【完結】意地っ張りで口の悪い受けと、拗らせて執着する攻めの日常

初デート

ゲーセンと昼メシ

別にデートっつってもどこに行くとか決めてたわけじゃねぇから、適当に街をぶらつく。

途中で繋がれた手に耐えられなくなった俺が、ゲーセンに誘った。
やっと手を解かれたはいいけど、こいつが俺の肩に後ろから顎を載せて画面を見るものだから気が散って散々だった。

「今日は調子が悪いな」

じゃ、ねえよ！ふざっけんな！
好きな奴がそんな至近距離に居るのに冷静でいられる俺じゃねぇぞ！
まったくこいつはもう！

フンとそっぽを向いた俺に、奴は笑って手を差し出す。

「ほら、そろそろメシにしよう」

渋々、奴の手を取る。
ゲーセンで手を奴の手から取り戻してその後は繋がない、という俺の完璧な計画は脆くも崩れ去ったようだ。

別に嫌じゃねぇけど恥ずかしいしドキドキするしちょっといたたまれねぇしできれば外では繋ぎたくねぇんだけどな。
そんなことを思いながら奴の顔を見上げれば、嬉しそうに微笑まれた。

落ちつかなくて視線を落とせば、腰のスマホにはこいつがさっきゲーセンで取ったお揃いのストラップが揺れている。俺の分は文句を言う間もなく勝手につけられた。
シンプルなやつだし別にいいけど。
俺のケツポケットのスマホにも同じものが揺れていると思うと、なんだかそわそわする。

その後はよく行くラーメン屋で飯を食った。餃子とかも頼んでシェアしながら。
あろうことか箸でつまんで俺に食べさせようとしたけど、それは思いっきり睨みつけて阻止した。
ふざけんな。二度とこの店来れなくなるだろうが。

脂多めでもやしを追加トッピングした濃い目のスープのラーメンは、相変わらず美味かった。
デザートまでしっかり食って、上機嫌で店を出る。ラーメン屋なのに杏仁豆腐もすげえ美味い謎の店だが俺は好きだ。

「美味かったな！」

「ああ」

奴は微笑んでいる。

しかし

「でも俺は、もっと美味しいものが食べたいな」

顔を近づけて囁かれた。

？

「まだ腹減ってんのか？それともあんまり美味くなかったのか？」

こいつもあのラーメン屋好きなはずなんだけどな。
首を傾げると、そうじゃないと笑われた。

「お前が食べたい」

急に上半身を屈めて耳元で囁きやがった。
なんか腰にガッときた。
天下の往来でいきなり何言い出すんだこいつは！
ふっざけんな。
スタスタと歩き出すが、手を繋いだままなのでほとんど効果はない。奴は俺より長い脚で悠々と歩く。
くそっ。歩き方も優雅でかっこいいな！

「ね、俺の家行こ？」

奴が少し体をかがめて囁いた。耳に息がかかるからやめろ。
ふざけんなよ。ここでokしたらエッチまでokしたみたいになるじゃねぇか。

「行かねーー」

「やりたがってた新作のゲーム、買ったんだよね」

っこの卑怯者が～！！
俺はバイトもカツカツだから、やりたいゲームを全部買えるような余裕がないのを知っててそういう…。

進行方向を、奴の家へと変える。

「さっさと行くぞ」

むすっとしながら歩く俺の隣で、奴は上機嫌に喉を鳴らして笑った。