと包まれる。
「俺はすべてお前のものなのに」
甘い仕草と言葉。
なのに視線と声はとても冷たくて。
そんな目を向けられて少し悲しくなった。
「ないこともねぇけど…」
言葉の綾っていうか、なんか分かれよ!
ふいっと奴の手から顔を背けたら、奴の正面を向いた耳を口に含まれた。形をなぞるように舌で舐め上げられて、腰が跳ねる。
「んあっ!?」
いきなり何しやがる。
キッと睨みつけると
「じゃあ、確かめないとね」
「な…にを…」
「お前が俺のだって、確かめないと」
奴の手が俺の体を這い回り始めた。
「やめっ!」
昨夜あんなにシたのにマジかこいつ。
「やめないよ?俺のなら俺の好きにしていいでしょ?」
俺に拒否権ないのかよ!
「も…朝っ…」
「今日は土曜日だから大丈夫」
なんで今日休みなんだよクソっ!
こうなった東雲を止める手段なんて、俺には思いつかない。
俺は何の役にもたたない悪態をついて、早々に抵抗を諦めた。
…昨夜何があったかなんて俺の口からは言えねぇ。言えるわけがねぇ。
なんなの?こいつ。あんな恥ずかしいことするなんて信じらんねぇ。
これくらいどうってことない、なんて考えは最初の数分で吹っ飛んだ。
よく心臓が保ったもんだ。
あんなことして、あんなこと言わされて、あんな風に…
ああもう!
死ぬほど恥ずかしいのに、思い出したらなんか妙な気分になってきたし。
隣で穏やかな寝息を立てている男を見下ろす。
相変わらず寝顔もかっこいいな。
なんとなく髪に手を伸ばす。
癖のないサラリとした黒髪。
…そういえば東雲は、俺と付き合い始めてから髪を染めるのをやめた。何の気なしに「髪、傷んでるな」って言ったせいかもしれない。
それで今は、つやっつやの綺麗な黒髪だ。神は細部に宿るってやつか?いや違うか。
指で持ち上げた髪は、パラパラと奴の肌に落ちていく。それがくすぐったかったのか、奴は眉根を寄せた。
そして薄っすらと目を開けると、髪を弄んでいた俺の手を取った。
「おはよう」
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起き抜けに何言いやがるんだこいつは!
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断じて迂闊にもほんのイチミリも嬉しいなんて思ってねぇ!
「誰が姫君だ!ぶっ飛ばすぞ!」
奴はクスクス笑って意に介した様子はない。
「昨夜はあんなに可愛らしかったのに?」
流し目にゾクリとした。
朝から色気がダダ漏れだ。
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何を言ってるんだ、俺は。
「お前がそう望むなら」
繋がれた手を引かれて、奴の下に組み敷かれた。
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見下ろされて、鼓動が速くなる。
筋肉のついた、引き締まった肩や胸が視界に入って
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恥ずかしさから否定しかけた言葉は、最後まで言えなかった。
奴の視線が急に冷たいものに変わったから。
「ないの?」
口調は優しいのに、目が笑っていない。
失言だったらしい。
右手で頰をそっと包まれる。
「俺はすべてお前のものなのに」
甘い仕草と言葉。
なのに視線と声はとても冷たくて。
そんな目を向けられて少し悲しくなった。
「ないこともねぇけど…」
言葉の綾っていうか、なんか分かれよ!
ふいっと奴の手から顔を背けたら、奴の正面を向いた耳を口に含まれた。形をなぞるように舌で舐め上げられて、腰が跳ねる。
「んあっ!?」
いきなり何しやがる。
キッと睨みつけると
「じゃあ、確かめないとね」
「な…にを…」
「お前が俺のだって、確かめないと」
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「やめっ!」
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「やめないよ?俺のなら俺の好きにしていいでしょ?」
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「も…朝っ…」
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